ヤフートラベルが「自前コンテンツ」を強化へ、その狙いをヤフーに聞く

Yahoo!トラベルの新戦略(2)

マネタイズは将来的な広告収入、ショッピングなどと連動も


 

ヤフーは、「Yahoo!トラベル」で、新たに国内宿泊施設との直接契約による予約サービスを始める。すでに第3種旅行業も取得。前回に引き続き、今回も先行他社との差別化を図りながら、インターネット宿泊予約事業に打って出るYahoo!トラベルの新しい戦略を紹介する。

前回記事>>> ヤフートラベルの宿泊予約の手数料無料化、その狙いをヤフーに聞く


▼既存プランは継続、新たな直接契約のプランと併載

選択肢が豊富になることでユーザー増加に期待

現在、検索後の画面。Yahoo!トラベルの直接契約の宿泊施設の掲載開始後は、ここにひとつプランが増えるイメージに。

ヤフーは、2014年夏を目途に直接契約によるYahoo!トラベルを開始するが、現在アグリゲート・モデル(利用者の仲介による手数料ビジネス)で国内宿泊予約を展開しているJTB、るるぶトラベル、一休、ベストリザーブのプラン掲載も継続していくという。Yahoo!トラベルのなかに、Yahoo!トラベルのプランができるというイメージだ。現在も比較サイト的な役割を果たしているが、そのなかにYahoo!トラベル独自のプランが入り、ユーザーにとっては、選べるプランが増えることになる。「当然、そこには競争が発生するだろう。しかし、Yahoo!トラベルを訪れるユーザーが増えれば、それだけ全体の予約数の増加にもつながるのではないか」(齋藤氏)との考えだ。

アグリゲート・モデルでは従来通り予約成立ごとに手数料が発生するが、気になるのは、直販ビジネスとなるYahoo!トラベルのマネタイズだろう。齋藤氏は「ユーザーや施設が多く集まることによって、Yahoo!トラベルの価値が高まる。そうなれば、競争原理が働く。インターネットの場合は、より目立つことが重要なので、広告という可能性も広がっていくだろう」と説明し、将来的な広告収入を目論む。また、宿泊施設がYahoo!トラベルのなかで、マーケティングできるような仕組みも視野に入っているようだ。収益については、単年度ではなく、長期的に見ていく方針で、基本の「ユーザーファースト」のコンセプトに加え、宿泊施設が負担する手数料を無料にした「売り手ファースト」とすることで、まずはサイトの価値を高めていくことに主眼を置いていく。


▼自社コンテンツを展開することで他事業者との連携が可能に

ショッピングなどの組み合わせも視野

トラベルサービスマネージャーの西田裕志氏

トラベルサービスマネージャーの西田裕志氏は「Yahoo!トラベルはメディアサイトという位置づけ。これまでは、いろいろなコンテンツをもっている事業者と組んで、旅の需要を喚起させることに力を入れていたが、自分たちでコンテンツを持っていないと、今後のいろいろな連携や事業を考えた場合、不便になる」と話し、将来的な事業拡大に向けても自前コンテンツを展開していく意義を強調する。

たとえば、自前コンテンツがあれば、現在提供している「旅のしおり」サービスとの連動をさらに深められるだろう。また、さらに広い枠組みで、Yahoo!JAPANとしても、宿泊と地域の物産品などのショッピングなどいろいろな組み合わせも可能になってくる。「ショッピング(物品の販売)でも固定費がかからないので、第一次産業の季節ものの商品も出しやすくなる。これまでネットに出なかったものが出てくるだろう」と齋藤氏。eコマース革命で、今後トラベルと連動するいろいろなアイデアが出てきそうだ。

Yahoo!トラベルでは、直販ビジネスを始めるにあたって、営業体制を強化している。マネタイズの仕組みが異なることから、競合OTAのような営業規模は整えられないとしながらも、将来的には営業拠点の全国展開も考えていく意向だ。さまざまな旅行素材はあるが、「まずは国内宿泊でしっかりとしたサービスを提供していく」(齋藤氏)。リリースにあたっては、告知を含めたキャンペーンも実施する計画だ。


▼宿泊施設のウェブ化にも貢献

スマートデバイス利用増を見据え、スマホ対応にも注力

ショッピングカンパニー予約事業本部本部長の齋藤克也氏

フォーカスライトの調査によると、日本の旅行市場でのオンライン取扱率は2015年までに40%になると予測されている。齋藤氏は「インターネットは商機を広げる。これまで利用料が足かせとなって、ウェブ化できなかった宿泊施設も多い。そうした施設にシステムを提供して、ビジネスを拡大させていく手助けしていきたい」と話す。現在、全国の宿泊施設の数は約5万5000軒。そのうち、ウェブ化率は30%ほどだという。齋藤氏は「この比率は確実に上がっていく」と予測し、「自社でホームページを展開するのにも運用コストがかかってしまう。Yahoo!トラベルを自社ページとして使ってもらいたい」と話す。宿泊施設が希望すれば、自社ホームページへのリンクの開放も無料で提供していく方針だ。

ユーザーサイドから見ると、スマートフォンやタブレット端末などスマートディバイスでの利用が今後急速に伸びると見込まれている。現在は、まだPCでの利用比率のほうが高く、Yahoo!トラベルでのスマートディバイスの利用比率は現在15〜16%(西田氏)。しかし、その伸びシロはかなり大きいと見ており、Yahoo!トラベル専用の予約アプリの開発も進めているという。

日本最大の検索エンジンであるYahoo!JAPANが旅行でも直販ビジネスを始めるインパクトは、市場に対しても、業界に対しても大きいだろう。「ユーザーファーストという考えから、ラインアップを増やしていくことが大切。将来的には業界でナンバーワンの取扱件数を目指していきたい」と齋藤氏は意気込む。今夏以降、Yahoo!トラベルの動きに大きな注目が集まりそうだ。

  • 文:トラベル・ジャーナリスト 山田友樹
  • 編集:トラベルボイス編集部

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