オンライン旅行業界のキーパーソンが予測する2017年とは? カヤックCEOらが選んだトレンドTop3 ―WITより(パート1)

2016年はどんな一年だったのか、そして続く2017年はどんな年になるのか。

オンライン旅行業界の国際会議を運営する「WIT(Web In Travel)」に寄せられた、業界リーダーたちの視点を集めてみた。今回の寄稿者は、カヤックCEOスティーブ・ハフナー氏、モモンドグループCEOヒューゴ・バージ氏、アゴダVPティモシー・ヒューズ氏、i.JTB執行役員・三島健氏の4名。2016年におこなわれた業界内のM&Aから、2017年に台頭する最先端の技術的要素まで、それぞれが挙げた主なトレンドTOP3を掲載する。

スティーブ・ハフナー(Steve Hafner)氏 ―カヤック 最高経営責任者(CEO)兼共同創業者

1_Steve-Hafner-Photo-website2016年の重大な出来事TOP3

  1. 人工知能(AI)の台頭。旅行業のスタートアップにとっては、さらに厳しい時代の到来で、イノベーションに必要なコストが増大している。ライバルとの差別化を図るには、あまりにも多くの開発者やプラットフォームが必要となる上、膨大なデータにもアクセスしなくてはならない。
  2. シートリップによるスカイスキャナー買収。OTAビッグ3の賭ける先が出揃った格好で、面白い展開だ。
  3. フィアンセが、またベビーを授かりました。

2017年に要注目の動きTOP 3

  1. エクスペディアは、さらなる拡大路線を進め、OTA市場のシェア拡大に投資する。(おそらく欧州に強いOdigeoあたりがターゲットになる)。
  2. トリップアドバイザーは、トリヴァゴに対し、1943年に逆戻りしたかのような戦闘態勢で臨むようになる。トリヴァゴも、トリップアドバイザー同様、一般投資家の圧力から無縁ではいられなくなり、両社は同じ土俵の上にいる。個人的には、(トリップアドバイサーCEOの)カウファーに分があると思う。すばらしい検索エンジンとコンテンツを持っているし、財務面でもマーケティングに投資する余裕が十分にある。
  3. グーグルは、航空券やホテル料金広告のブランド検索に関する取り決めについて、見直しに着手する。最初はゆっくりと、しかし徐々に加速していくだろう。検索結果を見たら、マリオット・ホテルより上にHPA(グーグルのホテル・プライス・アド)が表示されて、関係者を驚愕させる日がくるかもしれない。

ヒューゴ・バージ(Hugo Burge)氏 ―モモンド・グループ(Momondo Group) 最高経営責任者(CEO)

2_Hugo-Burge-Photo2-website2016年の重大な出来事TOP3

  1. 二極化が進み、ポピュリスト政治への支持が増大したこと。ローカル社会における人々の権利軽視が進んだことへの反発が背景にある。
  2. 英国民が選挙でEU離脱を選んだこと。
  3. モモンド・グループのフライト比較検索サイト「チープフライト・ドットコム」の刷新がようやく完了したこと。

2017年に要注目の動きTOP 3

  1. 政治的に不安定な状況、決裂、一触即発の緊張が続く。
  2. デジタル決済が買い物の在り方を一新する。
  3. 世界が開かれた場であり続けるように、皆がそれぞれの小さな役割を果たし、オープンな世界を守るために闘わなくてはいけない。

     

ティモシー・ヒューズ(Timothy Hughes)氏 ―アゴダ ビジネス・ディベロップメント担当副社長

3_Timothy-Hughes-Photo-website2016年の重大な出来事TOP3

  1. インベントリーの拡大。アゴダ、ブッキング、エアビーアンドビーなど大手では、予約取扱ホテルが100万軒を突破し、さらに増加中。世界中の宿泊施設がオンライン予約できる時代になった。
  2. グーグルのOTA化。グーグルは否定しているが、同社が提供しているプロダクトから判断すると、すでにOTAと呼べる。
  3. 記憶に残る年。ベルリンの壁が崩壊した1989年や、9/11テロ事件が起きた2001年などと同じように、語られる年になるだろう。英国のEU離脱、トランプ大統領誕生、シリア問題、ニースでのテロ事件、そのほか昨年、起きた様々な出来事について、我々は今後、何度も振り返ることになる。

