2015年旅行・観光ビジネスでヒットするキーワード12選、「幸運の女神には前髪しかない」

千葉千枝子の観光ビジネス解説(22)



【キーワード1】 ASEAN経済共同体 

海外旅行市場は2015年も円安基調に阻まれるものの、新たな動きも期待できそうな予感だ。最大のポイントは、ASEAN経済共同体(Association of Southeast Asian Nations)の本格始動である。今年いよいよ、ASEAN域内でモノ・ヒト、サービスの自由化がはじまる。関税撤廃や越境無審査・無査証で、貨物・旅客の域内新航路や増発増便、陸路ロジスティックスが整備されていくことが予想され、日本からの商用渡航も増すであろう。

2014年12月、都内で開催された「2015年ASEAN経済共同体最新事情:観光と航空」は満員御礼

ちなみに、ASEAN東南アジア諸国連合6カ国、シンガポール・マレーシア・タイ・インドネシア・フィリピン・ブルネイが注目株。また、後発加盟のベトナム・ラオス・ミャンマー・カンボジアも、宝の山といえそうだ。




【キーワード2】 beyond 

気になるのは、カリブ海の真珠・キューバの動向である。米国との歩み寄りは、旅行業界にとっても歓迎すべきこと。ディスティネーションとしての注目度が高まりそうだ。また、ブータンやモンゴル、ネパールにも、熱い視線が注がれるだろう。キーワードはbeyond(その先の向こうに)。ゲートウェイとなる都市への路線が、後背地を拓き、潜在的市場を結ぶ、その磨き上げるときにきている。


【キーワード3】 国際線LCCの増加

2015年は、日本発のLCCが近隣アジアに数々、就航の予定である。バニラエアが成田・高雄(1月)を、香港エクスプレスが成田・香港(2月)を、ジェットスタージャパンが関空・香港を(2月)、ノックスクートが成田・バンコクを(3月)、セブパシフィックが成田・セブを(3月)、Vエアーが成田と台湾を結ぶことが予定されている。4月8日には、成田空港にLCC専用第3旅客ターミナルが開業する。経済成長著しいアジアが、ますます近くになりそうだ。


【キーワード4】 日韓国交正常化50周年

また、2015年は日韓国交正常化50周年の節目の年である。近年、大きく冷え込んだ両国の関係も、民間交流改善に向けて前進の年となりそうだ。もっとも短時間で行くことのできる海外渡航先の韓国。アウトバウンド市場の拡大は、韓国マーケットの回復と背中合わせにある。


【キーワード5】 北陸新幹線の開業

2015年は引き続き、国内旅行が活況を呈する。もっともホットな話題は、3月14日の北陸新幹線開業である。東京と長野・金沢、そして大阪がつながり、かつインバウンドの新たな観光ルート・昇龍道で中京圏とも結ばれるなど、開業を機に露出も増えて、集客が著しくなることが予想される。和倉への観光列車もお目見えし、富山には三井アウトレットパーク 北陸小矢部が開業予定で、広域発展していく気配にある。


【キーワード6】 高野山 開創1200年 

周年で注目されるのは、高野山 開創1200年である。訪日客にも人気が高い世界遺産・高野山へのアクセスで便利な大阪は、USJハリーポッター人気が衰える気配がなく、大阪市内の客室不足や価格高騰が懸念される。和歌山・南紀白浜や兵庫・有馬などからのアプローチ増が今後、見込まれそうだ。

昨年、都市型観光で脚光を浴びたあべのハルカスに続いて、2015年には名古屋駅前に大名古屋ビルヂングをはじめ3つの新ビルの開業が予定されている。そして、セントレア中部国際空港が開港10周年と、名古屋周辺も脚光を浴びるであろう。


【キーワード7】 国内の世界遺産で新たな動き

大阪以西では、平成の大改修を済ませた姫路城が、白鷺城の異名も麗しく今春、一般公開を再開する。さらに6月には、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」が、ユネスコ世界遺産に登録されるか否かが決定する。筆者ゆかりの地・岩手県釜石の橋野高炉も含まれており、被災地に明るい話題を期待する。


【キーワード8】 東北で続く新規開業

被災地・釜石では今春、JR東日本系のホテル フォルクローロ三陸釜石が開業の予定(2014年11月20日筆者撮影)

その被災地は、ホテルや商業施設等の新規開業がなおも続いている。今春には、JR東日本系のホテル フォルクローロ三陸釜石が開業予定で、三陸被災地の交流拠点をめざすという。今後の被災地観光におけるヒトの流れの変化、地の利を活かしたJRの今後の動向が気になるところだ。


