民泊エアビー、新たな「泊りがけタビナカ体験」の立ち上げ責任者に聞いてきた、日本の展開からアドベンチャー観光への期待まで

Airbnb (エアービーアンドビー)は、2019年6月に新たなカテゴリーとして、既存の「体験」と「宿泊」を組み合わせた泊りがけのサービス「アドベンチャー」を立ち上げた。同社アドベンチャー統括のキャロリン・ブーン氏は「エアビーは常に興味深い旅の開拓に力を入れている。現在提供している『体験』はこれまで大きな成功をおさめてきた。今こそ新しいカテゴリーを立ち上げる時」と意気込んでいる。ブーン氏に、その強みから日本での展開への考え方まで聞いてきた。

ブーン氏は、2011年にエアビーに入社。Airbnb Trips (現在の『Experiences:体験』)立ち上げメンバーの一人で、その仕組みの構築やホストコミュニティーの開拓に尽力。その後、「アドベンチャー」立ち上げで中心的な役割を担い、現在はそのビジネス全体を統括している。

ブーン氏は、「世界にはユニークなデスティネーションがたくさんある。旅行者は自分の目で見て感じことができる体験を求めている」と現在のマーケットを分析。タビナカが注目を集めているなか、エアビーの「アドベンチャー」は、人生観が変わるような特別な体験を集めているという。

現在のところ、同サービスは世界200件以上をリスティング。アクティビティ、宿泊のほか送迎や食事も加えたいわゆるパッケージ商品として提供している。それぞれ現地エキスパートがホストを務めるのは、エアビーが創業以来続けてきたCtoCのビジネスモデルと変わらない。

今のところ日本での展開はない。キャロリン氏によると、現在は、パートナーであるアドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)がアドベンチャーのベストプラクティスを作り上げている段階。「日本での『体験』の予約数は世界有数。料理教室、街歩き、地元コミュニティーとの交流など人気のツアーは多い。『アドベンチャー』も高い潜在性があると思う。日本での展開もそう遠い話ではないだろう」との見方を示した。

多岐にわたるコンテンツ、「80日間世界一周」も

アドベンチャーのコンテンツは多岐にわたっている。「コロラド州の断崖絶壁でのキャンプ」や「ケニアで戦士と一緒にライオンを追跡」などスーパーアクティブなアドベンチャーがある一方で、文化的な体験や地域コミュニティーと交流するアドベンチャーも多いという。「たとえば、アーミッシュの村でのファームステイ」とキャロリン氏。アメリカ中西部に暮らすアーミッシュは保守的で、外部の人間も文明も拒否するというイメージが強いが、インスタもやる進歩的なアーミッシュもいるという。「彼らの思想や伝統を学び、彼らへの理解を深めるのもアドベンチャーの特徴のひとつ」と強調した。

アドベンチャーのローンチに合わせて目玉となるプログラムも提供した。そのプログラムはすでに完売しているという「80日間世界一周の旅」だ。今年9月1日にロンドンを出発し、6大陸18カ国をめぐり、現地ではローカルホストの案内でさまざまなアクティビティを体験する。第8週目には日本にも立ち寄り、大阪、紀伊半島、熊野古道を巡る。「将来は宇宙旅行もアドベンチャーに加わるかも」とキャロリン氏。人生観の変わるトランスフォーマティブな旅行体験を開拓するエアビーであれば、ありえない話ではないかもしれない。

市場拡大が期待されるアドベンチャーツーリズム

OTAも含めさまざまなプレイヤーがタビナカ・ビジネスに参入し、市場は拡大を続けているが、キャロリン氏は「この分野は競争が激しくなっているが、マーケットも成長していくだろう」との見解を示す。そのうえで、アドベンチャーの強みとして、競争力のある価格、気軽に参加できる予約の仕組み、そしてローカルコミュニティーとのパートナーシップを挙げた。「80日間世界一周の旅」の一人あたりの値段はなんと55万5941円(ロンドンまでの往復運賃は除く)。分かりやすい予約動線や地域への貢献は、エアビーが創業時から大切にしてきたことだ。

一方、ユニークでアクティブな体験がそろうことから、キャロリン氏は「安全性が最も重要な要素」と言葉を強める。アドベンチャーではATTAのガイドラインにそってプログラムを造成。「技術が必要なアクティビティは、実施前に参加者へのトレーニングも設けているし、ホストもそれぞれの分野で専門的な資格を持った人も多い」と自信を示した。

ATTAの試算によると、2017年のアドベンチャーツーリズムの市場規模は約6,830億ドル(約68.3兆円)。2012年比で21%増加しており、今後も毎年拡大していくと見込まれている。「モノを買う旅行だけでなく、現体験や地域との交流に価値をおく旅行はますます好まれていくだろう」。エアビーの「アドベンチャー」が、旅行者が求める冒険心をくすぐるタビナカ・プラットフォームになるのか。

取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹

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