苦境のバス業界、「このままでは地域のバスは持たない」、新GoToでは公共交通機関の利用促進を

日本バス協会は、各地域のバス事業者をはじめ、国会議員、関連官庁、関連事業者が一堂に会した「新年互礼会」を開催した。参加者は、長期にわたるコロナの影響による需要の減退に加えて、燃料の高騰なども重なり、バス事業は危機的な状況に陥っているとの認識を共有した。

同協会会長の清水一郎(伊予鉄グループ社長)は、「人流抑制という言葉に苦しんでいる。その言葉で公共交通機関を苦しめないでほしい。公共だが、バス事業者は民間企業。2年間のマイナスはそう簡単に戻せるものではない。今後3、4年でも難しいかもしれない。このままでは地域のバスは持たない。人流抑制に合理性や公平性があるのかどうか議論してほしい」と業界の危機感を訴えた。

そのうえで、「バスは安全を最優先に運行している。経営が苦しくても、その投資は怠らない」と説明。バス業界は安全対策、ダンピング対策などに取り組んでいるが、「市場が激変し、過当競争になっている。規制のあり方も見直していただきたい」と要望した。

さらに、現在オミクロン株の感染拡大で、GoToトラベルの再開は見通せない状況だが、「再開にあたっては、公共交通機関を使ってもらいたい。それによって、地域経済も活性化する」と話し、地域におけるバスの重要性を強調した。

2022年に向けては、デジタル化、MaaS、カーボンニュートラル、バスのEV化などを業界をあげて進めていく考えを明らかにし、「前向きに頑張っていきたい」と業界団体としての決意を示した。

清水日本バス協会会長中山展宏国土交通副大臣は、「バス市場は厳しい状況」との認識を示したうえで、「地域の持続可能な交通として、また、観光や通勤通学の不可欠な交通として、生産性向上や運行費などで支援をしていきたい」と話し、政府の方針を示した。

また、2016年に発生した軽井沢スキーバス転落事故について触れ、「安全対策はなによりも重要。安全な貸切バスの運行で事業者と連携して取り組んでいく」と強調した。

中山国土交通副大臣

自民党バス議員連盟会長の逢沢一郎衆議院議員は、「コロナが収束した後も、テレワークなどの浸透によって、バス需要がどれだけ戻るかは不透明。これまでのビジネスモデルは通用しないという認識を持つべきではないか」と提言。そのうえで、「持続可能な地域を守っていくためには、新しい公共交通機関の形をつくっていく必要がある」と訴えた。

逢沢自民党バス議員連盟会長

このほか、公明党の石井啓一幹事長は、雇用調整助成金について言及。「特例として今年の3月まで延長が決まったが、さらに延長していくとも提言していく」と話した。また、赤羽一嘉前国土交通大臣は、GoTo トラベルについて、前回の実施ではマイカーでの利用が多かったことを課題として挙げ、「新たなGoToトラベルでは、公共交通の利用による割引率を深掘りし、公共交通機関にもメリットが行き渡るように議論している」ことを明らかにした。

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