旅行比較サイトを運営するスカイスキャナーは2026年9月、「“価格以上の価値”とこれからの旅のカタチ」をテーマとしたメディア向けイベントを開催した。スカイスキャナージャパンのコマーシャルリード/トラベルエキスパートである岡田健太郎氏と、日本航空(JAL)Web販売部1to1マーケティンググループ主任の小島史也氏、航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏が登壇し、最新の旅行トレンドや生成AIを活用した旅行計画の展望について意見を交わした。
海外旅行への関心は高水準、情勢変化で「経由地」の選択が鍵に
日本市場における海外旅行の関心は継続して高い水準を維持している。スカイスキャナーのデータによると、航空券の検索数は2026年に入ってから上昇傾向が続いており、特に3月は前年同月比43%増と2桁成長を記録した。
こうした動きとともに明確になっているのが「経由地(乗り継ぎ)」のトレンド変化だという。過去1年間で中東経由が減少する一方、韓国や台湾など近隣アジアのハブ空港を利用するケースが増えている。岡田氏は「どこで乗り継ぐかが、賢く旅をするための新たな選択ポイントになっている」と分析する。
JALの小島氏も自社のネットワーク状況に触れ、現在はドーハ線が運休していることから、欧州方面への乗り継ぎにおいて「ヘルシンキの拠点性が以前にも増して高まっている」と説明。行き先や路線によって、中継地を戦略的に選ぶ旅行者が増えている現状を語った。
スカイスキャナーのデータから見える乗継地の変化(報道資料より)コスパとタイパを極める「ロジタビ」層の台頭
旅行者の滞在日数が長期化していることも2026年の大きな特徴だ。岡田氏によると、1月から7月までの平均滞在日数は前年同月をすべて上回り、2026年1月では平均4.5日だったが、直近では平均5日間へと延びている。
限られた休暇のなかで現地滞在時間を最大化するため、早朝や深夜便を積極的に活用する旅行者が増加。小島氏は、世界的なホテル価格の高騰を受け、機内泊を利用して宿泊費を1~2泊分浮かせ、その予算を現地の体験に回すといった「タイムパフォーマンス(タイパ)」と「コストパフォーマンス(コスパ)」の両立を図る動きが顕著だと話した。
スカイスキャナーはこのように感情や衝動ではなく、データを比較して論理的(ロジカル)に旅程を組み立て、費用対効果(ROI)をシビアに評価するスタイルを「ロジタビ」と定義。岡田氏は「スカイスキャナーのデータ上でも、ロジカルに旅を組み立てる層というのが確実に増えてきている」と話す。
また、旅行期間が長いほど、早くから検索する傾向もみられる。スカイスキャナーのデータでは、検索から出発までのリードタイムは、1週間程度の旅行の場合は69日前、2週間から1ヶ月の場合は90日前と長くなる。岡田氏は「悩んで納得してから予約をしている傾向が増えてきている。ムダなく満足度の高い旅を組み立てることにこだわっている」と分析した。
(左から)JAL小島氏、スカイスキャナー岡田氏、鳥海氏。鳥海氏は「従来は『運賃を抑えるため』という意味合いが強かった乗り継ぎそのものが、旅行の付加価値になりつつある」と指摘
AIと「リアルタイムで正確な価格データ」を掛け合わせ
旅行業界におけるAI活用は進む一方で、スカイスキャナーの調査では約半数(49%)の旅行者が「AI情報の正確性」に不安を抱いていることが分かった。旅行という高額な消費行動においては、信頼できる情報に基づく「納得感」が不可欠だからだ。
スカイスキャナーでは現在、世界56カ国でChatGPTとの統合機能を提供しており、会話ベースでの航空券検索を実現している。さらにベータ版として、自然言語で曖昧な要望(例:「5月に予算を抑えて行ける場所」)を入力すると、20年分の蓄積データから天候や所要時間を加味して最適な提案を行う「Explore with AI」のテストも進行中だ。岡田氏は、LLM(大規模言語モデル)の強みである「アイデア出し」と、メタサーチが持つ「リアルタイムで正確な価格データ」を掛け合わせることが、旅行者の安心と納得につながると強調した。
JALの小島氏も「AIによって旅の組み立て方やアイデア出しの手法はすでに変わってきている」と同意しつつも、「最終的な意思決定は人間が行う」と指摘したうえで、航空会社として、多様化する顧客ニーズに応えるサービスやプロダクトを提供し続ける重要性を語った。