アップルワールド、BtoB戦略の次の一手とは? 国内ホテル・団体旅行への領域拡大と、AIによる旅行会社支援を聞いた

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世界各地のホテル在庫を仕入れ、日本の旅行会社向けにBtoBで提供するアップルワールド。2018年に、人材や不動産などでマッチングプラットフォーム事業を展開するじげんグループに入り、旅行会社の業務支援へと事業領域を広げてきた。

2023年には、エフネスから引き継いだ事業を通じてホテルに加えて航空券、決済、業務代行(BPO)へと領域を拡張。さらに2025年には、募集型企画旅行向けのツアー造成システムを手がける会社を買収し、団体・募集型企画旅行にも対象を広げ始めている。

同社取締役の深田健史氏に、じげんが旅行市場に見いだしたビジネスチャンスや、価格競争とは一線を画すBtoB戦略、国内ホテルや団体旅行への領域拡大、AIを活用した今後の展望について聞いてきた。

じげんが2018年にアップルワールドをグループ化した背景には、旅行という領域が持つ可能性への期待があった。同社は、人材や不動産など、生活に関わるさまざまな領域でマッチングプラットフォームを展開。そのなかで旅行については、業務の効率化など業界全体における課題も多く、個人消費に占める金額規模が一定程度大きいことや、ユーザーとの接点を比較的多く持てることにマーケットとしての魅力を見出した。

深田氏は、「人材や不動産は、ユーザーとの接点が人生のなかでそれほど多くない。一方、旅行はそれらに比べると利用頻度が高い。生活領域のなかでも金額規模が大きく、接点の回数も多い。それだけ一人ひとりの暮らしを豊かにできる場面も多い。」と説明する。じげんにとって旅行は、「ユーザー接点をかなり密に取れる領域の一つ」だったという。

さらに、BtoB旅行市場には、じげんが他業界で培ってきたプラットフォーム事業の知見を生かせると考えていた。深田氏によると、世界中のホテルを世界中の旅行者に販売するOTAの「世界対世界」のモデルは対象範囲が広く、1社がすべてを束ねる構造にはなりにくいと見ていた。

「世界対世界のプラットフォームは面積が広すぎる。分業が進み、BtoCとBtoBが分離しながら、BtoBのプラットフォーム価値が高まる世界が来ると読んでいた」と話す。

BtoCでの差別化の難しさもある。旅行商品は、基本的にどの事業者でも同じホテルや航空券を扱うため、商品による差別化余地が小さく、UI/UXや集客への大規模な投資が競争力を左右しやすい。すでにBooking.com、Expediaなど、世界大手が存在するなか、後発で正面から競うよりも、BtoBに軸足を置く方がじげんの強みを発揮でき、事業として着実に成長できるとの判断だった。

その狙いは、手配価格の安さを競うことではない。深田氏は、「同じホテルが他社では1万円で、我々では1万500円かもしれない。その500円を安くするために多くの時間と人件費を使うより、我々に全部任せて仕事が楽になる方がよくないですか、という世界を作ってきた」と説明する。価格だけではなく、旅行会社の業務全体を効率化することで選ばれることを目指してきた。

全国の旅行会社との接点を競争力に

アップルワールドが重視するのは、システムと人によるハイタッチな支援の組み合わせだ。世界のホテル在庫を束ね、APIでリアルタイムに販売する仕組み自体は必要条件だが、深田氏は「それだけでは十分条件ではない」と話す。

同社は、旅行会社が営業時間外や週末に対応しにくいトラブルについて、24時間365日の体制で旅行者への対応を代行する。旅行前の見積書作成なども支援し、単なる「手配のラストマイル」にとどまらず、その前後の業務まで支える。深田氏によると、国内には登録旅行会社がおおむね1万社あるなか、同社の登録アカウントは約9000に達するという。

旅行業では、通常の予約だけでなく、欠航、遅延、旅程変更、現地で予約が確認できないといった例外的なケースへの対応力が重要になる。深田氏は、「何かが起きて旅行会社が困った時に、『アップルワールドがいた』と第一想起してもらえることが重要」と話す。

そのため、地方の小規模旅行会社も含め、全国で営業活動を展開し、接点の頻度を高めて現場の困りごとやニーズをすくい上げている。「システム会社であることは必須条件だが、そこに人による寄り添いがあってこそ旅行会社に安心して任せてもらえる。両方できるから強い」というのが同社の考えだ。

