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観光産業の主要企業・組織による「観光立国推進協議会」開催、官民トップが2026年の展望、観光の「基幹産業化」へのビジョンを共有

観光立国推進協議会は、2026年1月14日、第12回観光立国推進協議会を開催した。観光庁の取り組みや観光産業を取り巻く現状や、日本観光振興協会が策定を進めている「基幹産業としての観光が目指す姿を描く中長期的ビジョン」の中間論点が共有された。

観光立国推進協議会とは、観光関係企業・団体が集い、民間セクターとしての方針の策定などおこなう組織。交通、鉄道、宿泊、旅行のほか幅広い産業が連携し、約100団体・企業が参画している。日本観光振興協会が2014年に立ち上げた。

冒頭、協議会委員長で日本観光振興協会会長の菰田正信氏は、観光産業が取り組むべき課題として「オーバーツーリズムへの対応」「均衡の取れた双方向交流の実現」「国内観光の一層の需要拡大」「慢性的な人材不足への対応」という 4点を挙げたうえで、策定を進める中長期ビジョンについて「観光の生み出す何物にも代えがたい価値を再認識していただくとともに、次世代の若者が観光産業を職業として選びたいと思えるようなビジョンを取りまとめる」と意欲を示した。

基幹産業として観光が目指す姿を検討

日本観光振興協会が策定を進めている中長期ビジョンについては、座長を務める早稲田大学大学院経営管理研究科研究科長の池上重輔教授が説明した。策定にあたっては、観光産業を持続可能で魅力ある基幹産業として訴求していく目的で、2025年6月に検討会を発足。当日は、これまで5回の検討会で議論を重ねてきた中間論点が共有された。

池上教授は、これまでの議論から、観光をレジャー産業から国家基盤産業へ再定義し、住民、旅行者、事業者、自然文化の「四方良し」にする方向性を提示。そのうえで、オーバーツーリズムの課題については、オーバーコンセントレーション(過度集中)になる設計の問題へと意識を変え、規制だけでなく、時間、空間、情報で過度集中を分散する設計を考えていく必要があるとした。

また、検討会ではこれまで、KPIも従来の訪問者数から分散度、再訪率、滞在日数、住民満足度などへの転換が議論されてきたほか、マーケティング戦略では、価値観、行動、情報収集方法、意思決定などが多様化しているなか、一律の戦略は終焉しているとの認識を共有。AIを活用した市場別のアプローチをおこなう必要性に触れた。

AI時代の観光ブランドについては、AIによる可読性を高めることが重要で、そのカギは地域もしくはエリアとしてのタグ設計・構造化データと指摘。そのうえで「エビデンスがあるブランドというものに転換していく必要がある。それによって、今後10年ほどで、観光ブランドの下剋上のようなことが国内でも起こるのではないか」と続けた。

観光産業の生産性については、量的目標から価値目標への転換が必要とし、これからは「最適化、予測、構造化、AIによる効率、共感、物語、解釈、感情の人間という関係のなかで、観光は情熱が経済に転化するパッションエコノミーとなるのではないか」と話した。

さらに、地域と旅行者との関係については、これまでの消費者と提供者という関係から、観光客を共創者として、ともに未来を作る共創経済へ再定義することも議論されているという。

このほか、人材については、「観光人材の処遇改善には専門職化が必要。トップ幹部、リーダー層、マネジャー層、そしてスタッフまで重層的に専門職化が求められる」と発言。また、DMOについては、観光の運営主体から地域の価値を編集・設計する地域経営機関へと進化させる必要性を示した。

今後、検討会では2026年6月に最終的なビジョンを取りまとめ、協議会の通常総会で発表する予定だ。

協議会の様子

観光庁、出国税の引き上げによる財源で政策強化

協議会では、観光庁から2026年度からの第5次観光立国推進基本計画の方向性や2026年度予算案について説明された。

基本計画について、村田茂樹長官は、「インバウンドの受け入れと住民生活の質の確保との両立」「国内交流とアウトバウンドの拡大」「観光地・観光産業の強靱化」の3つの柱で検討を進めていると説明。そのうえで、2026年7月1日から実施される国際観光旅客税(出国税)の引き上げによる財源で観光政策を強化していく考えを示した。

また、村田長官は、2026年のインバウンド市場について、中国からの渡航者が減少することが見込まれることから、「インバウンド市場の多様化の流れをさらに進めていく必要がある」と強調。そのうえで、改めて2030年の訪日旅行者数6000万人、消費額15兆円の目標に向けて官民一体で取り組んでいく方針を示した。

