インバウンドビジネスメディア「訪日ラボ」を運営するmov社が主催した「THE INBOUND DAY 2026」に、タイ最大級のオンラインコミュニティサイト「PANTIP.COM(パンティップ・ドットコム)」のチーフプロダクトオフィサー(CPO)アピシルプ・トルンガノン(Apisil Tulnganon)氏が登壇。タイ人の訪日旅行における情報収集や最新トレンド、日本の観光事業者・自治体に求められる情報発信について語った。
1996年に創立されたPANTIP.COMは、タイにおけるオンラインコミュニティの先駆け。登録会員数は900万人を超え、累計スレッド数は4400万件、コメント数は1億件を突破している。2025年のタイ国内ウェブサイト利用ランキングでは、グローバルプラットフォームや大手ECに次ぐ第6位にランクイン。タイの国内企業が運営するソーシャルメディアとして最大級の規模を持つ。
同サイトの特徴は、投稿の「信頼性の高さ」にある。会員登録時に身分証明書による本人確認を行う仕組みを導入しており、認証ユーザーにはスマイルマークが付与される。発言への責任感を促すことで、質の高いユーザー生成コンテンツ(UGC)が醸成されている。さらに、運営チームが有益なスレッドを厳選してトップページに掲載する「PANTIPピック」や、投稿者への収益還元・ポイント付与システムなど、コミュニティを活性化させる仕組みを整えている。
SNSにはない「長文スレッド」、ガイドブック代わりに
旅行ジャンルにおいて絶大な人気を誇るのが、サイト内の専門掲示板「ブループラネット(Blue Planet)」だ。タイ人の旅行情報収集における中心地となっており、特に日本への旅行に関するコンテンツの閲覧数が非常に高いという。
トルンガノン氏は、短文や画像が中心の一般的なSNS(InstagramやFacebookなど)との違いについて、「PANTIPのスレッドは長文で、実際に旅行した人の足跡をそのまま辿れる『究極のガイドブック』として機能している」と説明。「意見や体験を共有し合う、知識を交換し合うためのプラットフォーム」として、移動方法、景観スポット、飲食店、ホテルの利便性までが詳細に綴られた生の体験談こそが、AIや公式情報には置き換えられない強みになっていると強調した。
また、旅先でリアルタイムに写真や位置情報を記録し、旅行後にワンプッシュでレビュー投稿ができる新機能「トリップノート(Trip Note)」の提供を始めるなど、人間のリアルな実体験を集約する環境づくりを整えている。
モデレーターを務めたmov社の金子泰士氏(左)とPANTIP.COMのトルンガノン氏
タイ人の検索行動と注目の日本旅行トレンド
トルンガノン氏によると、タイ人が日本旅行を検討する際、まずGoogleで「東京4泊5日」「九州レンタカー7日間」といった具体的な行程や既成の旅行プランを検索し、そこからPANTIPのスレッドへ流入して情報を深掘りする傾向があるという。
そのうえで、ユーザーが特に注視している3つのポイントを挙げた。
まず、詳細なルート。空港や最寄り駅からホテルまでの移動手段、駅のエスカレーター・エレベーターの有無など細かい情報を求めている。次に、費用対効果の比較。各種交通パス(JRパスなど)と個別の購入でどちらが得か、ということを気に掛けるという。3点目として、宿泊・観光地の正確な実態を挙げ、タイ人旅行者は、ホテルの周りのコンビニの有無、景勝地や紅葉スポットにおける「最も映える撮影アングル」など正確な情報を探しているとした。
人気の目的地としては、タイにはない雪景色を楽しめる北海道が不動の人気を誇るほか、東京・大阪・神戸・福岡などでのショッピングも根強い。近年では、雪山と美しい景観が楽しめる「白馬」や、豊かな山岳地帯を持つ「富山」など、地方の自然景観エリアへの注目も高まっているという。
タイ人に響く情報発信「5つのポイント」
トルンガノン氏は、日本の自治体や事業者がタイ人旅行者へアプローチする際の実践的なアドバイスとして、以下の5つのポイントを挙げた。
一つ目のポイントは、正確な場所の情報と移動ルートの提示。最寄り駅から施設・店舗までの最短ルートや移動の注意点を具体的に明記すること。
二つ目は、視覚的な魅力訴求。 料理の写真や施設内のビューポイントなど、一目で魅力を伝えるビジュアルを用意する。
三つ目は、誠実な情報開示 。トルンガノン氏は「良い点だけでなく、『最寄り駅から少し歩く』など留意点も一言添えることで、逆にユーザーからの信頼が高まる」とアドバイスした。
四つ目が、イメージを膨らませるストーリー性の提供。 「地元のきれいな水と原材料を使った料理」など、感情に刺さる体験談やストーリーを組み込むことで、行きたい気持ちを後押しする。
最後が、タイ人の検索意図に合わせたSEO対策。 タイ人が日常的に検索窓に入力するキーワードをスレッドのタイトルや本文に盛り込み、検索エンジンからの流入経路を確保することが大切と付け加えた。



