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観光庁、新たな観光立国推進基本計画の素案を提示、新目標で「住民生活との両立」の取り組みを100地域に

観光庁は、2026年1月30日、2026年度からの第5次観光立国推進基本計画の策定に向けて、第54回交通政策審議会観光分科会を開き、新たな基本計画の素案を提示した。今後、パブリックコメントで広く意見を募り、3月に分科会で基本計画案の最終的な議論を経たうえで、大臣への答申、閣議決定の流れで決定される。

観光庁が提示した素案では、新たな基本計画の基本的な考え方として、観光の意義を「観光は地域の活力を維持するとともに海外との双方向交流によって国際相互理解も促進する」と定義したうえで、「観光産業は国内第2位の輸出産業に急成長しており、地域経済・日本経済の発展をリードする戦略産業」と位置付けた。

そのうえで、課題として、観光客の更なる受入れに対してオーバーツーリズム問題など国民の懸念が生じていることを踏まえ、施策の充実・強化を通じて、「国民の理解を得る不断の努力が不可欠」と明記。また、昨今の日中関係の悪化などの国際情勢の変化を踏まえて、さまざまなリスクに対する強靱化を確保していく必要性も追記した。

3本柱で具体策も提示

基本計画案では、目指す姿を、地域住民と観光客双方の満足度の向上、交流人口・関係人口の拡大、国際相互理解の促進、「働いてよし」の観光産業の実現によって日本の魅力・活力を次世代にも持続的に継承・発展させるものとした。そのうえで、施策の3つの柱として「インバウンドの受入れと住民生活の質の確保との両立」「国内交流・アウトバウンド拡大」「観光地・観光産業の強靱化」を掲げた。

「インバウンドの受入れと住民生活の質の確保との両立」の施策では、混雑・マナーなどの個別課題への対応として、パークアンドライド駐車場の整備、手ぶら観光の推進、交通空白の解消、需要に応じた入域管理や予約制の導入、スマートゴミ箱の設置などの具体的施策を提示。このほか、円滑な出入国および通関に向けた環境整備なども盛り込んだ。

「地方誘客の推進による需要分散」の施策では、DMOの質の向上、地方誘客、地域周遊・長期滞在の促進などの地方の観光地としての魅力向上をあげた。観光コンテンツの充実としては、歴史・文化資源の活用、アドベンチャーツーリズム、ガストロノミーツーリズム、スポーツツーリズムの推進、地方誘客に向けたローカル鉄道の活用を提示した。さらに、MICE誘致、地方部への交通ネットワークの機能強化などを推進していく。また、「国際相互交流の促進」として、訪日教育旅行の促進、ワーキングホリデー制度の導入促進、姉妹・友好都市の活用などを掲げた。

「国内交流・アウトバウンド拡大」の施策では、国内旅行需要の平準化の促進でラーケーションの促進と休暇取得の分散化、新たな交流市場開拓で関係人口の創出や二拠点居住の促進を提示。国内交流の活性化では、観光の足を確保するために交通空白の解消と地域交通のリ・デザイン、アウトバウンド促進では海外教育旅行を通じた若者のアウトバウンドの促進や地方空港を活用した相互交流の促進などを盛り込んだ。

観光地・観光産業の強靱化では、持続可能性を高めるインバウンド市場・観光コンテンツの多様化のほか、AIの活用などを含めた観光・地域交通のDX、観光産業の経営力強靱化、観光人材の確保、災害・感染症危機・テロ対策等安全・安心な滞在環境の実現などを盛り込んでいる。

新たな目標設定も、海外旅行者数は過去最高値超えを目指す

3つの柱を推進していくうえで2030年度に向けた目標値も提示された。訪日外国人旅行者数6000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円を目標は継続する。

新たな目標としては、インバウンドの受入れと住民生活の質の確保との両立に向けて、新たに観光客の受入れと住民生活の質の確保との両立に取り組む地域数を設定。過度な混雑やマナー違反対策など、観光客の受入れと住民生活の質の確保との両立に取り組む地域を2025年の47地域から、2030年度には100地域に拡大することを目指す。この地域は、地域住民を含む関係者による協議の場を設け、住民の意見を反映した対応計画を策定している地域を対象とする。

また、訪日外国人リピーター数の目標を再設定。「明日の日本を支える観光ビジョン」で示されたリピーター数の目標である3600万人を見直し、4000万人(2025年2761万人)に引き上げる。このほか、訪日外国人旅行者の地方部での延べ宿泊者数の目標に1.3億人泊(2024年5086万人泊)を改めて設定した。訪日外国人旅行消費額単価については、現行計画の20万円から25万円(2025年22.9万円)に引き上げる。さらに、国際会議の開催件数では、アジア最上位・世界5位以内に目標を上げた。

国内交流・アウトバウンド拡大では、国内旅行消費額について、観光ビジョンでの目標22兆円をすでに超えて2024年には25.2兆円に達していることを踏まえ、目標を30兆円に見直す。また、地方部での日本人宿泊者数は3.2億人泊と設定。日本人海外旅行者数については、現行計画の「2019年水準超え」から「過去最高値(2008万人)超え」に見直した。

また、観光地・観光産業の強靱化として、宿泊業が創出する付加価値額の目標も新たに設定。2024年度の4.3兆円から2030年度には約1.6倍に当たる6.8兆円に引き上げる。

分科会委員は素案を概ね了承

分科会に参加した委員は、改定基本計画の素案に対して概ね了承した。そのうえで、訪日外国人旅行消費額単価の目標は「弱気だ」とする意見が出た。また、災害時に限らず、鉄道の大規模遅延や大雪などを例に、日常生活でのトラブルにおける多言語情報発信の必要性や、マナー違反対策でもっと踏み込んだ表現を求める意見が共有された。

このほか、オーバーツーリズムの表現について、言葉が一人歩きし、実態と合っていないとの意見や人口減少が続く中で日本人海外旅行者数の目標の妥当性に対して疑問視する意見も出された。