旅行会社専用の飲食店団体予約サービス「団タメ!」が、インバウンド市場の拡大に合わせて、利用が拡大している。「食」がインバウンドのキラーコンテンツとなるなかで、このサービスは団体に特化し、旅行会社の要望と飲食店のサービス内容とをマッチングさせる。両者のニーズに応えるとともに、訪日団体客の満足度向上にもつなげている。
「団タメ!」の強みや今後の展望などについて、運営会社ボーダレスシティ社長の大島秀崇氏に聞いた。
団体予約に特化したサービスを提供する背景とは?
IT業界出身の大島氏が、インバウンドを意識し始めたのは、過去にニューヨークで働いていたときだ。「都市としてのコンテンツは、東京も負けない。PRの仕方によってはニューヨークよりも人が集まる都市になると感じた」と振り返る。
帰国後、飲食店予約サービスを展開するスタートアップ企業に入社。そこで、団体予約に特化した予約サービスの立ち上げに携わった後、2011年にボーダレスシティを創業した。
「個人で飲食店を検索・予約するBtoCサービスはあったが、団体向けのBtoBサービスはなかった。旅行会社などと話している中で、彼らの抱える課題を解決することでビジネスとして成り立つ」と考えたという。
その課題とは、旅行会社および飲食店のデジタル化の遅れだ。予約プロセスの主流はファックスでのやりとり。「IT出身の自分としては、信じられない世界だった」と振り返り、「双方のノウハウをデジタル化することで、旅行者にもいいことが起きるはず」と考えた。
一方で、システムを立ち上げたばかりのころは、同社が旅行会社と飲食店の間に入り、ファックスを受け渡しする場面も多くみられた。しかし、その間、目にするファックスの内容から双方のニーズを吸い上げることができたという。
その後、2014年ごろにシステムをアップグレードし、ファックスの取り扱いを全面的に取りやめた。その時に開始したのが飲食店側が旅行会社に「団体予約の立候補」ができるサービス。旅行会社が場所や人数、価格など希望情報を登録すると、条件に合致した飲食店がメニューの提案とともに立候補する仕組みだ。
直前予約にも対応し、旅行会社の業務効率化に貢献。同時に飲食店側もインバウンド団体の集客を積極的におこなう機会となり、戦略的に空席を埋めることができるようになった。
「市場ごとの食の傾向データも蓄積できる」と大島氏
「団タメ!」の強みとは、双方に大きなメリット
「団タメ!」は、現在、3000社以上の旅行会社が登録し、取引飲食店は全国で1万店舗を超える。訪日団体旅行は、2025年3月現在で101カ国の取り扱い実績がある。国内団体旅行に加え、インバウンド市場の拡大に伴って、訪日団体旅行の取り扱いも右肩上がりで増えてきた。
現在は、立候補型マッチングサービスも継続しているが、旅行会社による「団タメ!」での検索・予約が主流となっている。契約旅行会社は地図上からエリアで検索できるほか、利用目的・シーン別で店舗を探すこともできる。大島氏は「旅行会社に寄り添った形で設計されているのが特徴」と説明。ツアーで複数の出発日があるシリーズを一括で予約できる機能も強みとなっている。
一方、飲食店にとっては、団体予約が事前に入ることで、食材の仕入れや人員の配置などの部分でメリットは大きい。また、「団タメ!」プラットフォームに掲載することで、旅行会社ごとに営業や情報提供をする必要がなくなる点も大きいという。
さらに、インバウンドでは、アレルギー、グルテンフリー、ヴィーガン、ハラールなどの対応でも役立っている。この対応は、細かな情報をやり取りする必要があり、手書きのファックスでは混乱する場合も多かった。「団タメ!」を活用することで、旅行会社と飲食店が予約後にチャットを介してコミュニケーションするなど、団体客の個別対応に関する意思疎通も容易になっている。
このほか、大島氏は、デジタルプラットフォームとして、即時予約可能な店舗の検索、多様な決済方法、請求書の自動発行、手数料の精算、キャンセル料の徴収(団体ではノーショーが発生するケースは稀)などシステム上の機能も「双方にとって大きなメリット」と自信を示した。
「団タメ!」のサイト
「フードダイバーシティ」との協業でサービスの質を向上
ボーダレスシティでは、サービス拡大に向けて、他企業とのパートナーシップにも力を入れている。大島氏によると、大手ビールメーカー4社との協業では、店舗でのビールサーバー切り替えの時に飲食店に「団タメ!」のサービスを紹介してもらっている。
飲食店にとっては「団タメ!」を通じて団体客を獲得する機会が増える。ビールメーカーにとっては安定的に団体客が増えることで、その店舗でのビール消費量が増加することが期待できる。訪日団体客にビールを楽しんでもらえれば、海外販売に向けた布石にもつながる。
また、2026年5月には飲食店・宿泊施設向けに多様な食の導入支援をおこなう「フードダイバーシティ」と業務提携を締結した。インバウンドツアー客が直面するアレルギーや宗教上の制約などの課題解決を目指す。
具体的には、「団タメ!」を利用する飲食店に対して、フードダイバーシティが持つノウハウ(メニュー開発、マニュアル整備、仕入れ支援など)を提供していくほか、インバウンドツアーの食事場所を探す旅行会社との効率的なマッチングを促進していく考えだ。
大島氏は「フードダイバーシティが認めるメニューを検索軸として作り、より安全に予約できる環境整備を進めていく」と先を見据える。
団体はビジネスチャンス
「団タメ!」では旅行会社からのリクエストに応える形で、アクティビティの団体予約も始めた。相撲の体験施設などの手配も同じプラットフォーム上でおこなっている。
また、飲食店の団体予約からさまざまなインバウンドのデータを取得していることから、「団タメ!ワールド・リサーチ」として日本の企業向けにマーケティング支援も展開している。例えば、食品メーカーの海外進出につながるような支援が可能となっている。
さらに、今後は複数の予約サイトの在庫や料金などを一元管理するサイトコントローラーや旅行業務SaaSシステムとのAPI連携も視野に入れる。
近年、インバウンド市場は、個人旅行化が進んでいるが、団体需要がなくなることはない。「団体は旅行会社にとって売上を伸ばせるチャンス」と大島氏。訪日客の日本の食に対する期待値が高いなか、個人客は個人の自己責任で飲食店を選ぶが、団体客は団体を取り扱う旅行会社やランドオペレーターにその責任がかかる。
大島氏は「我々が持っている団体のデータをもとに、ビジネスチャンスを作りだし、旅行会社や飲食店とともに、日本の食をコンテンツとして売っていきたい」と意欲を示した。