2026年8月中旬に発表されたエアビーアンドビー(Airbnb)とトリップアドバイザー(Tripadvisor)の提携は、旅行業界、特にタビナカ市場において非常に象徴的な戦略転換として注目を集めている。トリップアドバイザーグループが提供するツアー、アクティビティ、観光スポットの一部がAirbnbで予約可能になるものだ。この提携発表に先立ち、トリップアドバイザー傘下のタビナカ予約プラットフォーム「Viator(ビアター)」は、ツアーオペレーター(体験・ツアー事業者)向けのグローバル・サプライヤー契約を改定した。米観光産業ニュース「Skift(スキフト)」が報じている。
この改定によって、OTA、航空会社、バケーションパッケージ販売業者など、いわゆる「流通パートナー(チャネルパートナー)」は、体験商品の販売価格を独自に設定できるようになる。契約の概要には、「新条件では、消費者に表示される最終的な小売価格について、Viatorとそのパートナーが決定権を持つことが明確化されている」と記されている。
流通パートナーには、ブッキング・ドットコム、エクスペディア、Costco、そしてトリップアドバイザーとの提携で体験商品パートナーとなったAirbnbも含まれる。
今回の改定には、保険や手数料の透明性に関する変更なども含まれている。詳細なポリシーが確立されることで、数千もの商品情報を個別に審査する必要がなくなることから、パートナーにとってはメリットになるかもしれない。
ある業界関係者は、今回の改定について、「透明性を確保するための措置だろう。大手パートナーが割引をおこなったり、ツアーを『ロス・リーダー』(集客のための目玉商品として赤字覚悟で提供する商品)として活用したりすることに備えているのだと思う」との見解を示す。
契約の新しい文言が意味するものとは?
ツアーオペレーターへの支払いは、「ネットレート」または「ホールセールレート」と呼ばれる卸値価格、つまりViatorや流通パートナーに対して請求する金額に基づいておこなわれる。一方、「リテールレート(小売価格)」は、体験を予約する顧客が実際に支払う価格。これら2つの価格の差額がViatorや流通パートナーの収益原資となる。
例えば、あるスキューバダイビングのインストラクターがダイビングのネットレートを78ドルに設定したとする。ViatorやOTAパートナーが、これを100ドルの小売価格で販売し、その差額である22ドルを分け合う、といった形だ。しかし、ツアー運営会社が提示する体験の販売価格と、Viatorのプラットフォーム上に表示される価格が異なる場合、それが問題の種となることがある。例えば、あるスキューバダイビングのインストラクターが自ら100ドルでダイビングを販売している一方で、Viatorやその販売パートナーが90ドルという割引価格で販売しようとすれば、事業者の直販価格を下回ることになるからだ。
Viatorのポリシーはどのように変わってきたか
Viatorの価格設定に関するポリシーは時間の経過とともに変化し、現在ではツアーオペレーターの裁量が縮小している。複数の情報筋によると、5月に行われたサプライヤー契約の改定以前は、小売価格(販売価格)を決定する権利はViatorのみが持っていたが、実際には流通パートナーも価格設定をおこなっていた。
ツアーオペレーターは、現在もViatorに推奨小売価格を提示しているが、以前に比べると、Viatorや流通パートナーに対してその価格を遵守させるための圧力は弱まっている。今回の改定は、Viatorや流通パートナーがすでに持っていた価格設定の裁量を契約上明確にしたものともいえる。Viatorは、ツアーオペレーターの直販事業や競合他社との競争力を高めるため、小売価格を独自に設定する動きを強めてきた。
トリップアドバイザーとAirbnbの提携が与える影響は?
Airbnbは、トリップアドバイザーとの提携によって、2026年後半からトリップアドバイザーグループの厳選された「体験(アクティビティ)」コンテンツにアクセスできるようになる。今回の契約変更は、その提携が発表される直前に行われた。
発表の中では、Airbnbに提供する体験商品の供給元としてViatorを明示していない。一方、トリップアドバイザーは2025年第4四半期に、ViatorとTripadvisorの体験事業を新たな「Experiences」部門に統合した。この組織再編に伴い、流通に関する契約はViatorではなく、トリップアドバイザーの管轄下に移っており、関係者によると、両ブランドの体験事業は「実質的に同一のもの」とされているという。
Airbnbは、これまでも、ブッキング・ホールディングス傘下の予約管理システムを通じて、小規模オペレーターを含む供給源にアクセスしてきた。また、数ヶ月前からトリップアドバイザー傘下のBókun(ボークン)にもアクセスしている。
関係者によると、現在のところ、今の限定的なアクセス範囲が拡大されるような動きは見られない。AirbnbがBókun経由で体験商品の在庫にアクセスする場合、個々のツアーオペレーターとそれぞれ商業契約を締結する必要がある。
ある業界関係者は、AirbnbによるBókunへのアクセスだけでは、Airbnbが求める機能は実現できないと話す。「全体像として捉えれば、厳選された体験商品を提供するAirbnbのモデルでは、事業を拡大できないと認めたことの表れとも受け取れる。特定の製品分野で大きな成果を上げるためには、Airbnbは在庫数を大幅に増やす必要がある」との見解を示した。
いずれにせよ、トリップアドバイザーとAirbnbとの提携の範囲がいまだ不明確である点にも留意しておく必要があるだろう。
※編集部注:この記事は、米·観光専門ニュースメディア「スキフト」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳·編集したものです。
オリジナル記事: Viator’s Updated Operator Agreement Formalizes a Power Shift in Experiences Pricing: Scoop
筆者:Dennis Schaal氏
