南極クルーズとは? 年間10万人超が訪れる極地観光、そのルールと船上体験、日本市場のポテンシャルまで

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極地探検クルーズの老舗HXエクスペディションズ(HX Expeditions)は、日本の旅行業界およびメディア向けに南極クルーズセミナーを開催した。幹部役員らが来日し、成長するアジア市場で、特に日本市場への投資を強化する方針を示した。

※冒頭写真は同社CEOのGebhard Rainer氏

同社の前身は、ノルウェーの沿岸急行船「フッティルーテン」の極地探検クルーズ部門。2025年に分離・独立。英国を拠点に、北極圏や南極圏、ガラパゴス、アラスカなどを小・中型の探検船でめぐるクルーズを運航している。極地探検で130年の歴史を有するパイオニアであり、極地観光の規制や方針を統括する団体AECO(北極探検クルーズオペレーター協会)やIAATO(国際南極旅行業協会)の主要メンバーでもある。南極クルーズでは、47社が参入するマーケットで約10%のシェアを持つ。

IAATOのデータによると、昨シーズンの南極旅行者は上陸客が約8万5000人、クルーズ航行のみ(上陸なし)が約2万7000人、陸上拠点での探検が約1100人。南極クルーズはIAATOなどの規定に基づいて厳格に実施されており、乗客定員500名以上の大型船は上陸観光が禁止されている。上陸可能な小・中型船も「1カ所につき1隻」「同時に上陸できるのは100名まで」の制限がある。

こうした環境下で、同社は「快適性」「冒険」「好奇心」のバランスを重視したクルーズを提供。長い船上生活を支える高品質な客室や食事を揃える一方、専門家やサイエンティストが常駐し、乗客の知的好奇心に応える教育プログラムを提供する。また、地元の漁師との交流や食材の75%を現地調達するなど、訪問先コミュニティの社会・経済への貢献も組み込む。現地の環境やコミュニティに対する深い気づきを与え、参加者の帰国後の意識や価値観に影響を及ぼすような体験が、同社の極地探検クルーズの核となっている。

同社CEOのGebhard Rainer氏は「世の中の見方を変えることが我々の使命だと自負している。長年の経験をもとに最高の冒険と快適さを提供しながら、その使命を果たしていく」と話した。

日本市場の現状と成長戦略

同社にとってアジアは世界で4番目に大きな市場。過去2年間で乗客数が50%増加した。なかでも日本市場は、過去3年間で2倍の伸びを記録し、中国、台湾に続く第3の市場となった。

マーケティングと戦略を担当するバイス・プレジデントのMarie Daubourg氏は、昨シーズンに南極を訪れた日本人旅行者数は約800人と説明。日本より人口が少ない英国やドイツは約1万人であることから「日本は探検旅行の発展途上にあり、今後3〜5年で年50〜100%の成長を見込む」と話した。現在、同社の日本人客の85%が南極クルーズに集中しており、探検旅行は他エリアで再体験する傾向が強いことも、成長予測の背景にある。

こうした状況を踏まえ、同社では今後3年間で日本をアジア第2の市場へ引き上げるべく、投資を強化。BtoB向けの施策や専任チームの立ち上げを進める方針を示した。さらに、日本人個人旅行者の増加に応じ、日本語対応コーディネーターやエキスパートの配置、翻訳テクノロジーの活用なども推進する意向も示した。

マーケティングおよび戦略担当のバイス・プレジデント Marie Daubourg氏

オールインクルーシブの理由、自身で見て体験することが見方を変える

同社のクルーズは上質な食事や飲み物、上陸用のアウターなどに加え、教育プログラムを含むアクティビティをオールインクルーシブで提供する。乗客が撮影した海洋生物の画像を個体識別などに役立てる「シチズン・サイエンス」も推進。全船にサイエンスセンターを設け、研究者に年間1800泊分の客室を無償提供するなど、学術研究を支援しながら、その取り組みに乗客が参加できるプログラムも用意している。

環境面では、2009年に重油の使用を全廃し、2018年には使い捨てプラスチックを排除。5隻の保有船中、2隻はディーゼル発電と大型バッテリーを搭載したハイブリッド船だ。可能な限りのサステナブルな運航とサービスを目指している。

ライナー氏は「気候変動や環境に対する考えは、実際に現地を訪れ、その目で見て体験して初めて変わる」と、同社が極地クルーズを提供する意義を強調した。

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