
先ごろ開催されたタビナカに特化した観光イベント「Tabinaka Summit 2025(タビナカサミット)」では、「観光DX!チャネルマネージャーが実現する収益拡大」と題したセッションがおこなわれた。
JTBエリアソリューション事業部 観光DXチームBÓKUN事業運営センターグループリーダーの渥美研司氏、NutmegLabs Japan(ナツメグ)アクティビティ事業責任者の清水勝也氏、リンクティビティ販売促進部 EU&NAチャンネルマネージャーの呉懿文氏が登壇。各社の強みとともに、タビナカ事業にとってのチャネルマネージャーの重要性についての議論された内容をレポートする。
タビナカ各社の強みとは?
まず、JTB BÓKUNの渥美氏は、同社の強みをトリップアドバイザーのBÓKUNとの連携、20社以上の海外OTAとの接続、事業者間のシステム連携など、機能面での強みを挙げた。そして、タビナカ事業者にはオフラインによる業務が依然として大きいとしたうえで、「在庫管理などオンラインでオペレーションを改善できる点では、伸びしろがまだたくさんある」と話した。
NutmegLabsの清水氏は、予約在庫の柔軟な管理、ユーザーとのコミュニケーションなどを通じた業務の効率化が強みであると説明。自社サービスの価値については、「OTAを使いながらも、自社チャネルでの予約を伸ばしていきたい事業者にマッチする」と話し、SEO対応や予約ページの仕組みなどを提供することで、直販比率を上げることが可能と強調した。
リンクティビティの呉氏は、各国の主要OTAと事業者自社予約サイトの在庫管理をすべて一気通貫でできる点を強みとして挙げた。サービスの価値としては、OTAと直販に対応し、中国市場でテンセント社と提携によって販路の最適化を果たしている点を強調。また、東京メトロなどの交通事業者と観光施設との周遊チケットの例を挙げ、「点と点を線でつないで顧客価値を上げている」と説明した。
(左から)リンクティビティの呉氏、NutmegLabsの清水氏、JTB BÓKUNの渥美氏
チャネルマネージャーの存在価値、AIでできること
タビナカ市場における販売チャネルを管理するチャネルマネージャーの今後について、リンクティビティの呉氏は「海外に比べて日本はこれから」との認識を示した。そのうえで、「業務の効率化、販路の開拓、競争力の向上で不可欠」と位置付けた。
NutmegLabsの清水氏は、今後も増加が続くと予想されるインバウンド需要について触れ、「体験事業者が旅行者に楽しい時間を提供するためには、(タビナカ事業者が)ツールを使って業務を効率化しつつ、その時間でさらに魅力的な商品を作ることが必要なのではないか」と提案した。
JTB BÓKUNの渥美氏は、事業者に向けて「オペレーションをしっかり整理したうえで、今後の戦略を立てて、どのチャネルマネージャーを使うかを考えていく」必要性を指摘した。
観光産業でも活用が進むAIについても意見交換がおこなわれた。JTB BÓKUNの渥美氏は、AIによって説明文の自動生成、多言語化、レビューの分析などが可能になることで、「自社サービスの付加価値を高めていくことができるようになる」と予測した。
また、NutmegLabsの清水氏は、AIによる人手不足対策に言及。「業務で人間が担うべき業務と、機械で代替可能な業務を振り分けることができるようになる」と話し、予約の受付に加えて、利用者とのコミュニケーションなどで効率化が向上すると説明した。今年、夏から秋にかけて、旅行・レジャー向けDXプラットフォーム「Nutmeg」で新しい機能を順次リリースしていく予定だという。
リンクティビティの呉氏は、同社サービスの中でのAI活用について検討を始めていることを明かしたうえで、マンパワーに頼っている問い合わせ対応などでの活用に期待を示した。また、各国でAPI仕様が異なるなか、「AIによって統一化も可能ではないか。そうなると流通の効率化が上がる」と発言した。