米国の夏の旅行シーズンは5月最終月曜日のメモリアルデーを含む連休から始まる。2026年は、中東情勢による燃料価格の高騰やインフレなどで旅行形態を見直す動きが出ている。
全米旅行業協会(U.S. Travel Association)は、2026年の年間旅行支出の増加は、前年比わずか1%にとどまると予測している。FIFAワールドカップが開催され、海外からサッカーファンが米国を訪れる機会は増えるが、支出の増加を支えるのは主に国内レジャー旅行になると見込まれている。
ただ、旅行先を近場に変更したとしても、物価高騰の影響を和らげることは容易ではないと見られている。非営利団体の租税経済政策研究所は、今年のメモリアルデー3連休に、米国民は前年と比べて合計35億ドル(約5570億円)多いガソリン代に支出すると推定している。2026年5月21日時点の米国のレギュラーガソリン1ガロンあたりの平均価格は4.56ドル(約725円)。1年前は3.18ドル(約506円)だった。
そのほかの旅行費用も上昇している。最新の消費者物価指数によると、4月の航空運賃は前年同月比20.7%、バスや地下鉄などの都市の交通費は同5.6%、宿泊費は同4.3%、外食費は同3.6%、それぞれ上昇した。
旅行パターンの変化
旅行業界の予測によると、物価上昇にもかかわらず、米国人は依然として旅行に出かけたいと考えている。長距離旅行を週末の小旅行に切り替えたり、近場の目的地を選んだり、車の代わりにバス・電車を利用したり、自炊したりするなど費用を抑える工夫をしてでも、旅行は続けたいと思っているようだ。
米国自動車協会(AAA)は、連休中の5月21日から25日にかけて、4500万人の米国人が自宅から少なくとも50マイル(約80.47キロメートル)以上移動すると予測。また、運輸保安庁(TSA)は、5月21日から27日までの一週間に1830万人の旅客が空港の保安検査場を通過すると見込んでいる。
バンク・オブ・アメリカのアナリストによると、多くの世帯が夏休みを計画しているものの、旅行期間の短縮、宿泊費の抑制など、何らかの妥協をしているという。マスターカードは最近のレポートで、消費者はますます価格重視になり、旅行を全くしないのではなく、旅行先や時期を調整しているようだと分析している。
アナリストたちは、旅行支出の二極化が目立つようになっていると指摘する。高所得世帯は支出を続ける一方で、低所得世帯は支出を控えるか、旅行を完全に諦めているという状況だ。バンク・オブ・アメリカによると、低所得世帯の間では今年の夏に旅行の予定がないと回答する割合が非常に高いという。
クィニピアック大学による最新の世論調査では、48%が休暇の支出を削減し、54%が外食費を減らし、36%が運転を控えていることが明らかになった。
旅費以外のストレスも
世界中の航空会社は燃料費と運航コストを削減するため、フライトの欠航や路線の縮小を実施していることも、海外旅行を検討している人々にとって新たな懸念材料となっている。
ネバダ大学ラスベガス校の観光社会学者マルタ・ソリゴ氏によると、現在、旅行に影響を与えている様々な要因によって、旅行計画は精神的に負担が大きくなっており、人々はよりシンプルで手軽に管理できる休暇を求めるようになっているという。
消費者行動を研究するバージニア工科大学のホスピタリティ学のナンシー・マクギー教授は、人々は「どこに行くか」よりも「なぜ行くか」を重視する傾向が強まっていると指摘。「人々は『思い描いていたような豪華な旅行はできないが、他に何ができるだろう?』と考えているようだ。量より質を重視する人が増えているのだろう」と話す。
※ドル円換算は1ドル159円でトラベルボイス編集部が算出
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