住民の地域愛着と旅行推奨度に相関、満足度との関連も、国内・訪日市場を分析 ―じゃらん観光振興セミナー

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じゃらんリサーチセンター(JRC)は、「観光振興セミナー2026」を開催し、2040年を見据えた観光のあり方と、国内・訪日旅行市場の最新動向を説明した。センター長の高橋佑司氏は、人口減少やAIの普及などで観光を取り巻く環境が変わるなか、旅行者数や観光消費額だけでなく、「地域の豊かさ」を観光の目的に据える必要性を強調した。

高橋氏は「観光の目的は、地域の豊かさのためである」と話す。旅行者による消費が観光事業者の売上や従業員の給与、税収を通じて住民の暮らしに還元される一方、旅行者の増加は交通渋滞や騒音、ごみ、マナー問題などをもたらす可能性もある。そのため、観光による経済効果と住民生活のバランスを、それぞれの地域が考えていくことが重要だとした。

2040年、AIが旅を選ぶ時代に高まる「人」の価値

高橋氏が将来の国内旅行市場の課題として挙げたのが、人口減少に加えて旅行実施率が低下していることだ。「じゃらん観光国内宿泊旅行調査2026」によると、2025年度の国内宿泊旅行実施率は48.9%。前年度の49.3%から0.4ポイント低下した。

高橋氏は、人口そのものが減少していくなかで旅行実施率も低い状態が続けば、国内宿泊旅行市場の縮小につながると危機感を示す。コロナ前の2018年度には実施率が56%だったことから、旅行に出る人を再び増やしていくことが重要な課題になるとした。

同時に、AIの普及によって旅の選び方そのものが変わるとみる。旅行者の予定や嗜好に合わせ、AIが目的地や旅程を提案することが一般化すれば、地域には「誰に合う地域なのか」を明確に示すことが求められる。

一方で、現地での旅行体験では、人との交流の価値がむしろ高まるとの考えだ。高橋氏は「選択まではAIがするが、行った先では人の価値が上がってくる」と指摘。地域の人との触れ合いや、その土地ならではの食、暮らしに接することが、「自分らしさ、人間らしさ」を感じる旅行体験につながるとした。

そこで高橋氏が重視するのが、住民自身の地域への「愛着」だ。JRCの調査では、住民の地域への愛着度と、「自分の地域に旅行に来てほしい」と考える旅行推奨度との相関係数は0.70。さらに、旅行推奨度と旅行者満足度にも0.62の相関が確認された。

高橋氏は「旅行者満足度を高めるには旅行推奨度を高めることが大事。その前には、住民が自分の地域に愛着を持っているかどうかが重要になる」と指摘した。さらに、住民の愛着を高めるには、観光が地域にもたらす価値を住民に見える形で伝えるとともに、地元の観光資源の価値を知る機会を設けることが必要だとした。中長期的には観光教育も重要だとして、DMOと教育委員会が連携し、小中高校の段階から地域の産業や観光資源を学ぶ取り組みを例に挙げた。

国内旅行、単価上昇のなか「行ってよかった」をどう生むか

研究員の池内摩耶氏は、「じゃらん観光国内宿泊旅行調査2026」をもとに国内市場を解説した。

2025年度の延べ宿泊旅行者数は1億2763万人回。国内宿泊旅行実施率が48.9%に低下する一方、2泊旅行がやや増えたことで、延べ宿泊数は2億2372万人泊と微増した。

旅行費用総額は8兆3883億円で前年度から2.5%増加。1人1回あたりの旅行費用は6万5700円と前年から1600円上昇。なかでも現地消費が増えており、旅行費用全体の43.8%を占めた。

池内氏は、費用総額の増加について、「市場を押し上げているのは人数ではなく、1回あたりの旅行単価の上昇」と説明。単価上昇を負担増だけで終わらせず、「行ってよかった、払ってよかった」と感じてもらえる体験につなげることが重要だとした。

その手掛かりになるのが、高橋氏の講演とも重なる「地域ならでは」の価値だ。

総合満足度では香川県が2年連続1位となり、長崎県、岐阜県が続いた。関東・甲信越では長野県が87.7%で6位に入り、前年度の84.8%から上昇した。温泉、自然、宿泊施設など複数の地域資源への評価が背景にあるという。

「ご当地ならではの体験・アクティビティ」でも、千葉県、山梨県、長野県が上位に入った。山梨県では富士山や河口湖、山中湖、ハイキング、長野県では温泉、登山、スキー、スノーボードなどが挙がった。

池内氏は、満足度の高い地域では、食だけでなく文化を含めた地域性が評価されていると説明。旅行単価が上昇する今だからこそ、現地での消費を、その地域でしか得られない体験や価値につなげる必要性を指摘した。

インバウンド、地方分散と市場別マーケティングが課題に

インバウンド編では、研究員の松本百加里氏が「インバウンド都道府県ポジショニング調査2026」をもとに解説した。

2025年の訪日客数は過去最高となる4268万4000人、旅行消費額も9兆4549億円に拡大した。一方、外国人延べ宿泊者数の66.3%は三大都市圏に集中しており、地方への分散は引き続き課題となっている。2026年の訪日客数は、前年比で減少が続いており、特に中国市場が大きく減少する一方、台湾や韓国、米国など増加傾向の市場もあり市場構成の変化もみられる。

JRCでは、空港利用、平均泊数、延べ宿泊者数、消費単価、訪問率などの指標をもとに、都道府県ごとの特徴を市場別に分析した。

例えば、関東・甲信越では、東京は訪日旅行の「目的地・拠点」、千葉は成田空港を持つ「ゲートウェイ」としての性格が強い。栃木や群馬は交通動線を実際の訪問・宿泊につなげる余地がある「ルート伸びしろ」、山梨は富士山を中心とした「一点突破」の傾向がみられた。

また、長野では市場による違いが大きく、韓国や香港では宿泊が長めで、米国やオーストラリアでは宿泊・消費型の傾向がみられる。スキー需要などが滞在の長期化につながっているという。新潟は新幹線を利用した誘客が特徴となっている。

訪日回数が増えるほど、旅行は個人化し、関心もより地域に根差したテーマへと深まる傾向がある。東アジアでは温泉旅館や地元グルメ、さらに訪日回数が増えると、新鮮な果物や海鮮、地元のスーパーなど「暮らすような滞在」への関心が高まる。東南アジアでは雪、温泉、スキーなど、日本ならではの気候や自然体験への需要が強まるという。

こうした国内・訪日旅行者の傾向から、JRCは、地域の人が価値を感じるものを観光の中核に据え、それを旅行者の満足につなげていくことを、これからの地域観光の重要な視点として示した。

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