宿泊施設のクチコミ管理・分析の世界大手TrustYou(トラストユー)。宿泊客のクチコミやレビューを、集客と収益向上に活かすデータとして根付かせた同社が2025年に新たな事業軸「ホスピタリティAI」を打ち出し、グローバル市場で提供を開始した。2026年からは、いよいよ日本での展開を開始する。
「クチコミデータ×AI」で、宿泊施設は何ができるようになり、どんなメリットが得られるのか? クチコミを起点に、宿泊業界の中核的なプラットフォームとなることを目指す彼らが描く未来図を日本法人の代表取締役、大槻久慶氏に聞いてきた。
施設と宿泊客とのコミュニケーション不全
トラストユーは、ホスピタリティ業界向けクチコミ管理の先駆け的な企業だ。2008年にドイツで創業し、現在では大手ホテルグループを含む150社以上のブランド、10万人以上のホスピタリティ従事者に利用されるグローバルプラットフォームへと成長。その中で日本市場は、ホテルや旅館などの導入施設数が2000を超えており、重要な位置付けにある。
2015年に日本支社を設立後、日本企業の傘下で事業運営をおこなっていた時期があるが、2023年に創業者兼CEOのベンジャミン・ヨスト氏がマネジメント・バイアウト(MBO)で経営権を取得。コロナ禍で打撃を受けていた宿泊産業の回復に向け、同社のプラットフォームを役立てたい思いがあったという。
背景にあるのが、宿泊産業が抱える構造的な課題だ。大槻氏は「深刻な人手不足に加え、デジタル活用が道半ば。ゲストとのコミュニケーションの継続性に欠ける。この状況に、大きな課題を感じていた」と話す。
トラストユー代表取締役 大槻久慶氏継続性に欠けるとは、どのようなことか。「例えば、ホテルが予約確認メールを送ることは多いが、ゲストが追加で確認したいことがあっても、即座にやり取りできる体制を整えている施設は少ない。ホテル側のメールアドレスが返信不可となりやすい状況に、ゲストは不便やストレスを感じている」(大槻氏)。
おもてなしに尽力する宿泊施設が、人手不足や多忙さゆえにゲスト対応を断ち切らざるを得ない。この矛盾を解消するために同社が打ち出したのが、クチコミ管理という従来の事業の軸を大きく拡充した「ホスピタリティAI」だ。
これまで培ってきた膨大なクチコミ分析の知見に、最新のAI技術を掛け合わせる。単なる評価の集計にとどまらず、現場の業務効率化やサービス改善にも活用し、ゲストとの対話を向上させる。目指すのは、ゲストの心を映すクチコミを最適なコミュニケーションに生かした“Always Reply”の世界だ。「この転換こそが、人手不足の難局を乗り越え、現場の業務を最適化し、ゲストに喜ばれるおもてなしと収益向上を実現するカギになる」と大槻氏は力を込める。
AI活用のカギは、情報の9割を握る外部データ
では、トラストユーはどのように、ゲストのストレスを解消し、宿泊施設の利益を高めるのか。武器はもちろん、同社が全世界で蓄積してきたクチコミデータの圧倒的な量と質、その活用技術だ。
同社では、宿泊施設に関する情報を2つの視点で分類する。1つは宿泊施設の館内アンケートや予約情報といった「プライベートナレッジ(内部情報)」。もう一つが、施設側が公式サイトなどで発信している施設情報や、OTAやレビューサイトなどに寄せられる体験談などの「パブリックナレッジ(外部情報)」、いわゆるクチコミだ。
「消費者がホテルを認識する情報の8~9割は、外部のクチコミで構成されており、施設側がコントロールできるプライベートナレッジはわずか1〜2割。当社は、最大9割に及ぶパブリックナレッジを多様なテーマで整理し、活用可能な状態にするプラットフォーマーと自負している。当社のアンケート機能を利用することで、プライベートナレッジも含めた最大限のデータ活用が可能になる」(大槻氏)。
トラストユーの「ホスピタリティAI」が創る世界プライベートナレッジと外部評価であるパブリックナレッジを掛け合わせた基盤データこそが、滞在ゲストから問い合わせ段階の潜在顧客まで、適時・適切なコミュニケーションを実現する同社の「ホスピタリティAI」の強みとなっている。
「ホスピタリティAI」では「AIエージェント」で最適な“Always Reply”を実現
クチコミ×AIの価値を発揮する3つの柱
同社の「ホスピタリティAI」は、どのように業務で活用できるのか。「エクスペリエンス(CXP)」「データ(CDP)」「AIエージェント」という3つのサービスで、顧客体験の向上を支援している。
1. 顧客体験を高める知見を可視化:カスタマー・エクスペリエンス・プラットフォーム(CXP)
