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京都市長が語った「京都観光の課題と未来」、住民生活との両立、高付加価値化、市バス「市民優先価格」など取材した

インバウンドビジネスメディア「訪日ラボ」を運営するmov社が主催した「THE INBOUND DAY 2026」に、京都市の松井孝治市長が登壇し、京都市の観光の現状や課題解決に向けた取り組みを説明した。2024年2月に就任した松井市長は、この2年半を振り返り、「さまざまな課題解決に取り組んできたが、まだやるべきことは多い」と語った。2027年度中には全国で初めて市バスに「市民優先価格」を導入するなど、今後も観光と市民生活とのバランスを取る政策を進めていく考えを示した。

京都観光の現状、2025年は過去最高

2025年、京都市の観光は記録ずくめとなった。観光客数は6279万人、このうち外国人は過去最高の1268万人。宿泊客数は1659万人、このうち外国人は過去最高の809万人。観光消費額は2兆474億円に達し、いずれも過去最高となった。

国内旅行の特徴を見ると、50歳以上の来訪者が全体の約75%を占め、10回以上の来訪者が58%。関東圏と近畿圏からが約6割となった。一方、インバウンドでは40歳未満が約75%、初来訪者が78%。欧米豪の来訪者が多く、3泊以上の滞在が26.2%を占めた。

観光消費額単価を見ると、宿泊客の平均単価は外国人が9万2623円で日本人の6万8800円を大きく上回った。日帰りも含めた全体平均単価で見ると、外国人が6万7133円となり日本人(2万3874円)の2.8倍となった。インバウンド旅行者の消費額が全体に占める割合は41.6%。約2割のインバウンド旅行者が約4割の消費を生んでいることになる。

高付加価値旅行者と京都ファン

一方で、松井市長は「京都の消費単価は全国的に比べて低い。経済波及効果という意味では、もう少し工夫の余地がある」と言及。錦市場の混雑にも触れたうえで、「京都には西陣織など伝統工芸が多くあるにもかかわらず、それが消費につながっていない」と話し、伝統工芸の高付加価値化とその購入に見合う高付加価値旅行者の受け入れに課題感を示した。

この点について、松井市長は、セッション後のトラベルボイスとのインタビューで「海外マーケティングに従事する人たちと関係人口として連携して、伝統工芸の新しい一面を創出しながら、海外販売に繋げるようにしていきたい」とアイデアを披露した。

また、松井市長はリピーターの重要性も指摘。「京都のリピーターは、今の京都の姿を受け入れているのかどうか。今の京都にどのような認識を持っているのかを知ることが大切」と話した。京都市では京都ファンの意識調査を実施し、まもなくその結果を明らかにする予定だ。

松井市長は「2割の熱心なファンが8割の売り上げを支えるパレートの法則は、長期的に成り立つと思っている」と話し、国内外の京都ファンを、愛着人口(関係人口)として育て、二地域居住、移住・定住につなげていく取り組みの必要性を強調した。 

京都のインバウンドの「現在地」と「あるべき姿」について議論。
(左から)モデレーターのMov社COOの菊池惟親氏、松井京都市長、評論家の宮崎哲弥氏

市バス「市民優先価格」を導入へ

京都市にとって、増加の一途を辿る観光客と市民生活とのバランスは引き続き重点テーマになっている。京都市の調査によると、2025年で79.9%の市民が観光客による混雑やマナー違反に迷惑していると回答。京都市の発展に観光が重要な役割を果たしていると答えた市民(70.1%)を上回った。

京都市では、観光課題の解決に向けた取り組みとして、時期、時間、場所の集中の分散化、市バス・道路の混雑対策、マナー啓発、地域や事業者との連携を継続して進めている。

このうち、市バス・道路の混雑対策では、2027年度中に市バスの「市民優先価格」を導入する予定だ。松井市長によると、現在、国土交通省と詰めの協議を行なっており、民間バス会社との調整は残るものの、「全国初の公共交通の複数価格制度」(松井市長)になる予定だ。現在のところ、均一区間の市民価格を現在の230円から200円への引き下げ、市民以外は350円~400円程度への引き上げを想定しているという。

また、マナー違反対策として、「民泊の規制に乗り出す」。松井市長は、トラベルボイスのインタビューで、ゴミ出しルールの不徹底、常駐管理者の不在などで市民からの苦情は引き続き多いことから、「いい民泊のいい部分を引き出しつつ、課題になる部分はしっかりと規制していく」姿勢を示した。

国は2026年7月、民泊について「ゼロ日規制(立地規制)」を事実上容認する方針に転換。今後は自治体の判断で合理的に必要と認められる限度で、新たな民泊事業の実施禁止や営業日数の制限など条例による立地規制ができるようになった。

街中のゴミ問題については、観光集中地でのスマートゴミ箱の設置などで、「対症療法だが、一定の効果をあげている」と評価した。

観光政策はイコールまちづくり

松井市長は「市民のあいだで観光に対する嫌悪感が出始めている」と懸念を示す。「観光事業者は観光の恩恵を理解しているが、直接関係のない市民にとっては市全体で観光客を受け入れることにどのような意味があるのか理解が進んでいない部分がある」と話す。

市民への利益還元という意味でも、京都市は2026年3月から宿泊税を見直した。宿泊料金に応じて新たに5段階の税率を設定し、宿泊料金1泊10万円以上は1万円に大幅に引き上げた。

松井市長は、「それを財源として、京町家の保全、さらなる混雑緩和など観光課題対策や環境対策に取り組み、市民に恩恵が伝わるような政策を打っていく」考えを示した。

「まちのインフラ作りをもう一回見直す。本当は、この30年間ぐらいで京都がやるべきだった課題だった」と松井市長。「まだ行政の課題は多くある。 行政だけではなく、経済界、神社仏閣、大学など観光に関わる人たち全部を巻き込んでいく必要がある」。「観光政策はイコールまちづくり」との考えを示したうえで、「多くの人たちが訪れても、市民が快適に生活できるようなまちづくりの政策を進めていく」と力を込めた。