HISがオンライン旅行で新事業構築へ、世界と戦う新体制発表、M&A積極化やホテル新会社設立など

エイチ・アイ・エス(HIS)は、世界に通用するオンライン旅行事業のモデル構築を目指す。これは、このほど発表された新体制への移行における成長戦略のひとつとして発表されたもの。代表取締役会長の澤田秀雄氏は、新体制発表の記者会見で「総合旅行会社という事業はもう古くなっている。世界に通用するOTA(オンライン旅行会社)を視野に入れた新たなビジネスモデルを構築していこうと考えている。」と意気込んだ。

今回、発表された新体制は、2016年11月から社内カンパニー制導入などで新たな経営体制に移行するもの(下段に画像)。各カンパニーでの権限と責任を明確化することで、近年、多角化をみせる各分野事業の意思決定のスピードを上げ、成長を加速させたい考えだ。

新たな体制では、創業者で現代表取締役会長の澤田秀雄氏が会長兼社長・最高経営責任者(CEO)に。現代表取締役社長の平林朗氏が取締役副会長を務める。同時に、平林氏が「グローバルオンライン事業担当」としてオンライン旅行分野の陣頭指揮をつとめることになる。さらに、平林氏はM&A本部長も兼任し、グループ全体で500億円規模の適切な投資を判断してく。

大きな特徴は、今回の新体制からグローバルオンライン事業を既存旅行事業から切り離したこと。会見では、平林氏が「まったく新たなものを作っていこうと考えている」と新たなモデル構築への意欲を示した。さらに、世界の大手オンライン旅行会社の台頭や異業種参入などで、オンライン旅行販売の環境が大きく変わってきていることを指摘。新たな事業開発とともに、兼任するM&A本部の活動と平行して、世界の新興企業や既存企業との協業や買収を積極的に行っていく考えを示した。

現会長の澤田氏は、国内企業との戦いではなく「世界の競争を勝ち抜いていく。世界、アジアでナンバー1の旅行会社、OTAを目指す」とその意気込みを表明した。


新体制で変わることは?脱・旅行会社と旅行事業強化を両輪で

今回の新体制で特徴的なのは、旅行事業からスタートした同社が脱旅行会社を目指している点だ。新体制発表の記者会見では、澤田氏が「旅行業だけだった事業が多くの分野に拡大している。その連携をするためにも新しい機能にする必要がある」と背景を説明した。

近年、同社は電力、ロボット、ホテルなど事業の多角化を進めてきた。最近では、ハウステンボスで農業分野(植物工場)の研究も開始。澤田氏は、これらの分野が3年から5年で大きく伸びるとみており、「こっちに舵を切っていく」と明言した。

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ホテル事業では、ロボットの接客や生産性の高さで話題となったハウステンボスの「変なホテル」や、「ウォーターマークホテル」など世界で100軒を目指して展開していく計画。11月中にはHISホテルホールディングスと名付けた新会社を設立し、ホテルマネジメント契約の受託やM&A、自社物件の取得などを行っていく予定だ。こうした展開で、澤田氏は「(ホテル事業の)利益でも200から300億円の会社になっていく」とみている。なお、新会社の代表取締役社長・CEOには平林氏が就任する予定。

電力分野では、収益化が実現。ロボットや農業分野でも高い将来性が見込んでおり、澤田氏は「これらの分野が将来的な核の事業になる」と話す。そして、旅行事業とともに売上げ1兆円規模まで成長できると展望した。こうした事業は、ハウステンボスの再建事業の過程で生まれたもの。澤田氏は「モナコ公国ほどの広さがあるハウステンボスでは、ひとつの国家運営のようなことができた」と話し、各種事業の実証実験的な事業を実現できたことを評価。事業多角化の転機が、そこにあったことを振り返った。

一方、収益構造では旅行以外の事業が牽引する未来像を描くが、旅行事業でもさらなる成長を目指す。

新体制では、組織をコーポレート部門(人事・総務など本社部門機能)と旅行事業部門に分割。旅行事業部門は「HIS JAPAN」、「HIS訪日事業部門」としてカンパニー制に準じた位置づけとする。旅行事業部門には、注力していくグローバルオンライン事業、国内の旅行事業子会社、海外事業に関わる海外関係会社、ホテル事業、テーマパーク事業などが含まれ、社内事業を横断した「連結グループ戦略会議」でグループシナジーを生む体制とする。

記者会見プレゼンテーション資料より

こうした各事業部門には、執行役員や代表取締役を置かれることになり、各執行責任者は、今後発表されることになる。

トラベルボイス編集部 山岡薫

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