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楽天の旅行BtoBの強みとは? AIと直接契約で宿泊流通を高度化、その取り組みと戦略を聞いてきた

楽天グループで宿泊施設のホールセールと旅行テクノロジー事業を担う「Rakuten Travel Xchange」。楽天トラベルやRakuten STAYが直接契約で確保する在庫に加え、グローバルOTAやホールセラーなどとの提携を通じて、世界の宿泊施設をBtoBで流通させている。

その事業から見えてくる訪日を含めた旅行トレンド、トラベルテクノロジー企業としてBtoBで進める革新的な取り組みを同社CEOのジェームス・パク氏に聞いた。

Rakuten Travel Xchangeの3つの事業

シンガポールを拠点に事業を展開しているRakuten Travel Xchangeの主な役割は、宿泊施設など旅行関連の在庫を世界に流通させることだ。楽天トラベルのホテル在庫や楽天ステイのバケーションレンタルを中心に、大手OTA、地域のDMC、あるいは現地の企業など様々なソースから在庫を仕入れている。 

事業を開始した当初は、楽天の日本での在庫を世界に流通させるのが大半を占めていた。パク氏によると、現在では「収益の半分は日本や東アジアにある楽天トラベルの在庫を世界中の旅行代理店に販売することで得ている。残りの半分は、他のサプライヤーから仕入れた在庫を組み合わせて販売する事業から生まれている」と明かす。

世界的なホテル宿泊卸売り「Hotelbeds(ホテルベッズ)」などもそのパートナーに含まれ、現在、取り扱っている在庫数は宿泊施設が50万軒、バケーションレンタルが20万軒。そのうち直接契約は2万軒。販売先は200カ国にのぼる。

主に3つの分野で事業を展開している。最大の事業は、APIを通じた宿泊施設の流通だ。世界中の旅行会社とAPI連携し、同社の宿泊施設在庫を販売する仕組みを提供している。クライアントごとにニーズが異なるため、柔軟性を重視したAPIを設計。シンプルさ、市場投入のスピード、応答速度、柔軟性などで強みがあるという。

2つ目は、「トラベルエージェント・ポータル」。主に小規模な旅行会社向けにオンラインポータルを提供している。グローバルな在庫にアクセスできるだけでなく、旅行会社が必要とする情報を迅速に提供することで業務を効率化する。

3つ目は、「Custom Website(カスタム・ウェブサイト)」事業。いわゆるホワイトラベル型のサービスでRakuten Travel Xchangeがウェブサイトの基盤を販売パートナーに提供することで、販売パートナーは自社のロゴやドメインでRakuten Travel Xchangeの在庫を販売することができる。

Rakuten Travel Xchangeのウェブサイト

競合他社との差別化は

市場には、膨大な宿泊施設の選択肢や、多様なソースを組み合わせて世界中の在庫を提供できると謳うB2B事業者が数多く存在する。そのなかで、パク氏は「真の強みとなるのは、自力で顧客を呼び込めるか、ホテルとの契約を自ら管理できるか、という点にあると思う。その点、楽天は直接契約している宿泊施設を多く持ち、宿泊施設からの信頼もある」と自信を示す。

直接的な関係があるからこそ、交渉も可能になり、問題が発生した際も自社で解決することができる。また、大規模なキャンペーンの際には、より競争力のあるレートや付加価値の提供を宿泊施設側に働きかけることもできる。パク氏は「こうした点は非常に重要」と強調した。

また、Rakuten Travel Xchangeの強みとして、コンテンツを単一のプラットフォームに集約し、各プラットフォームで再販しやすい形へと変換・展開できる点を挙げた。パク氏は「AIプラットフォームの活用と、楽天のブランド力を組み合わせることで、これを実現している」と胸を張る。

加えて、楽天経済圏でのシナジー効果も他社にはない強みとして挙げた。「例えば、楽天カードからは決済行動について学ぶことができる。楽天モバイルからは人々の移動やデータ利用の傾向を把握できる。時には事業間でシナジーを生み出し、ある事業で獲得したユーザーを別の事業へとつなげたりすることもある。これこそが、楽天グループとして最もユニークな差別化要因」と力を込めた。