2017年に要注目の動きTOP 3

  1. 「巨額の赤字」覚悟のビジネス・プランの消滅。トリヴァゴのIPO、景気の縮小などで、これまでは利益が出ないことを承知の上で、ビジネス拡大に動いていたアジアの旅行会社も、その多くが方向性の見直しを余儀なくされる。持続可能で、利益を確保できる現実的なビジネス・モデルへの転換が進む。
  2. 直販とOTAの共存共栄。自社直販と、(OTAなどによる)仲介販売は、競争ではなく、むしろ相互に補完関係にあるということを、宿泊施設のオーナー側が、今まで以上に実感する。
  3. チャットの台頭、電話の衰退。あらゆる場面で、チャット・サービスの役割が大きく目立つようになるだろう。2017年は、まだチャットがボイス(電話)を完全に凌駕する段階にまでは至らないと思うが、チャット利用が広がることで、ユーザー側の動き(あるいは旅行会社のプロダクト)には、明らかな変化が出てくるだろう。

 

三島健氏 ―i.JTB 執行役員

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  1. オンラインが主戦場に。インターネット・ビジネスに関わる誰もが、オンライン・マーケティングと流通に悩んでいる。トリップアドバイザーは、もともとメディアとしての役割を果たしつつ、売上の大半はOTAやサプライヤーから得てきたのに、今や仲介販売ビジネスにも乗り出した。ホテルや航空会社は、オンライン直販を戦略のキーとしており、OTAなど、他のオンライン・プレイヤーを悩ませた。日本市場の場合、(旅行サプライヤーの)オンライン進出率は約40%に達しており、さらに増加中。かつてオンラインは(流通形態の)「ある一部分」として扱われてきたが、今や誰もが最重要戦略に位置付けている。
  2. 新しい市場が重要。シンガポールでは、数年前から戦略的にカジノ・ビジネスへの投資を行い、サンズ・グループの進出を受け入れたことが奏功している。同国の事例から学べるのは、旅行産業にとって、新しいアングルが非常に重要だということ。もちろん適切な手法は必須だ。日本では、年間のインバウンド旅客数が2000万人を突破、2016年は2400万人が見込まれるなど、新しいマーケット・セグメントが形成された。この好機に、訪日客を受け入れるのに十分な宿泊施設やバケーション・レンタルを提供できるかが肝要だ。旅行産業は、旧態依然になりがちだが、新しい時代の波を感じて、政府や議会側も、今までとは違う考え方や視点を持ってほしい。
  3. 再編:合併・統合。急成長中の新興勢力や特定の分野に強いプレイヤーが、既存大手の傘下に加わる動きが活発化した。メタサーチ、ホテル、OTAなど。その結果については、まだこれからの判断になる。顧客やパートナーからの支持を拡大できるのか、財務面でのプレッシャーが厳しくなるのか、今後に注目だ。

2017年に要注目の動きTOP 3

  1. データ。データと、そのマネジメントおよび解析が、新しいユーザー・エクスペリエンス提供には不可欠だ。例えば音声、テキスト/チャット・ボット、グラフィック・サーチなど。新規顧客の獲得にも、音声やチャット・ボットを使った新手法が登場する。これまでのウェブ・マーケティング戦略やオペレーション事例が通用しなくなる。
  2. サプライヤーとの提携関係の在り方。OTAやオンライン流通の立場から考えると、今やサプライヤーの時代だ。商品が強力かつユニークであれば、サプライヤーは無敵だ。エクスペディアやプライスラインなど超大手を除くと、流通側の役割とは何か。この厳しい時代を生き抜き、成長するための課題は何なのだろうか。
  3. 旅行分野における次のシェアリング・ビジネス。すでに色々な新ビジネスが登場しており、自宅、ビル、スペース、カー・ライド、スーツケースなどがシェア可能だが、次は何か? 利用者にとって、主要な選択肢として定着するのかも注目だ。

※この記事は、オンライントラベルをテーマとする世界的なイベント「WIT(Web In Travel)」公式サイトに掲載された英文記事を、許諾を得て日本語翻訳・編集しました(トラベルボイス編集部)。

オリジナル記事:REFLECTIONS ON 2016 AND PREDICTIONS FOR 2017 (PART I)



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