データで見るワーケーションの現状と可能性

ワーケーションは新しい概念なので、どれくらいの人が実施しているのか、どれくらいのニーズがあるのかなど、現状や意向などについてはまだまだ未知数の部分も大きいのですが、少しずつ調査や検証も進んできています。今あるデータを元に、現状と可能性について紐解きます。

テレワーク導入企業の経営者の5割が積極意向、既に経験済み

日本旅行、ワーケーション支援を行うWe’ll-Being JAPAN、人事評価サービスを提供するあしたのチームは2020年8月、3社共同でテレワークを導入している企業経営者323名を対象に、「経営者のワーケーションへの取り組みの実態」について調査を実施しました。その結果、約半数の経営者がワーケーションを経験しており、自社の導入についても興味を示していることがわかりました。

「観光地やリゾート地での休暇中や旅行中に、仕事に関連する業務や会議などを行ったことはあるか」の問いに対しての回答は、「頻繁にある」が17.6%、「何度かある」が30.0%を占めました。合計すると47.6%の経営者が、ワーケーションをなんらかの形で経験していることになりますか。
 また、「可能であれば、自社でのワーケーション制度導入に興味はあるか」という質問には「非常に興味がある」が20.4%、「少し興味がある」が30.0%という回答となりました。こちらも合計すると50.4%となり、約半数が制度導入に対して興味を持っているという結果となりました。

「非常に興味がある」「少し興味がある」と回答した経営者にワーケーション導入によるメリットについて質問したところ、「家族との時間やプライベートな時間の確保がしやすくなる」の回答が58.3%で最も多く、次いで「リフレッシュ効果で生産性向上が期待できる」50.9%、「長期休暇が取りやすくなる」45.4%という回答となりました。

パフォーマンス向上やストレス軽減に持続的な効果も

JTB、日本航空、NTTデータ経営研究所は2020年6月、3社共同で慶應義塾大学の島津明人教授の監修のもと、ワーケーションの効果について検証実験を実施しました。
18名を対象に、沖縄県のカヌチャリゾートでの3日間のワーケーションと、その前後の約1週間を比較したもので、対象者は実験期間中、リストバンド型の活動量計を常時装着し、全15回のwebアンケートを通じて、対象者の状態や行動の把握が行われました。実験の結果、ワーケーションがパフォーマンスの向上やストレス軽減にポジティブな効果があり、その効果に持続性があることがわかりました。

この実験で、ワーケーション実施中の対象者は仕事のパフォーマンスが20.7%上昇し、ワーケーションが終了した1週間後までその効果が持続したという結果が得られました(下記グラフの黄色い折れ線参照)。ワーケーションは実施中の短期的な効果だけでなく、その後の残存効果も期待できると言えます。

またワーケーションの期間中、「イライラ感」「抑うつ感」と行った心身のストレス反応は、総じて低下が見られ、全指標平均の低下率は37.3%となりました。紫の折れ線グラフの「活気」については大きな向上が見られ、赤の折れ線グラフの「不安感」は期間終了後も低減が持続していました(下記のグラフ参照)。さらにワーケーション終了後も5日間、これらの効果が持続しました。
 こうしたことから、ワーケーションは心身のストレスを低減させ、健康状態を改善させる効果が期待されます。