世界の旅行業界は、高齢者や特別な支援を必要とする人への対応を強化している。しかし、障がいのある人にとって観光における障壁は様々だ。包括的なアクセシビリティを実現するには、身体障がい者から自閉症や認知症の人まで、幅広い旅行者に対応する必要がある。
世界中の美術館や文化施設では、専門ガイドやバリアフリーツアーを導入。目に見える障がい、あるいは目に見えない障がいがある旅行者へのサービス向上を目指している。
例えば、聴覚障がい者向けの手話ツアー、視覚障がい者向けの触覚を使ったイベント、自閉症の人向けプログラムなどが挙げられる。障がいのある旅行者を支援する旅行代理店も数多く設立されている。
しかし、課題は依然として残っている。非営利団体「欧州アクセシブルツーリズムネットワーク」のマネージングディレクター、アイバー・アンブローズ氏は、旅行者が必要とするアクセシビリティのレベルの違いに対する認識不足が依然として存在すると指摘する。
アンブローズ氏は「実際には非常に大きな市場であり、大きなチャンスだが、観光のあらゆる分野の事業者によって、まだ十分に活用されていないのが現状だ」と話す。
アクセシブルツーリズムとは、障がいの有無や年齢にかかわらず、あらゆる人が観光施設・商品・サービスにアクセスし、旅行を楽しめるようにする観光のことだ。
事前調査と計画の必要性
障がい者が日本を旅するためのデータベースやガイドを公開するウェブサイト「Accessible Japan」の創設者ジョシュ・グリスデール氏は、旅行前に各種SNSで旅先が障がい者の移動に適しているかどうかを確認するという。グリスデール氏自身、電動車椅子を使用する障がい者だ。
また、ホテルにコンシェルジュがいる場合は、コンシェルジュに相談したり、事前に電話で訪問予定の場所が適切なバリアフリー設備を備えているか確認したりすることを勧めている。ほとんどの美術館や文化施設は、バリアフリー対応の詳細を記したガイドやその他のリソースをオンラインで公開しているという。
グリスデール氏は、情報が不足すると、旅行の調査や計画がさらにストレスの多いものになるため、互いに助け合える場所を作りたいと、世界中のバリアフリー旅行に関する情報をクラウドソーシングで集めるオンラインプラットフォーム「tabifolk」も立ち上げた。
アフリカのアクセシブルツーリズムエージェンシー「スカウトグループエージェンシー」の創設者兼ディレクターであるジョアン・ンディラング氏は、旅行者に対して、その地域に精通し、利用可能なバリアフリーオプションを知っている現地の旅行代理店や専門家と協力することを勧めている。
特別プログラムを探そう
世界最大の博物館のひとつスミソニアン博物館では、神経発達障害の人にも配慮した「モーニング・アット・ザ・ミュージアム」プログラムを提供している。これは、神経発達障害のある人とその家族が月に一度、一般公開前に入場することができるプログラムだ。参加者は、体験型の多感覚アクティビティに参加したり、自分のペースで館内を散策することができる。
ベルリンでは、カトリック支援団体「Malteser Deutschland(マルテザー・ドイチュラント)」が、認知症の人に向けたベルリン動物園、自然史博物館、ブリッツァー庭園、シャルロッテンブルク宮殿でバリアフリーツアーを企画。今後、他の場所にも拡大していくことを目指している。
ベルリン動物園のツアーは少人数制で、所要時間は約90分。参加者が疲れすぎたり、圧倒されないように、動物園の膨大な動物コレクションの大部分は省略し、いくつかの生息地に焦点を当てたプログラムを提供している。
遠慮せずに問い合わせを
ンディラング氏は、同社では訪問者に対して、本人または家族に障害に関する配慮が必要かどうかを事前に確認し、最適な選択肢を提案できるように訓練を受けているとするが、事前に知らされていないことについては、必ずしも対応できるとは限らないと話す。
欧州アクセシブルツーリズムネットワークは、旅行会社に対して、バリアフリーサービスの提供にかかる費用をツアーに組み込み、必要な人だけでなく参加者全員で負担を分担するよう推奨している。また、多くの美術館では、障がい者向けの割引料金、付き添いの人向けに無料または割引料金のチケットを提供している。
スミソニアン博物館アクセシビリティプログラムスペシャリストを務めるアシュリー・グラディ氏は、今後の改善に向けて参加者からのフィードバックを求めている。「彼らは特別なことを求めているわけではない。文字通り、他の人と同じように美術館を体験したいだけだ」と話す。
※本記事は、AP通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳·編集しました。