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世界大手の独立系高級ホテルブランド「プリファード」CEOに聞いた、日本の「地方」に注目の理由、そこには本物の旅行体験

訪日インバウンド需要が増加するなか、世界大手の独立系ホテルブランド「プリファード・ホテル&リゾーツ」は、日本市場に熱い視線を送っている。同ブランドは1968年1月に創業。現在のところ、世界80カ国で625軒以上、日本では13軒の独立系ホテルが加盟している。このほど来日したプリファード・ホテル&リゾーツのリンジー・ユベロスCEOに日本市場での戦略、新たなラグジュアリー市場のトレンドを聞いた。

プリファード・ホテル&リゾーツは、加盟ホテルに対して、グローバルな販売システム、マーケティングプラットフォーム、ロイヤルティプラットフォームを提供し、旅行業界からエンドユーザーまで予約可能な流通チャネルを構築している。

その傘下のコレクションには、「レジェンド」「L.V.X.(エル・ヴィ・エックス)」「ライフスタイル」「プリファード・レジデンス」があり、ライフスタイル、旅のスタイル、MICEなど、それぞれのニーズに合わせたラグジュアリーな宿泊体験を提供している。

プリファード・ホテル&リゾーツに加盟するうえでは、厳格な基準があるという。ユベロス氏によると、サービス関連の基準、部屋数などの規模、立地、館内設備などで細かい基準を設けていると話す。そのなかでも、「最も重視しているのがサービス関連の基準。それゆえ、加盟ホテルはすべて4つ星、5つ星を含む高級ホテルのみ」と話す。品質保証については、「第三者機関による年次検査を実施している」と続けた。

また、加盟ホテルが、どのコレクションに属するかを決める基準も設けているという。日本では最上位のレジェンドには「ホテルニューオータニ・エグゼクティブハウス禅」「ザ・キャピトルホテル東急」、L.V.X.には「ホテルニューオータニ・ザ・メイン」「セルリアンタワー東急ホテル」「ザ・サウザンド京都」「ホテル椿山荘東京」が加盟している。

ユベロスCEO「ゲストの満足度を高めるためには、スタッフのトレーニングが非常に重要」

グローバルで持続的な成長を

コロナ禍には加盟ホテルが減少したが、その期間を除けば毎年増加している。2025年には新たに世界で79軒が加盟した。

一方で、ユベロス氏は長期的な戦略として、「ホテルの数を増やすことについては慎重。数よりも、私たちが進出したい市場に重点を置いている。まだ加盟ホテルがない市場であれば、積極的に進出していきたい」との考えを示した。

「重要なのは、私たちの価値観に合致するホテルを増やすこと。また、国際市場に対応しつつも、地域密着も加盟基準として重視している」という。

加えて、グローバル戦略として、独立系ホテルのポートフォリオ全体で持続可能な成長を目指していくなかで「パートナーシップを通じて、どのように革新し、成長していけるかを常に考えている」と強調した。そのうえで、プリファード・ホテル&リゾーツが考える革新性について、「業界のトレンドを把握し、ウェルビーイング、家族旅行などその分野で優れた実績を持つホテルの価値をさらに高めるために、マーケティングプログラムやその他のプラットフォームをどのように運用していくかを常に考えている」と説明した。

そのなかでも、注力しているポイントがサステナビリティだ。プリファード・ホテル&リゾーツでは気候変動対策計画を策定し、ホテル各社の取り組みを支援。ユベロス氏は「今では誰でも口にする言葉だが、私たちは企業として有言実行している」と自信を示した。

日本の「地方」に成長の可能性

日本市場については、「今後も力強く成長していくだろう。プリファード・ホテル&リゾーツとしても事業を拡大していきたい」と意欲を示す。具体的には、現在のところ加盟ホテルは東京と京都に集中しているが、「多くの海外からの旅行者は日本の地方にも足を運びたいと考えている」(ユベロス氏)ことから、今後は大阪、名古屋、北海道、箱根などでの加盟ホテル開拓も視野に入れているという。

「日本は、現代の旅行者が求める本物の旅行体験ができる理想的な国。多くの外国人旅行者が日本の奥深さを体験したいと思っている。それは日本の大きな強みになっている」と、日本市場への期待を語った。

ラグジュアリートラベラーが求めるものは?

