関係人口を地域に創出したい(自治体・DMOなど)

地方自治体やDMOが関係人口を創出することが、なぜ地域の役に立つのでしょうか? 地域課題の解決につながる2つの理由と、関係人口を受け入れる際に地域側が注意したい点について紹介します。

全国の成人人口の2割以上と推定される「関係人口」

2025年6月、国土交通省は関係人口に関する調査結果を公表しました。この調査によると、全国の18歳以上の2割強に当たる約2263万人が特定の地域に継続的かつ多様な形で関わっている「関係人口」であることが分かりました。

関係人口の年間訪問日数は、「2~7日」が最も多く約半数を占め、「8日以上」は約3割を占めました。類型別に見ると「就労型(現地就労)」「就労型(テレワーク)」は「8日以上/年」が約半数を占めており、他の類型に比べて年間訪問日数が多くなっています。

“推し”地域がある人は3割

JTBコミュニケーションデザインが2025年にまとめた「『推し』地域=関心がある・好きな地域に関する調査」報告書によれば、「推し」地域があると回答した割合は約3割に達しています。居住地と同じ地方区分が「推し」地域の割合は全体の4割強で、北海道地方と東北地方の居住者は、同一圏内を「推し」とする割合が高く、関東・中部・近畿地方の居住者は比較的分散する傾向が見られました。

これらの調査から推測すると、潜在的な層も含め、日本全体の成人人口の2〜3割が関係人口であると考えられます。人数的には2000〜3000万人規模となり、地域としても決して無視できない数字です。

移住者は限られたパイ、地域に求められる発想の転換

2020年の国勢調査によると、東京圏の1都3県の人口は約3700万人に達し、日本の総人口の3割が国土面積の3.6%に当たる関東平野に集中しています。2023年、東京圏の転入超過数は10万人台へと回復しました。地方への移住者は一定数存在しますが、東京圏をはじめとした都市部への人口流入を上回るほどの量には至っていません。

こうした状況の中、地方の自治体が人口増加を目指し、限られた定住者を奪い合うことは限界を迎えていると言えます。ビジネスの世界で「モノの所有」から「利用(サブスクリプション)」へモデルの転換が進んだように、地域もまた発想の転換が求められています。

これからの地域が重視すべきは、いかに定住者の数を増やすかではなく「住んでいないが、その土地の経済圏に属する」顧客層の可視化と獲得です。全国の成人人口の2割以上を占める「関係人口」を自分の地域のファンとし、 顧客生涯価値(LTV: 一人の顧客から生涯を通じて得られる利益)を高めるサブスクリプション型モデルへの方針転換が急務と言えます。

「重い」期待を負わせず、ゆるく受け入れる姿勢が必要

関係人口は、観光や移住と異なる形で地域に関わる存在として、受け入れる地域側がさまざまな期待を抱くのは当然と言えます。ただ、「働き手になってほしい」「お金を落としてほしい」などの期待の大きさが来訪者にダイレクトに伝わると「重い」と感じさせ、結果的に足が遠のいてしまう可能性もあります。地域側には、ゆるく気軽に関われるきっかけや仕組みづくりが問われていると言えます。

全国各地で自治体による取り組みが開始しています。その一部ですが、事例をご紹介します。

まず、岐阜県飛騨市の「飛騨市の関係案内所ヒダスケ!」です。サイト上には地域のさまざまな困り事がプログラムとして掲載され、地域外の参加者が応募して「お助け」することができます。プログラムの内容は「雪の下に埋まったにんじんを救出!『にんじんの収穫』をしよう!」「『国史跡・国名勝の江馬氏館跡』のお堀を直そう!」「天下の奇祭『古川祭 』!屋台曳きの担い手になってみませんか?」など、多岐に渡ります。
参加者は謝礼としてスマホアプリ上で利用できる電子地域通貨「さるぼぼコイン」などがもらえる仕組みで、2026年4月時点で6000人以上が参加しています。地域外の人たちが、ボランティアや体験ツアーとは異なるアプローチで飛騨市民と交流でき、自然につながりを深めることができるプラットフォームとして機能しています。

富山市は県外在住者を対象としたデジタル登録証 「TOYAMAみらい市民パスポート」の配布をおこなっています。発行は無料、富山市のファンなら誰でも申し込みできます。この登録証は、NFT(非代替性トークン)技術を活用しており、登録者には富山市ガラス美術館の無料入館や、富山駅前のコワーキングスペース「スケッチラボ」の2時間利用無料などの特典を用意。コミュニティサイトでの情報発信、富山市を応援する企画への参加など、地域と継続的につながる仕組みを提供しています。

那須町は2023年9月、スマートフォンアプリを利用し、二地域居住をはじめとする関係人口や那須町の住民が、地域とより深く繋がるためのきっかけを作るため、「那須町ふるさとアプリ」の運用を開始しました。住民票を那須町としていない町外在住者・二地域居住者・別荘所有者向けには、特別な特典が用意されています。具体的には5施設の加盟店でポイントカードを集めたら、那須町オリジナルグッズが提供されます。10施設の加盟店でポイントカードを集めたら、 「那須町二地域居住マスター」認定証が授与されるほか、さまざまなイベントの抽選に参加できます。