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東京都が推進する観光活性化への動きを取材した、昭島市と日本スポーツツーリズム推進機構が取り組む、観光による地域活性化とは?

東京都および東京観光財団は、「観光と地域の未来づくり~TOKYOがリードする持続可能なツーリズム~」をテーマに「観光活性化フォーラムTOKYO2026」を開催した。トークセッションではクイズ王の伊沢拓司氏が、観光を知識で楽しむヒントを披露したほか、昭島観光まちづくり協会と日本スポーツツーリズム推進機構がそれぞれの取り組み事例を説明した。

昭島市、認知度向上に向けて大学ゼミとプロボノと協業

昭島市は、水道水を深層地下水で100%賄う全国的に珍しい自治体。また、市内を流れる多摩川で発見されたクジラの化石(アキシマクジラ)、江戸東京野菜に登録されている拝島ネギを地域資源として、訪問者を増やす取り組みを進めている。一方で、認知度が大きな課題となっているという。

その課題解決に向けて、2023年度から大学ゼミとの「協働型課題解決ワークショップ」事業とプロボノ人材によるサポート事業を並行して進めている。

大学ゼミとのワークショップについては、2023年度は明治大学政治経済学部の奥山ゼミと企業訪問と町歩きを組み合わせて、昭島のまちと企業を知ってもらう企画を展開。2024年度は東洋大学国際観光学部の杉本ゼミとデジタルコンテンツを活用した情報発信と効果検証、立教大学法学部の薬師丸ゼミと「あきしまの水と食」を生かしたブランディング構築を実施した。

さらに、2025年度は東洋大学国際観光学部の武ゼミと魅力発信ツールの開発を行い、SNSでの配信、昭島産業まつり内に設けられた「あきしま水あそび」イベントを運営した。

昭島観光まちづくり協会のプレゼンテーション

2023年度から開始されたプロボノ人材活動は2025年度で第三期となる。プロボノ(pro bono)とは、職業で得たスキル・経験を生かした社会貢献活動のこと。第一期では、3人のメンバーで協会の法人会員の拡大に向けた取り組みと中長期戦略の策定プロジェクトを進めた。ロイヤルティの高い会員を増やす目的で、会員メリットを深掘りし、「昭島観光まちづくり協会案内」をリニューアルしたほか、定期的な会員交流会を開催した。

第二期では、認知向上への活動を展開。昭島の「深層地下水」についてのアンケートでは、観光案内所への訪問者のうち66.7%、まちあるきツアーの参加者では69.2%が「知らない」と回答したことから、「昭島×水」としての認知を広げる活動を展開した。

まず、ブランド戦略としてコンセプト『深層地下水 100%といきるまち: あきしま』を打ち立てた。そのうえで、「顔」と「旗」づくりとして、スターターツールを展開。わかりやすく、伝わりやすく、流通しやすいイメージ戦略を進め、『みずまち あきしま 深層地下水100%と、いきる』を全面に出したロゴを作成したほか、イメージビデオも制作した。

第三期では、大学生によるワークショップとの協力で、2つの具体的な施策を実施。まず、昭島産業まつりで「あきしま水あそび」イベントを運営した。来場者の3割ほどが市外からだったことから、ある程度は外に向けての認知は取れたと評価する。

2つ目は、昭島市のキャラクター「ちかっぱー」と名所を組み合わせて「#私の推し昭島」企画を今年の4月に実施する予定。市内15か所の名所をデザイン化し、SNSキャンペーンを展開していく。この取り組みを通じて、主体的に地域の事業者や住民を巻き込んでいきたい考えだ。

昭島観光まちづくり協会事務局長の堀井真理子氏は、PR不足、仕組み作り、昭島市自体の知名度、認知度の低さなど課題は山積みとの認識を示したうえで、「 今後の目標としては、昭島の小学生が大人になって出身地を説明する時に、立川の隣とか、八王子の近くとかではなく、昭島は『深層地下水100%』の市と言えることを目標にしていく」と話した。

「する」「見る」「支える」のスポーツツーリズム

スポーツツーリズムの取り組みについては、日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)シニアアドバイザーの中山哲郎氏が説明した。JSTAは2012年にスポーツツーリズム推進のオールジャパンプラットフォームとして設立。現在、自治体、公益法人、企業など165団体が会員として参画している。

JSTAでは、スポーツを「する」「見る」「支える」を通じて、社会的効果と経済的効果を高めていく活動を進めている。中山氏は「以前までは教育委員会がスポーツを所管し、その地域の住民に焦点を当てていたが、地域外から来るスポーツをする人、見る人への対応としてスポーツツーリズムが提唱された」と説明。JSTAでは、スポーツ資源とツーリズムを融合し、交流人口の拡大、まちづくり、スポーツイベント招致などを進めている。また、スポーツ庁はスポーツによる地方創生を目指していると付け加えた。

交流人口については、ラグビーワールドカップ2019や東京五輪2020のレガシーとして、ホストタウン交流が継続している例を紹介。多摩市とアイスランド。府中市とオーストラリア、世田谷区と米国、タイと秋田県大館市などがスポーツを通じた交流を深めているという。

また、まちづくりについては、「地域住民がスポーツをしないと、スポーツツーリストは呼べない」(中山氏)との考えから、スポーツによる健康まちづくりを推進。さらに、地元のプロチームや強豪校のスポーツ資源を観光資源として活用する取り組みも進めている。

東京でも様々なスポーツツーリズムを支援している。多摩や島しょ地域ではアウトドア、大相撲や柔道の講道館などでの武道ツーリズム、東京マラソンなどのランニングなどを挙げた。スノーツーリズムでは、東京にスキー場はないものの、インバウンド旅行者による東京でのスポーツ用品の購入の経済効果は大きいという。

加えて、中山氏は民間主導で進む新たなスタジアム・アリーナ建設の経済効果についても言及したほか、プロチームの経済効果として、Jリーグ町田ゼルビアの2025年シーズンの経済効果が192億円に達したことも紹介した。

JSTAの活動を説明スポーツ庁では、スポーツツーリズムを推進する組織として「地域スポーツコミッション」ネットワークを形成する政策を進めており、2025年時点で全国で216団体に拡大した。中山氏は「スポーツ振興だけではなく、スポーツを活用した他の産業との連携も重要な要素」と指摘。一方で、JSTAの会員もスポーツ系が多く、観光系が少ないなど依然として垣根があることから、「それを崩していくことも必要」との考えを示した。

また、地域スポーツコミッションによる地域課題の解決の例として、廃校再生など未活用不動産の活用、地域産業連携、民間人の活用、AIカメラやeスポーツなどのITの活用を挙げた。

中山氏は「スポーツで人が動いていることは確か。スポーツプログラムを取り入れることで滞在日数も延びる。スポーツ資源を観光資源化していくことが必要。住民の健康寿命の延伸やシビックプライドの醸成などのインナー政策に加えて、交流ビジネスとして民間の力を活用しながら、地域活性化のエンジンにしていく」と話し、スポーツツーリズムの意義を強調した。