政府の観光ビッグデータ「RESAS」で何ができるのか? 来訪者の出発地点・周遊パターン・消費など4自治体の事例を聞いてきた

経済産業省と内閣官房「まち・ひと・しごと創生本部事務局」が運営しているRESAS(地域経済分析システム)。2015年4月のサービス開始から1年が経ち、すでにRESASでのデータ分析を観光戦略の策定に活用している地方もある。ツーリズムEXPOジャパン2016の業界日に、展示会場のステージで発表されたRESASの現状と自治体の活用状況のなかから、いくつかの事例を紹介する。

RESASとは

事例の前にまず、RESASについて改めて確認したい。RESASとは国の地方創生戦略の中で、地方への情報支援の位置づけで構築されたもの。公式の行政データと民間のデータを活用し、全自治体(47都道府県・1750市町村)それぞれの産業や地域の経済状況を、必要な内容に応じてわかりやすく可視化するシステムだ。

現在、活用できるデータは8億件、その3分の1が民間からの提供だ。また、データを加工して表示する「マップ」は7カテゴリーの計53マップに及ぶ。観光も、7つのカテゴリーのうちの1つに含まれており、11のマップが用意されている。観光戦略の計画では、観光以外のマップからも組み合わせ、活用しているケースもあるといい、観光のすそ野の広さをうかがわせる。

登壇した経済産業省地域経済産業調査室長/内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局企画官の田岡卓晃氏は、「世の中にある官民のデータを絵にして、わかりやすく提供できるのが特長」と紹介。「地方自治体の政策意思決定支援ツール」として、「勘と経験と思い込み」ではなく「データに基づく政策意思決定」を支援し、地方創生の各種交付金の目標設定やPDCAサイクルに欠かせないツールになっているという。

田岡氏は「データを使い倒して分析してほしい。地域戦略のイノベーションがここから起きることを期待している」と、積極的な利用を呼び掛け、事例発表を行なった。

事例① 島根県松江市「松江城の来訪者の出発地点に関する分析」

島根県松江市は、松江城を核にした効果的なプロモーション施策を実施している。そこでRESASでは、松江市と同様に観光地に城を有する長野県松本市や滋賀県彦根市、愛知県犬山市、兵庫県姫路市の4都市と来訪者の出発地点を比較した。

すると、松江市は他の都市に比べると、中国地方や関西地方、関東地方と、幅広い地域からの来訪があった。しかし、東海地方からの来訪は見られず、誘客が遅れているエリアであることが視認できた。松江市では2015年に愛知県大口町と姉妹都市提携を行なっていたほか、航空路線で出雲/名古屋線も開設されたことから、東海地方からの誘客に力を入れる方針を立てたという。

発表資料より

事例② 北海道帯広市「外国人観光客の周遊パターンに関する分析」

帯広市ではインバウンド誘客の改善点の把握と対応策の検討を目的に、訪日外国人の行動分析をRESASで実施した。北海道は訪日外国人の人気デスティネーションであるものの、行き先は札幌や函館、小樽に集中しており、帯広市を含む道東への誘客が課題となっている。

使用したのはナビタイムのインバウンドデータ。サンプル数は少ないものの、旅行者の動きを把握することはできるという。分析の結果、訪日外国人は人気の3都市から道東全体にも分散して訪れていることが判明。道東では、近隣都市との連携による周遊促進の重要性が確認された。

発表資料より

事例③ 熊本県阿蘇市「熊本地震の観光への影響について」

2016年4月に発生した熊本地震の影響について調査。熊本県阿蘇市の旅行目的地については、ナビタイムジャパンがRESASに提供している「目的地検索データ」を利用。車での訪問の場合に目的地として検索されている場所を表示するもので、阿蘇市では「阿蘇山」「大観峰」「阿蘇カドリー・ドミニオン」の順になっている。

また、4月1日~8月31日の宿泊実績も分析。これはRESASではなく経済産業省が別に立ち上げている「観光予報プラットフォーム」の宿泊予約状況データを利用したもの。これによると、地震発生以降は前年の宿泊者数を下回っているが、7月中旬以降は大幅に増加。国の「ふっこう割」施策の効果が見てとれる。田岡氏はこのように、RESASとともにその他のデータも組み合わせて分析に利用することも提案した。

発表資料より

事例④ 山形県「外国人の消費動向について」

山形県の外国人旅行者の消費動向を調べたところ、訪問者の数では台湾が1万5493人で最多だが、消費額では訪問者数816人のシンガポールが8013万8812円で最多となった。消費内訳をみると、スポーツ商品の割合が大きいことが判明。スキー用具の購入が考えられるとし、シンガポールを含むASEAN諸国はスキーの誘客が効果的と確認された。

発表資料より

新たなマップ、分析手法も追加

RESASでは今後も掲載データを追加していくとともに、「まちづくり」「医療・介護」「地域経済循環」など、新たなマップも順次追加。マップを重ね合わせる新しい分析手法の提供や、利用者のニーズに応じた画面設計、情報共有機能なども付加していく。

また、RESASを活用するためのEラーニングシステムや、活用の習熟度を測るマスター制度も用意する。このほか、セミナーや政策立案ワークショップ、政策アイデアコンテストの開催など、さらなる普及に向けた活動も強化する。

なお、2015年に応募した政策アイデアコンテストには907件の応募があり、高校生以下の応募も206件もあった。そのうち、地方創生担当大臣賞に選出された福島市立岳陽中学校の政策アイデアには、地方創生加速化交付金の対象に採択され910万円が交付されたという。

関連記事>>

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。