航空データから読み解く「インバウンドの課題」とは? 足りない航空座席量から国際線誘致の競合までデータ専門企業の見解を聞いてきた

航空関連データを事業者向けに提供する英拠点OAG社は、ツーリズムEXPOジャパン2018会場内で「航空関連データから見るインバウンドトラベル」と題したセミナーを開催した。航空関連データに基づいた訪日外国人旅行者4000万人時代に向け、航空座席の供給数などのデータから読み解くことができる課題や戦略、マーケティング手法が語られた。

訪日客4000 万人には、年間800万席の追加が必要

島国である日本のインバウンド市場は国際線ネットワークに大きく左右される。ここ数年、東アジアからのLCCの就航が相次いだことで日本発着の国際線ネットワークは大きく拡大した。OAGのデータによると、2017年の日本発着国際線の供給座席数は約5630万席。それに対して、総旅客数は4658 万人。差し引き約972万席余裕があったことになる。これに年間200万人ほど言われる日本経由の旅客数をさらに差し引くと、余裕は約763万席だ。

しかし、日本が訪日外国人4000万人を目指すなか、この供給量では到底目標を達成できないのは明白だ。さらには、8000万人という目標も控えている。

2017年の訪日外国人数は約2869万人だが、4000万人の目標には1131万人の上積みが必要になる。余裕分の763万席では満たされず、さらに、2017年の日本からのアウトバウンド需要1789万人をそのまま加えると、不足分はさらに増えることになる。

データを解説したOAGセールスマネージャーの山本洋志氏は、2017年から2018年にかけて総座席数は約340万席増えたが、「今後のアウトバウンドの伸びを考慮すると、訪日外国人4000万人の目標のためには、さらに800万席は必要になってくる」と説明。そのうえで、「航空会社はインだけでなくアウトの需要もなければ撤退する」とし、インバウンド需要を受け入れるための航空路線網の拡大には、アウトバウンドの需要拡大も重要との見解を示した。

セミナーのプレゼンテーションより

国際線誘致で中国は強力な競合相手

また、山本氏は、日本路線の拡大には隣国の旅行需要も関係してくる点にも言及した。たとえば、日本の国内線も含めた定期便総座席数は2013年の1億7900万座席から2018年は約2500万座席増えて2億365万座席になったが、一方、中国は2013年の4億8500座席から2018年は7億2270万座席に増加。その増加数は、実に2億3800万座席、1日あたり65万7000座席ずつ増加するペースだという。山本氏は「中国はまだ伸びる。国際線誘致において日本と中国との競合はさらに激しくなる」との見通しを示した。

中国からの国際線では、東南アジア路線での座席供給が増大しており、たとえば、タイ路線での座席供給は2014年の517万座席から2018年には1418万座席とおよそ3倍に拡大。これは日本路線の1152 万座席よりも多い。このデータから、山本氏は「中国人誘致にあたっては、日本と東南アジアとは競合関係にある」と説明した。

また、山本氏は日本発着国際線で日系航空会社のシェアは30%ほどに過ぎないことにも言及。これは、中国の約60%、韓国の60%以上と比較するとかなり低く、「外航は出発国の経済状況や社会情勢によって路線の維持や拡大が変わってくるため、日本側ではコントロールできない」ことから、「リスク」として指摘した。また、日本の全96空港のうち国際線就航を認めているのは26空港しかなく、これも85空港のうち75空港で認めている韓国と比較するとかなり少なく、「地方の国際化に大きな課題」と述べた。

OAGセールスマネージャーの山本洋志氏

航空関連データでマーケット動向の可視化を

こうした日本を取り巻く航空環境を踏まえたうえで、インバウンド誘致の施策に向けて3種類の航空データの活用をして、マーケット動向を可視化することが大切と強調した。そのうち、便数や総座席数(キャパシティ)を表す「スケジュールデータ」では、市場規模や航空会社の現状が確認できるだけでなく、市場の成長あるいは後退の兆候も可視化できることから、インバウンドマーケティングに有効とする。

たとえば、フルサービスキャリア(FSC)とLCCでは、現地消費額も含めて旅行者の質が異なることから、各空港のスケジュールデータから誘致ターゲティングの設定や課題にも役立つという。

市場の需要を示す「マーケットデータ」では、経由も含めた旅行者の流動や国籍を可視化。たとえば、2017年のデータによると、関西空港への出発空港で最もシェアが高いのが仁川空港で全体の22.7%。ついで香港14.3%、台北12.4%、上海10.7%と続く。また、日本以外で発券された日系航空会社の成田/シンガポール線の旅客流動のうち、札幌を最終目的地とする割合が全体の8.4%もあり、成田(64.9%)に次いで2位になっていることから、成田経由で札幌に飛んでいる需要が多いことを可視化していると紹介した。

乗り換えデータを示す「コネクションデータ」を活用すれば、マーケットのポテンシャルを最大化することが可能と説明。たとえば、今年12月からキャセイドラゴン航空が香港/徳島線に冬ダイヤ限定で就航するが、この路線に焦点を当てたインバウンドマーケティングを行う場合、発地の香港だけでなく、香港に多頻度で接続するバンコク、サイゴン、ジャカルタなどのコネクションデータを分析すれば、新しい需要を開拓できる可能性があると指摘した。

山本氏は、「さまざまな角度の航空データをベースとして、海外からの流動調査を行うことでターゲット市場を選定。さらに、その市場からの経路やキャパシティのデータを分析することで、より具体的なインバウンドマーケティングプランの作成が可能になる」と強調した。

取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹

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