世界の出張旅行の未来とは? スマホで変わったビジネス旅行体験と新興勢力の台頭を整理した ―ユーロモニター

ユーロモニター・インターナショナルはこのほど、業務渡航マーケットに関する展望を「ビジネストラベルの未来像、AIからZまで(The Future of an Industry AI to Z of Business Travel)」と題するレポートにまとめた。レジャー市場に比べ、変化の波が緩やかだった業務渡航市場でも、スマートフォンの普及に伴いシェアリングエコノミーが台頭するなど、新しい動きが顕著だ。

同レポートでは、これまで業務渡航市場において、オンライン化の動きが比較的、緩慢だった背景には、企業側と法人旅行会社が協力し、コスト削減や効率化、出張規約の順守に取り組んできたことを指摘。また地域による違いもあり、北米やアジアでは、オンライン利用は法人よりレジャー旅行の分野で先行しているが、西ヨーロッパは逆で、法人旅行でのオンライン利用の方が浸透したとしている。ただしイタリアやフランスなどは例外だ。

スマホの登場により、出張者の体験が激変

しかしスマートフォンが業務渡航マーケットの様相を一変させた。出張者は、移動中もリアルタイムで情報にアクセス可能に。またコンカーのようなSaaS(ソフトウェア・アズ・サービス)方式でネットを介してアプリケーションを提供する会社や、予約手配・出張旅費管理サービスを行うスタートアップが登場し、今まで法人旅行会社が優位だった領域を脅かしている。

世界人口の数を上回るスマートフォンが出回り、出張者にとってモバイル機器はなくてはならない存在となったが、必ずしもサービスは追いついていない。

GBTA(グローバルビジネス旅行協会)が実施した年次調査によると、海外出張者の64%は、移動中にモバイル機器で旅程の詳細をチェック。ミレニアル世代に絞るとこの比率はさらに高く、77%に至る。回答者は「Wi-Fiにアクセスできない環境」を「出張中、最もイライラすること」に挙げている。同レポートでは、会員や宿泊客に、完全無料のWi-Fiアクセス環境を提供していないホテルはあまりに時代遅れだと断言する。

ネットを介して単発の仕事を柔軟にこなす「ギグ・エコノミー」の世界的な広がりも、今後、業務渡航のあり方を左右する要因に挙げられる。企業との雇用契約はなく、オンデマンドで仕事を請け負う人や自営業者などは、労働人口全体から見るとまだ少数派で、世界平均で10対1。だが、この層が増加すると出張で利用する旅行サービスの選択基準も変化し、ベスト・バリューを求める傾向が強まると予測。同時に、出張とレジャーの境界線がより曖昧になるため、レジャー関連消費を含まない出張旅費データだけを見ていると、ギグ・エコノミー需要を見誤るリスクも指摘している。

新興勢力が台頭、シェアリング経済や先端技術を駆使

これまで業務渡航マーケットで圧倒的なシェアを誇ってきた大手法人向けの旅行マネジメント会社(TMC)は、難しい局面を迎えている。

オンライン旅行会社、格安航空会社、メタサーチ、シェアリングエコノミーなど、様々な方向からの新規参入があり、売上は伸び悩む。唯一の例外が、エクスペディア系の法人系OTA、エジェンシア(Egencia)だ。

エクスペディアには、もともとレジャー旅行向けの膨大な取扱在庫がある。これをベースに法人旅行向けの商品を作り、提供しているのがエジェンシアだ。同様の手法は、他のレジャー旅行ブランドでも増えており、法人向けの商品やサービスを組み立てて提供するアプローチが盛んだ。

ユーロモニター:発表資料より

さらにAirbnb、ウーバー、ライアン・エアやイージー・ジェットなどは、旅費管理の自動化や、出張管理データの統合サービスにも力を入れている。

例えばウーバーは、大手から中小まで、さまざまな法人顧客にAPIを提供しており、世界70カ国・1400都市でこれまでに20億回の利用があった。社員の安全対策や、出張規約の順守についても対応。GBTA調査では、回答した雇用主の50%以上がライドシェア利用を選択肢の一つとしてすでに認めており、ウーバーの他、リフトやグーグルのウェイズ(Waze)の名前が挙がっている。

Airbnbでも、2014年から業務渡航マーケットへの取り組みを開始。コンカーのトリップ・リンク(TripLink)を使い、出張者からの予約を直接受け付ける仕組みや、予約データが自動的に旅費レポートに追加される機能を整えた。

2016年にはアメリカンエキスプレス、カールソン・ワゴンリー、BCDトラベルのシステムとも接続。また出張者の関心が高いマイレージ利用でも、デルタ航空、カンタス航空と提携。現在、Airbnbが法人予約システムでつながっている企業は1000社。2015年7月から2016年同月までの一年間で、出張の取扱額は3倍になった。

出張時のシェアリングエコノミー利用は、特にミレニアル世代からの支持が高い。この世代は労働人口の中心でもあるため、こうした傾向は今後、さらに拡大すると同レポートでは予測する。また、一部の宿泊施設などが着手しつつあるIoTや音声認識システム、AIといった技術の導入も進み、今後は旅行業界全体に浸透。それにより、業務渡航市場や出張者の体験が大きなインパクトを得る可能性を示唆している。

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