さらに、総額1300億円を見込む国際観光旅客税の使途について、オーバーツーリズム対策の徹底(1125億円)と日本人出国者への配慮(175億円)に充当すると説明した。

そのうち、オーバーツーリズム対策の徹底では、インバウンドの受け入れと住民生活の質の確保との両立と地方誘客の促進を実施。インバウンド対応では混雑・マナー違反対策、円滑な出入国・通関などの環境整備、違法民泊対策などを進める。また、地方誘客では地方の観光地の魅力向上に加えて、地方部への交通ネットワークの機能も強化していく方針だ。

このほか、アウトバウンド振興として、双方向交流の拡大に向けた環境整備として、前年度予算比25倍の5億円を計上していると説明。海外ワーキングホリデー制度利用の支援、海外教育旅行プログラムの開発支援、地方空港への航空便誘致支援などを実施していく。

2026年の期待や課題を共有

協議会では各企業・団体も情報を共有した。

日本経済団体連合会(経団連)観光委員長の武内紀子氏は、第5次観光立国推進基本計画に向けて2025年10月に取りまとめた「持続可能な観光立国の実現に向けて」とする提言を紹介した。提言では、オーバーツーリズムの解消や地方誘客の促進、人材の確保・育成など、日本が重点的に取り組むべき方向性を提示。そのなかでも、武内氏はMICEの推進について言及し、「長期滞在、滞在時期の平準化、地方誘客、高い消費単価など、今後の観光戦略に活用すべき」と発言するとともに、大阪・関西万博のレガシーとしてMICEをさらに発展させていく必要性を訴えた。

日本旅館協会会長の桑野和泉氏は、「教育、医療、福祉、交通インフラを含めて、地域に関わるすべてのことを考えて、旅館が一緒に地域を作っていく覚悟を持つことが、より一層必要になってくる」と話すとともに、温泉文化がユネスコ無形文化遺産の提案候補に選出されたことを受けて、最終的な登録決定に向けて支援を呼びかけた。

JTB社長の山北栄二郎氏は、2026年に開催される国際イベントを挙げて、「全般として世界のツーリズムが活況を呈する流れは続いていくと予測している」と発言。そのうえで、地域の魅力づけをさらに進めて、国内旅行を立て直す必要性に触れた。また、「AIがツーリズム産業の在り方を大きく変えていく」と見通し、「そのなかで、人の価値というものを再定義していくことが極めて大事」と強調した。

北海道観光機構会長の唐神昌子氏は、「2026年は稼ぐ観光、信頼される観光、続く観光の3つの柱に取り組んでいく」と述べたうえで、同機構が目指す2030年の観光消費額3兆円の目標の実現に向けて、「2026年は北海道観光が回復から成熟へと進む極めて重要な一年になる」との認識を示した。

京浜急行会長の原田一之氏は、鉄道会社にとっても観光客の地方分散は重要との認識を共有。加えて、2027年3月に横浜で開幕する「2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」について触れ、「万博の成功は日本の観光の活性化に非常につながるものになる」として、支援を呼びかけた。

JAL会長の赤坂祐二氏は、懸案の日中路線について、2026年1月の日本の航空会社による中国便は2025年10月と変わらず1日43便なのに対して、中国の航空会社の日本便は10月の1日318便から194便に減少していると説明。特に地方空港での影響が大きく、同社が委託を受けているグランドハンドリング人員に余剰が出ている状況を明かした。また、日米間の観光交流についても言及。米国人の訪日、日本人の訪米とも旅行先に偏りがあるとして、「観光はやはり双方向。この共通の課題に対して、日米の官民を挙げて取り組んでいきたい」と意欲を示した。

協議会後には、観光関連団体・企業のトップらが集い、「観光関係者新春交流会」が開催された。来賓として、国土交通副大臣・佐々木紀氏、菅義偉元首相、全国旅行業協会(ANTA)名誉会長・二階俊博氏らが挨拶にたち、2026年の観光産業のさらなる成長と発展を祈念した。

また、自民党観光立国調査会会長・鶴保庸介氏、日本維新の会・吉村共同代表の代理として青島健太議員、公明党・観光立国推進議員懇話会幹事長・福重隆浩氏、日本成長戦略担当大臣・城内実氏、国民民主党・玉木 雄一郎氏、参政党幹事長・安藤裕氏、立憲民主党・辻元清美氏など、多数の国会議員が参加した。 

国土交通副大臣 佐々木紀氏菅義偉元首相全国旅行業協会(ANTA)名誉会長 二階俊博氏