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カナダ観光局、日中韓3カ国合同のセールス・ミッション開催、新ブランドでの展開から、共有されたストーリーまで取材した

カナダ観光局は、大阪・関西万博に合わせて、大阪で日本、中国、韓国の合同で「アジア・リージョナル・セールス・ミッション」を開催した。日中韓から旅行会社やツアーオペレーターから39人、カナダからサプライヤー17社・団体24人が参加。また、オンタリオ州のスタン・チョー観光・文化・ゲーミング担当大臣も加わった。

ミッションは、初日の東京のカナダ大使館でのレセプション後、大阪に移動。セミナーではカナダから来日した各パートナーから最新情報が共有されたほか、万博カナダ・パビリオンで、各国のキーパーソンがカナダ観光の潜在力を語る「カナダ・トーク」も実施された。3日間にわたるイベントをレポートする。

日本では「カナダの、その奥へ―2025」キャンペーン

カナダ観光局は2025年5月に開催されたカナダ最大の旅行商談会「ランデブーカナダ2025」で、新たなブランド「Canada, naturally」を打ち出した。カナダで日常的に出会うことができる「心温かい人々(Open-hearted people)」、「新鮮な視点を受け入れるオープンな心(Open minds)」、「広大な空間(Open Spaces)」の3つの「オープンネス」を訴求し、学びや体験を求める高付加価値旅行者の誘致に注力している。

同局マーケティング戦略担当上級副社長兼チーフマーケティングオフィサー(CMO)のグロリア・ロリー氏は、大阪でのセールス・ミッションで、新ブランドのもとにすすめる活動について「カナダを訪問する旅行者に本物の体験を提供していく。その体験を日常に持ち帰ってもらうために、カナダの素晴らしさや人々の温かい心を感じられるコンテンツを創造していく」と話した。

日本では、「カナダの、その奥へ―2025」としてキャンペーンを展開。万博開催に合わせて、特設サイトを開設し、限定動画やメディアとのタイアップコンテンツ、カナダにゆかりのある人々のメッセージ動画など、豊富なコンテンツでカナダのユニークな体験や物語を紹介している。

セール・ミッションでは、カナダのセラーが「The 17 STORIES of OPENNESS」として、日中韓の旅行会社に向けて最新情報を提供した。各州や市の観光局や観光事業者、さらに観光関連団体として国立公園を管轄するパークス・カナダ、カナダ先住民観光協会(ITAC)が、それぞれのユニークな体験を紹介した。

日中韓から旅行会社、カナダからサプライヤーが集結

このほか、エア・カナダは最新のプロダクトを説明。機内食では、今年3月から、ミシュラン星を獲得したトロントの「懐石遊膳橋本」のシェフ橋本昌樹氏が監修する和食メニューを、カナダ/日本路線のシグネチャークラスで提供していることを紹介した。さらに、アップルTV、オーディブル、ディズニープラスなどを含めて計約4600時間にもなる機内エンターテイメントコンテンツ、2026年から長距離国際線に導入される無料Wi-Fi、バンクーバーとトロントの空港で提供しているラウンジ「エア・カナダ・シグネチャー・スイート」などを紹介した。

カナダについて語る、4人のストーリー

万博カナダパビリオンで実施された「カナダ・トーク」では、カナダ観光局のロリー氏に加えて、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)アジア・リージョナル・ディレクターのサラ・ワン氏、韓国SBSメディアネット・シニア・エグゼクティブ・ディレクターのクォン・ホジン氏、脳科学者の茂木健一郎氏が登壇した。

ロリー氏は、自身が体験したノースウエスト準州のマッケンジー川でのカヌー旅行を紹介。2週間の旅行中、スマホもなく、同じカヌー旅行者以外とは誰も会わず、手付かずの自然の中で、現地の人たちと触れ合った「まさにCanada, naturallyだった」と振り返った。

そのうえで、カナダの本物の魅力として「人々とリアルな世界とを繋げるユニークなオープンネスは驚きだった。カナダを訪問する人たちには、そうした体験から何かを感じて、日常に戻った時に、その感動を心のどこかに留めてほしい」と呼びかけた。

カナダ観光局ロリー氏

WTTCのワン氏は、「ツーリズムの再生力」について講演。観光が世界経済に与える影響の大きさに触れたうえで、「観光は、現在と過去、伝統と革新、訪問者と地域をつなぐもの」と話し、カナダでは先住民観光が重要な役割を果たしていると強調した。

また、ITACが先住民観光の価値を高めるために創設した認証制度「The Original Original」についても言及。認証制度が、先住民観光の質を維持・向上させるものとして評価し、「先住民文化は過去の遺物ではなく、彼ら自身が語る物語は現在でも生きているもの」と話した。

加えて、ツーリズムにおける環境への配慮や文化の保護について触れ、「それらは訪問者だけでなく地域コミュニティにとって利益のあること」と話したうえで、「ツーリズムを産業としてだけでなく、未来に向けたムーブメントとして再認識する時」と力を込めた。

WTTCのワン氏

SBSメディアネットのホジン氏は、韓国のエンターテイメントコンテンツ(Kコンテンツ)がどのようにカナダへの旅行の動機づけになっているかについて講演。ホジン氏は、「韓国ドラマは、視聴者の感情を揺さぶる体験。そのインパクトは、エンターテイメントの枠を超えている」と話した。

大ヒットした韓国ドラマ『Goblin(トッケビ~君がくれた愛しい日々~)』では、ケベックシティもロケ地となり、ドラマに登場する「カナダのおしゃれな雰囲気の場所」のモデルとして「フェアモント・ル・シャトーフロントナックホテル」が登場。多くGoblinファンが世界中からケベックシティを訪れ、ドラマの世界観を経験した。

ホジン氏は、「Goblinは、カナダを旅する文化商品となった。そのストーリーが人々の心を揺さぶり、カナダとのつながりを高めた。これこそ、韓流コンテンツの力」と強調。ストーリーと実際の場所をつなげれば、「意味のある旅になる」と話した。

SBSメディアネットのホジン氏

脳科学者の茂木氏は、15歳の時に英語の勉強のためにバンクーバーに留学した経験に触れ、「カナダの開放的な生き方や多様性に影響を受けてきた」と話し、2017年に初めての英語による著書『Ikigai(生きがい)』にも影響を与えたと明かした。

「カナダの多様な文化は、自分自身を映し出す鏡となった。人はそれぞれユニークな存在だと知った」と茂木氏。「Ikigaiとは、自分らしくあること、他者をリスペクトすること。その意味で、カナダはIkigaiの国」と強調した。

脳科学者の茂木氏