1つ目のCXPは、従来、トラストユーが提供してきたクチコミ管理を進化させたプラットフォームだ。期待を超える顧客体験の実現に向け、クチコミから自施設の立ち位置や顧客の満足・不満要因、評価に影響する要因を特定し、経営や運営における意思決定や業務改善に活用できる。そのための様々な機能を用意している。
「支配人らが膨大なクチコミを一つひとつ読み込み、時間をかけて判断していた作業を、CXPに実装した『サマリーAI』を活用すれば、AIが自動要約し、次に打つべき改善アクションへの示唆を短時間で提供してくれる。さらに『レスポンスAI』を使用することで、各施設の個性を保った形の自動返信まで、クリック一つで完了する」(大槻氏)。
2. 内外のデータを統合・分析:カスタマー・データ・プラットフォーム(CDP)
2つ目のCDPは、今回のサービス拡充の要であり、トラストユーの強みを最大化するプラットフォームだ。PMS(ホテル管理システム)、予約エンジン、マーケティングツールなどで分断されていた顧客データを一元管理・分析し、ゲストの真の姿やニーズを理解するための基盤となる。
これにより、導入施設にとって“最も成果を生みやすい”ベストな顧客像「ゴールデンプロフィール」を作成できる。「これを踏まえて、特定のオーディエンス(顧客層)を構築し、ターゲットを絞ったハイパーパーソナライゼーション(超個別化)での集客の仕掛けから通知メッセージの自動化、商品・サービス設計なども可能だ」(大槻氏)
大槻氏はさらに「当社のCDPは、各宿泊施設の『プライベートナレッジ』と、当社の強みである『パブリックナレッジ』の両面からゲストを捉えることで、コミュニケーションの精度が飛躍的に高まる」と強調する。
分断されてしまったデータをCDPで一元管理3. チャットボットを超える「代理人」:AIエージェント
3つ目のAIエージェントは、これらの膨大なデータを対話に変える役割を果たす。「従来のチャットボットは、施設側が用意した定型文で回答する“辞書”のような存在だった。しかし、当社のAIエージェントは、クチコミとゲストの滞在経験などのデータをもとに応答するため、提案型の対話ができるのが強みだ」(大槻氏)。
例えば、滞在中のゲストから「レイトチェックアウトはできますか?」と質問があった場合には、ゲストデータをもとに「〇〇様はレイトチェックアウトの対象です。チェックアウトの時間を午後2時に変更いたしました」と、予約内容とニーズに合う対応を済ませた上で、自然な回答を提示する。
さらに、潜在顧客から「プールはありますか?」とウェブサイト上で問い合わせがあった場合、その人の閲覧内容から推察できる顧客像によるクチコミデータを瞬時に抽出。それを基盤に「はい、あります。ご家族連れのお客様から非常に評価が高く、特にお子様にはウォータースライダーが大人気です」といった回答も可能だ。
このように、静的な事実の情報に、クチコミという動的な体験を掛け合わせて文脈を理解することで、AIエージェントは単なる自動応答ツールから宿泊施設とゲストとの間にある壁を打ち破る、真の「エージェント(代理人)」として機能することができる。
これら3つのサービスは、全てまとめた「ホスピタリティAI」として利用することで、目的に応じたゲストサービスを24時間365日リアルタイムで大規模に展開できる。もちろん、個別導入にも対応している。
AIエージェントを活用した応答例。問い合わせに即時、かつ、潜在的なニーズに沿った返信をする。返信コメントに予約の入り口をつけ、シームレスな案内も可能
日本支社10周年、テクノロジーが変える未来
2025年、トラストユー日本支社は設立10周年という大きな節目を迎えた。クチコミ管理のパイオニアとして歩んできた同社は、AI開発のテック企業としての技術力にも磨きをかけ、宿泊産業のインフラとして進化を遂げようとしている。
大槻氏は最後に「当社の役割は、AIで人を置き換えることではない」と強調。その上で、同社の方針を次のように語った。
「AIがゲストのインサイトが詰まったクチコミデータの分析や定型的な対応を担うことで、宿泊施設の内部の知見だけでは行き届かなかった細部までおもてなしを徹底し、潜在顧客の離脱を防いで、ゲストのエクスペリエンスを高める。そして、AIから現場のスタッフへとゲストをシームレスに引き継ぎ、人にしかできないおもてなしに集中できる時間を取り戻していく。テクノロジーの力で、人と人との温かな触れ合いを最大化させるサポートをするのが、我々トラストユーの使命だ」と締めくくった。
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対応サービス:ホスピタリティAI
※カスタマー・エクスペリエンス・プラットフォーム(CXP)、カスタマー・データ・プラットフォーム(CDP)、AIエージェントの各サービスも、上記URLから確認できます
記事:トラベルボイス企画部




