クラブメッドの新たなマーケティング戦略を聞いてきた、モバイル活用から旅行会社向けBtoBプログラムまで

クラブメッドが、日本での展開を加速している。2017年12月、国内3軒目となるバカンス村を北海道・トマムで開業し、4軒目となる新リゾートの計画も進行中だ。一方、日本市場向けマーケティングでは、新施策を相次ぎ導入。今年10月から航空券との組み合わせ販売(ダイナミック・パッケージ)を開始、モバイル用画面も刷新した。来年には、各リゾート別の日本語アプリも導入予定で、インスタグラムも積極活用する。このほどマーケティング本部長に就任した井上忠浩氏に、今後の戦略を聞いた。

12月にオープンする「クラブメッド トマム 北海道」は、収容人数最大1000人規模の大型施設で、国内では沖縄のカビラ、北海道のサホロに続く3軒目。クラブメッドの中でも、最上級の施設やサービスをそろえた「5トリダン・スペース(同社の最上位のグレード)」も併設する。今夏、着任した井上忠浩マーケティング本部長は、トマム開業により、日本人クラブメッド宿泊者数は前年比40%以上の増加を期待。さらに国内4軒目の新リゾート計画も進行中であることから「今後3年間で、日本における収益を倍増する」と自信を示す。

*編集部より:記事公開当初、北海道トマムのバカンス村がすでに開業している表記がありました。22日10時40分時点で現在の記事に修正をしております。内容の相違がありましたこと、お詫びして訂正いたします。

ダイナミック・パッケージやモバイルも積極活用

流通経路に占める旅行会社の比率が7割を占めることも、日本市場の特徴だ。ちなみに世界全体の平均は4割という。

ただ、井上本部長によると「旅行店舗によって客層や動く商品はかなり異なるので、旅行会社や支店のセグメンテーションは必須。それぞれに的確な販促支援をしたい」。こうした考えから、旅行会社やOTA向けのトレード・マーケティングを担当する新しいポジションを設置した。

ウェブサイトやモバイル経由での予約でも、新しい試みを相次ぎ導入している。10月からは自社システムを使ったダイナミック・パッケージが始動。間際予約の取り込みなどに効果を発揮し、特に近場の東南アジア・リゾートの販売で大きな成果が出ているという。

またクラブメッドのスマートフォン用画面も刷新。ビジュアルやコンテンツをウェブサイトと統一し、情報ダウンロードにかかる時間を迅速化。これによりスマートフォン経由での予約が従来の2倍に増えたという。「10分の1秒単位でのスピードアップだが、スマホの場合、やはり速さは大切なのだと実感した。ダイナミック・パッケージ開始との相乗効果もあったと思う」(井上氏)。

忙しい家族旅行にこそ、オールインクルーシブを

井上氏が日本の利用者に、もっと知ってもらいたいと考えているのが、クラブメッド自慢のオールインクルーシブの利点だ。宿泊費だけでなく、食事、リゾート内での各種アクティビティ、夜のエンターテイメントなどがすべて含まれた料金体系のことで、1950年代、このシステムを世界で最初に先駆けて打ち出した。現地に着いてからの追加料金はお酒とオプショナルツアーぐらいだ。

「選択肢が充実していて、トレンドを先読みしながら、内容も常に刷新している」と井上本部長は話す。例えば子供を預けられる「ミニクラブ」も、もちろん追加料金はなし。日本では新婚旅行などカップル向けというイメージが強いクラブメッドだが、世界全体では65%が家族旅行客という。

「昨今の消費者は、旅行前にあれこれ検索して何十時間も費やすというが、忙しいパパやママには、その時間を子供や家族との時間に充て、旅行先でのことは、ぜひクラブメッドに任せてほしい」(井上氏)。

年齢や男女の嗜好の違いから、滞在中の楽しみ方には個人差も。そこで、もっと便利にリゾート内でのアクティビティを楽しんでもらおうと、各種予約や滞在中のスケジュール管理などの機能がついた日本語版アプリを来年、導入する。まずは北海道のリゾートから着手する予定だ。

家族客に加え、アクティブ・シニア、そしてハネムーン市場を含むカップルも、ターゲット顧客層だ。12歳以上限定の高級リゾート、モルディブの「フィノール・ヴィラ」では、今下期、ホールセーラー向けの客室アロットメントを確保し「2人目半額」ツアーが実現。9~10月の取扱はなんと前年同期の12倍に拡大し、わずか2カ月で、昨年一年分と並んだという。

今年秋には、マーケティングチームが新体制に。左からマーケティングコンテントエグゼクティブ:トムリンソン妙子氏、トレードマーケティングエグゼクティブ:加藤幸子氏、マーケティング本部長:井上忠浩氏、代表取締役社長:スチュワート・ド・ブルゴーニュ氏、マーケティングアシスタント:岡本雅氏

訪問先デスティネーションの多様化が課題

日本人旅行者の訪問先に偏りがあることも、今の課題だ。現在、クラブメッドは世界中で約70のリゾートを展開しているが、日本人利用客の訪問先は、国内および東南アジアの8~9軒に集中しているという。

「例えばカンクン、モーリシャス、それから南仏プロヴァンス・オピオのリゾートなどは、もっと日本人の需要があるはず。しかしクラブメッドの存在感は薄い」(井上本部長)。本拠地フランス国内では、ミネラルウオーターで有名なヴィッテル、冬季五輪が最初に開催されたシャモニーなど、各地で個性豊かなリゾートを展開しているが「日本では、クラブメッドが実際よりずいぶん小さく見えてしまっている。もっと色々な場所を紹介したい」と意気込む。

クラブメッドの世界観を知ってもらおうと、このほど考案したのが「チーフ・インスタグラム・オフィサー」の募集だ。一年間、世界各地の同社リゾートを回り、様々な現地の様子を画像でアップする仕事で、施設などハード面だけでなく「クラブメッドのリゾートで過ごす幸せな時間を切り取った写真を期待している。幸せ、というブランド・イメージを広げたい」(井上氏)。

同時並行して、旅行商品リテーラーの中に、クラブメッドを熟知したスタッフを育成するプログラムも必要と考えている。現地への研修旅行、旅行業界向けのウェブサイトやブローシュア作成にも順次、着手する計画だ。

ウェブサイトからSNS、OTA、そしてリアルの旅行店舗と、流通の舞台がますます多様化し、相互に影響を及ぼし合うなかで、必ずしもマス・マーケットではないクラブメッドの潜在顧客層にどうアプローチするか。大小さまざまな仕掛けを繰り出しつつ、クラブメッドの今までにない魅力を届けるべく動き出している。

聞き手 トラベルボイス 鶴本浩司

取材・記事 谷山明子

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