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SNSで「旅行コンテンツから直接予約」、TikTokアプリ上でブッキング・ドットコム経由のホテル予約が可能に【外電】

旅行予約のプロセスの中で、ソーシャルメディア(SNS)の役割が高まっている。世界大手の旅行調査会社「フォーカスライト」によると、旅行計画にSNSを利用した旅行者の約3分の2が、閲覧したコンテンツをきっかけに旅行の購入、または訪問先を決定している。

そのような中、TikTokとブッキング・ドットコムは、TikTokアプリ内でのホテル予約を可能にする連携を進めている。ユーザーはTikTokの動画や観光スポットを見た後に、TikTokアプリ内ブラウザから宿泊施設の評価、価格、空室状況、レビューを確認し、ブッキング・ドットコムで予約することが可能。予約が完了すると、旅行者のメッセージボックスに確認書が届く仕組みだ。

現在はテスト段階で、米国のTikTokユーザー10%を対象に、米国内の宿泊施設を紹介する動画に適用されている。

ブッキング・ドットコムの広報担当者は、「インスピレーションの源がどこにあっても、旅行者がより簡単に旅行を見つけ、計画し、予約できるようにしたいと考えている」とコメントしている。

また、ブッキング・ドットコムは、パートナーシップの一環として、クリエイターがホテル、体験、レストランに関する投稿にリンクを貼ることで報酬を獲得できるプログラム「TikTok Go」にも参加している。

マリオット・ボンヴォイのホテルブランド担当ソーシャルメディア・グローバルシニアディレクターのルーシー・ケミッツ氏は「人々がどこに行きたいかだけでなく、どのようにインスピレーションを得るか。そして、コンテンツからコンバージョンまでの道のりが、いかにシームレスであるかが重要になっている」と話す。

SAP Concurの宿泊戦略およびサプライヤー管理責任者であるルイ=イポリット・ブーシェイエ氏は、TikTokが旅行ファネルを「壊滅させた」とまで言っている。そのうえで、ブッキング・ドットコムの動きについて、「今、彼らはSNSとAIに力を入れており、その裏で、かねてからの戦略であるコネクテッドトリップ(旅行商材を組み合わせて旅行者にワンストップで提供)を構築しようとしている。つまり、コンテンツ、コマース、テクノロジーが掛け合わされ、インスピレーションとトランザクションとの境界線が消えつつある」と説明する。

業界への影響は?

SNS重視の施設はブッキング・ドットコムに限ったことではない。エクスペディアは今年5月、「Trip Planner」を開始。この機能では、ユーザーがダイレクトメッセージでInstagram Reelsをエクスペディアに送信すると、エクスペディアがそのコンテンツに基づいて生成AIで予約可能な旅程を作成する。

また、TourRadarは6月、旅行者が写真や動画から旅行を予約できるソーシャルコマース機能「TourRadar Moments」を自社アプリ内にリリースした。

SAP Concurのブーシェイエ氏は「長年、旅行の発見はGoogleから始まっていた。今ではTikTokの登場で、インスピレーションと予約が隣り合わせになっている。コンテンツはもはや単なる娯楽ではなく、コンバージョンにつながるものになっている」と話す。

そのうえで、ブーシェイエ氏は「これからはTikTokから予約が流入するようになる。ホテルにとって、これはより多くの注目を集めることを意味する。こうした旅行者を獲得するために、ブッキング・ドットコムのようなプラットフォームへの依存度はますます高まる」と予測する。

一方、AI搭載旅行代理店Airialを運営するCoInvent AIのCEOアーキット・カランディカー氏は「SNSの旅行動画は複雑なもの。旅行者は動画の雰囲気や様々な提案に刺激を受け、その魅力を改めて感じたいと考えているが、ホテルの予約は、そのほんの一部でしかない」と話す。

カランディカー氏は、「本当に必要なのは旅行計画のための包括的なソリューションであり、ホテルは旅行全体の中でのみ価値がある」という。

予約プラットフォームVidereoの共同設立者トニー・カーン氏は「問題は、ホテルが何を提供できるかだ」と話す。「TikTokとブッキング・ドットコムは『即予約』を提供しているが、ホテルはそれらを上回るどんなサービスを提供できるのだろうか?」と疑問を投げかける。

そのうえで、「あるニューヨークのホテルは、TikTok経由で50万ドル以上の売り上げを増やした。それは、質の高いコンテンツに加えて、非常に魅力的なオファーを提示したからだ。それが、SNSで勝つ方法。ブッキング・ドットコムでは、そのようなオファーをするだろうか」と話す。

SAP Concurのブーシェイエ氏は、「ホテルも動画などでSNSに対応することは可能だ。しかし、重要なのは、単に部屋を売るのではなく、ストーリーを売ること。独自のSNS中心のマーケティングを展開したり、優秀なクリエイターと提携するホテルは、依然として際立つ存在になっている」と話した。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:HAVE TIKTOK AND BOOKING.COM JUST ‘NUKED’ THE TRAVEL FUNNEL?