【キーワード9】 沖縄の離島人気 

年始から好調な沖縄は、離島人気が高まりをみせている。すでに新石垣空港は容量をオーバーしており、本島経由も含めた導線の整備が急がれている。先の知事選ならびに解散総選挙で、辺野古移設反対の陣営が優勢を極めた。今後の基地問題の行方や観光への影響が気になる。また、沖縄観光における夜消費や理美容消費への商品開発がさかんで、リピーターが見込める。


【キーワード10】 都市型観光への期待 

都市型観光を牽引する東京は、ディズニーリゾートも含め、さらなる集客が期待できる。三菱地所の大丸有(大手町・丸の内・有楽町)に、三井不動産の日本橋再開発、さらに新宿コマ劇場跡地の再開発もあって、訪日客に人気の新宿周辺、ゴールデン街やロボットレストラン等、観光における夜消費の横綱に新宿が台頭する。


【キーワード11】 訪日旅行のさらなる追い風

インバウンドビジネスが隆盛の今、アウトバウンドや国内旅行の専門性と実力が問われるのが2015年だ

2014年、1300万人超えを果たした急成長のインバウンド市場。今年は、訪日査証のさらなる緩和が予定されるなど、追い風続きとなるであろう。昨年暮れの衆議院解散総選挙で自民党が圧勝して、第3次安倍政権で幕を開けた2015年は、アベノミクス第三の矢・成長戦略の実現に向けた取り組みが、いっそう加速することが予測される。2030年3000万人が、政府ならびに産業界の大本命であることを再確認したい。

これらに伴い、ハラル対応は外食産業、カラオケ店にも及んでおり、農水畜産業でも輸出や国内消費に認証が急がれる。また、持越しとなったIR統合型リゾート・通称カジノ法案が、具体化されそうな気配だ。

2020年の東京五輪へ向けて、千載一遇のチャンスを手にできるかどうかが今、多くの人の関心を呼んでいる。その際たるところに訪日観光がある。


【キーワード12】 地域

個人旅行の高まりから、まち歩きの着地型旅行商品の造成が急がれる(「那覇まちま~い」と守礼門)

自治体の飛び地連携が加速しそうだ。全国津々ある地方空港の一部にLCC国内線が飛来を始め、優勝劣敗が色濃い。そのため、飛び地での連携が欠かせなくなっていることが背景にある。

また、着地型旅行商品―「長崎さるく」や「大阪あそ歩」、「弘前感交劇場」「那覇まちま~い」等―開発が進む地域と、そうでない地域との格差も生じている。収益性や担い手づくりなど課題はあるものの、地域発の商品造成が今後は欠かせない。スマートフォンからの流入に対応できうるウェブ整備も急務となろう。

地域における観光消費でみると、インバウンドが地方にも商機をもたらしている。昨年秋の免税改正で、ショッピングツーリズムが隆盛を帯び始めたからだ。すでに沖縄では、訪日客の買い物需要取り込みのために「ジャパンショッピングフェスティバル」を開催中。また、2015年は三井アウトレットパーク、軽井沢プリンス・ショッピングプラザが、いずれも開業20周年を迎える記念の年で、さまざまなイベントを予定しており、観光商業施設としての成熟をみせ始めている。


▼旅行会社の2015年展望は?

「幸運の女神には前髪しかない」

無から有を生むのが旅行業の特性でありポテンシャルである。これだけ観光産業が注目を浴びる時代を迎えながら、旅行会社の倒産件数は減る気配がないのはなぜなのか。異業種の人たちから筆者自身、よく問われる質問でもある。

電話一本と机とで簡単に起業がかなう業種ではあるが、代理や媒介にとどまっていては事業の展望は開けない。H.I.S.がANAセールスと手を組みインバウンド市場を狙う。JTBが海外拠点を構築させて“際際”でビジネス展開しようと挑む。こうした動きが何を意味しているのかを真剣に捉え、学びをして、ときには事業転換や新規開拓をはかる必要がある。

筆者の座右の銘である「幸運の女神には前髪しかない(※)」こそが、全国1万社ある旅行会社へ贈る2015年、最大のキーワードだ。大きくチャンスを掴む1年にしたい。

※チャンス(幸運の女神)は向こうからやってきている。スタンディングのよいときでなければ、そのチャンスを掴むことはできない。そして、あっという間に女神は通り過ぎてしまい、掴もうとしても彼女の後ろ髪はない。

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