【年頭所感】観光庁長官 和田浩一氏 ―まずは国内交流の需要喚起、デジタル化で観光産業の変革へ

観光庁長官の和田浩一氏が、2022年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。

和田長官はコロナ禍のこの2年を振りかえり、感染拡大防止策徹底と同時に展開した「観光需要回復のための施策プラン」に言及。観光は、特に地方創生の切り札として今後もその重要性に変わりはないと説明している。さらに今後は安心・安全な旅行環境の確保に加え、「新たなGoToトラベル事業」の検討など、複数の観点から必要な取り組みを推進していく方針を示している。

発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。


令和4年 観光庁長官 年頭所感

明けましておめでとうございます。

2022年の新しい年を迎え、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。

人口減少を迎えているわが国では、観光先進国に向けた取組みの結果、2019年までインバウンドは飛躍的に増加し、観光産業や地域の活性化に寄与してまいりました。

他方、昨年を振り返りますと、1月には、東京を含む首都圏に緊急事態宣言が発出され、3月から4月にかけての一部の期間を除き、9月末まで緊急事態宣言が長い間、継続していたところです。これら新型コロナウイルス感染症の影響により、国内外の観光需要は大幅に減少し、観光関連産業は依然として厳しい状況におかれています。

このため、まずは、深刻な影響が続く観光関連産業の事業継続と雇用維持を図るため、雇用調整助成金の特例措置や、実質無利子・無担保融資による資金繰り支援など、関係省庁とも連携し、全力で支援を行ってまいりました。

さらに、全国的な移動を前提とするGoToトラベルを停止している中、感染が落ち着いている地域での観光需要の喚起策として、昨年4月からは、いわゆる「県民割」を支援する「地域観光事業支援」を開始し、これまでに43道府県で事業を実施していただいたところです(2021/12/24現在)。さらに、昨年11月には、この「県民割」を隣県に拡大するとともに、支援の期間を延長することとしました。

また、2020年12月には、感染拡大防止策の徹底を図りつつ、国内旅行需要の喚起、インバウンド回復に備えた取組みを進めるため、「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」が策定され、これに基づき、宿・観光地のリニューアルや観光コンテンツの充実等の取組みも戦略的に進めてまいりました。

具体的には、

  • 約230地域で、宿のリニューアルや廃屋を撤去し景観を改善して、温泉街などに賑わいを取り戻す取組みへの支援
  • 約1000地域で、その地域ならではの自然・文化等の観光資源を磨き上げる取組みへの支援

を行うなど、全国各地の観光地の底力を高める取組みを進めてきたところです。

観光は、成長戦略の柱、地方創生の切り札として、大いに成長を遂げてきました。ポストコロナ期においても、人口減少を迎える我が国において、観光を通じた内外との交流人口の拡大を通じて地域を活性化することの重要性に変わりはありません。

ワクチン接種率は約8割に達し、行動制限も緩和されるなど、観光には明るい兆しも見え始めているところです。ポストコロナもにらみながら、本年は以下の4つの観点から必要な取組みを進めてまいります。

まずは、国内交流の回復や新たな交流市場の開拓です。インバウンドの本格的な回復には時間を要するため、「ワクチン・検査パッケージ」を活用して安全・安心な旅行環境を確保しながら、まずは国内交流の需要喚起等に取り組んでまいります。

具体的には、感染状況が落ち着いていることを前提に、「県民割」の地域ブロックへの拡大や、さらに専門家のご意見を伺った上で、「新たなGoToトラベル事業」の実施を考えております。

これらに加え、コロナによる需要の変化等を踏まえ、「ワーケーション」や「第2のふるさとづくり」といった国内における新たな交流市場の開拓にも取り組んでまいります。

第2に、観光産業の変革です。宿泊施設のリニューアルなどを通じてサービスを向上させ、誘客や消費額の増加を図るとともに、宿泊事業者のバックヤードのデジタル化による生産性向上のほか、デジタル技術を活用した旅行者側への混雑回避行動の促しや、CRMによる地域への再訪を促すなどの取組みを進めてまいります。

また、ポストコロナを見据え、宿泊業や旅行業が目指すべき方向性についても議論を深め、観光地とともに、観光産業に従事する皆さんの双方にメリットをもたらす新しいビジネスモデルの構築に向けた検討を進めてまいります。

第3に、交流拡大により豊かさを実感できる地域(稼げる地域)の実現です。地域の関係者が広く連携して、地域独自の観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出、観光地のリニューアルのほか、持続可能な観光として、住んでよし訪れてよしの地域づくりに関する取組みも進めてまいります。

第4に、国際交流の回復に向けた準備です。インバウンドについては入国できない状況が続いておりますが、国内外の感染状況等を見極めながら、政府全体での水際措置の段階的な見直しに応じて、今後インバウンドをどのように迎えることができるか検討してまいります。

また、来たるインバウンドの回復に備え、キャッシュレス化、Wi-Fiなどの受入環境整備やハイブリッド形式のMICE開催促進についても、着実に取り組んでまいります。

こうした取組みを通じて、観光の回復とともに、さらなる地方創生への貢献という観点から、

  1. より多くの人に地方を訪れてもらうきっかけを作り、
  2. より多くの観光消費をしてもらい、
  3. 再びその地方を訪れてもらう、

という好循環を作っていきたいと考えております。

観光庁といたしましては、引き続き2030年6000万人、15兆円等の目標を堅持しつつ、観光立国の実現に向け政府一丸となって取り組んでまいります。

観光関係の皆様、国民の皆様におかれましては、今後とも観光政策にご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げて、新年のご挨拶とさせていただきます。

観光庁長官 和田浩一

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