グローバルのホテル卸会社についても、単純な競合として見るのではなく、仕入れ先となるパートナーとして取り込む。深田氏は、日本市場に新たに参入しようとする海外企業にとって、自ら日本でハイタッチな営業・サポート網を構築するより、アップルワールドを通じて日本の旅行会社に商品を流通させた方が効率的だと説明する。実際、海外のBtoBプレイヤーとの連携も広げている。

一方、航空券単体では価格競争に陥りやすいため、安さを前面に出した競争には距離を置く。ホテル、航空券、決済、BPOをまとめて利用することで便益を感じやすい業務渡航などを中心に、「あらゆる旅の流れを支える存在」としての価値を強めている。

アップルワールド取締役の深田健史氏

国内ホテルを開拓して世界の旅行会社へ

近年は、これまで弱かった国内ホテル領域にも踏み込んでいる。2025年から日本国内のホテルを直接仕入れる取り組みを開始し、取り扱う施設数を拡大しているところだ。

その狙いは、国内ホテルの商品ラインナップを増やすことだけではない。これまでの主力だった海外の卸会社から世界のホテルを仕入れ、日本の旅行会社に販売するモデルだけでなく、直接仕入れた日本のホテルを世界の旅行会社へ販売する流通モデルを構築することだ。

深田氏は、「日本のホテルを世界の旅行会社に売るところは、まだ十分にやられていない。そこは我々のネットワークを生かせる」と話す。

同社はこれまで、HotelbedsやExpedia、WebBedsなど複数の海外ホテル流通事業者と接続し、世界各地のホテル在庫を日本の旅行会社に提供してきた。さらに、海外のBtoBプレイヤーとの連携も広げるなど、グローバルのホテル流通事業者とのネットワークを構築している。

今後は国内ホテルとの取引を拡大し、「世界のホテルを日本へ」という従来の流れに、「日本のホテルを世界へ」という新たな流れを加える。国内宿泊施設と世界の旅行会社をつなぐことで、ホテル流通の事業領域を広げていく考えだ。

同時に、個人旅行中心だった取扱領域も広げる。2025年には募集型企画旅行向けのツアー造成システムを手がける会社を買収し、募集型企画旅行への提供価値拡大に着手。現在は、団体航空券や団体ホテルの手配にも取り組み始めている。

深田氏は、新たな領域について「接続は、まだ道半ば」としながらも、航空券、ホテル、BPO、ツアー造成などを組み合わせ、「全部ワンストップでできる世界」を目指す。今後の重点領域として、国内ホテルと、募集型企画旅行や学校関連を含むグループ・団体を挙げた。

AIで「人ではやりきれなかった安心・安全」を

今後、業務支援を広げる手段として、AIも積極的に活用する。深田氏は、AIを単なるシステム高度化の手段ではなく、旅行会社の業務負荷をさらに削減し、これまで人手では対応しきれなかった領域までサービスを広げるためのツールと位置付ける。

すでに、従来は人が作成していたホテル見積もりにAIを導入し、依頼内容に応じた候補を30秒で提案する仕組みを展開。さらに、VIPなど重要顧客の予約では、旅行会社がホテルへ電話し、予約状況や予約番号、客室タイプなどを再確認する作業を、AIによるアウトバウンドコールで代行する実証も進めている。

「人では全件やりきれなかったが、AIならできる。安心・安全をAIの力で深める世界を作りたい」と深田氏は話す。人の仕事を単純にAIへ置き換えるのではなく、人手では実現できなかったサービスまで提供範囲を広げる考えだ。

旅行会社側の予約管理データとアップルワールドの請求データの照合作業などについても、AIによる自動化を視野に入れる。深田氏によると、旅行会社によっては、こうした照合作業に週のうち相当な時間を費やしているケースもある。同社のプラットフォーム上で自動化することで、旅行会社の業務負荷をさらに減らす余地があるとみる。

こうした周辺機能は、ホテルや航空券の手配で同社を利用する旅行会社には追加料金を求めず提供する考えだ。手配価格そのものではなく、業務全体を効率化することで選ばれるという、これまでのBtoB戦略をAIでも強化する。

深田氏は今後の事業展開について、「国内ホテルや団体への価値提供を広げて、どんな旅でもその裏側にアップルワールドがいる世界を作れたらいい」と話す。2018年のじげん傘下入りから、ホテル予約を起点に、航空券、決済、BPO、募集型企画旅行へと広げてきたアップルワールド。今後は国内ホテルや団体旅行へ対象を広げるとともに、AIを活用しながら、旅行会社の業務そのものを支えるBtoBプラットフォームとしての機能をさらに拡張していく。

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