世界中のラグジュアリートラベラーに選ばれるプリファード・ホテル&リゾーツの加盟ホテル。ユベロス氏は、現代のラグジュアリートラベラーの特徴について、「ステータス重視というよりも体験重視。彼らにとって一番重要なのは時間」と説明する。そして、旅行の予約でもホテルでの過ごし方でも「簡単かつスムーズな動線を評価する」と明かす。

また、「押し付けがましいやり方ではなく、客室のアメニティから行きたいレストランの予約方法まで、自分が本当に重視する事柄に合わせてパーソナライズされたサービスを受けられることを非常に重視している」と話し、宿泊者それぞれに合わせた顧客体験を求めているとした。

さらに、現代のラグジュアリートラベラーにとって「ウェルビーイング」は大きなテーマとなっており、それを優先するホテルを選ぶ傾向があるという。その基準は「客室の遮光カーテンや照明、ジム、食事などあらゆる面に及ぶ」という。

そのうえで、ラグジュアリートラベラーのニーズに応えていくうえでは、ホテルスタッフの存在がこれまで以上に重要になってくると指摘。「パーソナライズされた滞在体験を作り出すのは、結局は人。人の細やかな心遣いが彼らの心を掴む。それはAIには置き換えられない」と強調した。

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注目の6つの旅行トレンド

ユベロス氏は、2026年の旅行トレンドについても触れた。まず、挙げたのが「スポーツケーション」。米国・カナダ・メキシコで共同開催されるFIFAワールドカップを機に世界中から多くの旅行者が3カ国を訪れると予想される。それ以外にも、現地でのスポーツ観戦やコンサートへの参加などを目的にした「ライブツーリズム」は、今後も旅行者の大きなモチベーションになると見ている。

次に、歴史的建造物や歴史を感じる体験などの「ヘリテージ・トラベル」も興味深いトレンドに挙げた。そのなかには、自分のルーツを辿る旅行も含まれ、「世代を超えた旅行が増えるのではないか」と見通した。

ウェルネスな滞在のニーズの高まりにも言及した。特に、科学的アプローチを取り入れた「コグニティブ・ウェルネス」の需要が高まると予想している。従来のリラクゼーションを超えて、 長期的な健康効果をめざす新しい時代の回復型プログラムだ。こうした個人に最適化されたウェルネスが求められるとしたうえで、ユベロス氏は「日本には、温泉文化などユニークなウェルネスの伝統がある」と話し、その潜在力の高さを評価した。

加えて、ペットツーリズムも最近のトレンドとして挙げた。特に米国ではペットも含めた家族全員が楽しめるラグジュアリー体験へと進化しており、ペット専用のリゾート&スパ、グルーミング、獣医サービスなどを提供し、ペット同伴でユニークな滞在が体験できるホテルも増えているという。

また、従来の大型クルーズとは異なる小規模なリバークルーズにも注目。より没入感のある文化体験としてのクルーズも訴求力を高めているという。プリファード・ホテル&リゾーツは、新たにエジプトで「Wings Encora Collection」と戦略的パートナーシップを締結し、ナイル川を巡る水上ホテルをポートフォリオに加えた。

最後にユベロス氏は、「旅行者の間では画一的な体験ではなく、意味のある独自性の高い滞在を求める傾向が強まっている」と発言。画一的な体験を「ベージュ化」と言い換え、「そこからの解放」が進むと指摘したうえで、「宿泊者と本当にユニークな地元の体験につなげ、思い出作りを充実させることができる独立系ホテルの需要は高まる」との見方を示した。

トラベルジャーナリスト 山田友樹