昨今、旅行業界は大きく変化している。クレジットカード会社やモビリティ企業など異業種向けに旅行予約プラットフォーム(ホワイトラベル・サービス)を提供する旅行BtoB企業も増えている。パク氏は「旅行は、もはや旅行会社だけが販売するものではなくなりつつある。旅行は、一般的な消費財やEコマースのように、より身近で、あらゆる業種に取り入れやすいものへと変化している。Rakuten Travel Xchangeは、そうしたソリューションを提供し、世界中の人々がより手軽に、より簡単に旅行を楽しめる環境を創り出していきたい」と意欲を示す。

また、 Rakuten Travel Xchangeが日本市場ではすでに強固な基盤を築いているとの認識を示す一方、韓国、台湾、マレーシアなど他の国々にはそれぞれ強力なプレイヤーが存在する。今後は近隣諸国でも強固な基盤を構築し、「アジア市場で確固たるポジションを確立していく」考えだ。

プライベートでも何度も日本を訪れているパク氏。今度は東北を旅してみたいと話す

データから見える訪日トレンド

日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2026年1月から8月までの訪日外国人旅行者数は前年同期比で2.7%減少した。中国人旅行者数の大幅減の影響が大きい。一方で、欧米豪からの旅行者が増加。彼らは長期滞在するため、パク氏は「滞在期間やルームナイト(客室の延べ宿泊数)は前年を大きく上回っている可能性がある。おそらく2026年の訪日客の総支出額は増加するだろう」と見通す。

また、パク氏は、興味深い傾向として、高級ホテルのGMS(流通総額)が前年比で約80%伸びていることを挙げ、「Rakuten Travel Xchangeとしても現在、そのセグメントに注力している」と付け加えた。

加えて、パク氏は旅館についても言及。「そのユニークさは、サービスやその質の高さ、そして宿泊体験そのものにある」とした一方で、「自分たちの提供するコンテンツが正確に伝わるかどうかという懸念があることから、世界市場に向けて在庫を公開することに躊躇する旅館もまだ多い」と話す。

しかし、パク氏は「Rakuten Travel Xchangeは、日本の在庫を扱う流通会社として、旅館体験を楽しむために何が最も重要かを理解しており、この市場の専門家であると自負している」と話すとともに、AIツールも活用しながら、世界での旅館販売を支援していく考えを示した。

Rakuten Travel XchangeのAI戦略

流通企業であると同時にテクノロジー企業でもあるRakuten Travel Xchangeは、AIの活用にも積極的だ。パク氏は「AIをコンテンツ管理の分野で多用している」と明かし、その一例として、多言語翻訳でのAI活用を挙げた。日本の宿泊施設を海外で販売するためには、客室名やプラン名を日本語から他言語への翻訳が必要になる。日本向けウェブサイトには、プランや食事内容などに関して長い説明文が掲載されているが、これらをサードパーティのツールでそのまま翻訳すると、誤解を招く表現になってしまうことがある。

Rakuten Travel Xchangeでは、「Rakuten AI」を組み込み、単なる機械的な翻訳だけでなく、AIを活用して情報の重要度を判断しているという。それによって、パク氏は「正確な翻訳にかかる時間を90%削減することができた」と明かし、AI活用による業務効率向上に自信を示した。

また、2つ目の例として、B2B流通市場における課題のひとつである「ホテルマッピング(ホテル情報の統合)」を挙げた。ホテル自体は同じでも、旅行会社によって客室表記が異なることがあるため、その客室が同一のホテルであることを特定する必要がある。卸売業者は、各プロバイダーからの情報を統合し、単一のホテルとして扱わなければ、顧客には同じホテルが重複して表示されてしまう。この課題解決にもAIを用いているという。

現在、「ホテルマッピング」からさらに進化し「ルームマッピング(客室情報の統合)」の段階に進んでいる。ホテル内でも、あるホテルは「スタンダードダブルルーム」と呼び、別のホテルは単に「スタンダードルーム」と呼ぶなど、表記にばらつきがある。機械では容易に識別できないため、ここでも学習が必要となる。そこで、Rakuten Travel Xchangeは、どの客室が同一で、どの客室が全く異なるものかを識別する独自のAIの開発に着手しているという。

「Rakuten Travel Xchangeの使命は、他の旅行パートナーや業界パートナーに効率よくサービスを提供すること」とパク氏。そのなかで、AIの果たす役割は大きいと強調した。