旅行業にまつわる「21の不都合な真実」とは? 観光産業の米・有力メディア「スキフト」代表が自ら整理してみた【外電コラム】

私が旅行業に関心を持つようになったのは2010年秋。当初は、消費者向けの旅行スタートアップを考えていた。そのころ、初めて起業した会社の売却を終え、夏から2年間の長期休暇に入って旅をしていた――。

※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された同社CEO兼共同創設者ラファト・アリ(Rafat Ali)氏による英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

ちょうどiPadが世の中に登場した時期だったので、タッチパネルのプラットフォーム時代が到来したら、ガイドブックやトラベルメディアはどんな風に進化していくのだろうか、と興味津々だった。当時の私のプランは実現には至らず、予想されていたほどタブレットが大活躍する状況にもなっていないが、こうしたことを契機に、私は旅行業界に関する情報誌や歴史の本を読み漁るようになり、旅行業に精通した人々や投資家にも数多く会い、すっかり旅行業にのめり込んでいった。そして2012年秋、とうとう「スキフト(Skift)」を立ち上げた。

それから6年。この間、私自身も、共同創業者のジェイソン・クランペットや初代編集長デニス・シャールと一緒に創業したスキフトも多くを学んできた。新たに得た知見も多いが、この業界に携わる以前から感じていた通りだった、という部分も少なくない。

自信を得ることもあれば、逆に、力不足を思い知ること、あるいはがっかりすることなど、様々な学びや気付きを経験してきた。

ラファト・アリ氏:スキフトより

私やスキフトが旅行業界について感じてきたことを特にまとめるチャンスもないまま、現在に至るが、ちょうどよい機会だ。旅行業界に入ってからの6年間で学んだこと、あるいは入る前から抱いていた思いを改めて確信したことについて、以下に挙げてみたい。

  • 1. 「旅行は世界最大の産業。その自覚をもって行動しよう」という呼びかけは、裏を返せば、これまで旅行業界では誰もそんな風に考えていなかった、ということ。もっと真摯に考える必要がある。

 

  • 2. 旅行市場は大きな成長をみる。業界における過去や未来の取り組みがどうであれ、旅行業界は存在感を増していく。

 

  • 3. 新たな変革が起きると、当然ながら旅行業界側はこれに抵抗する。それでも変わらざるを得ない状況になってくると(例えばエアビーアンドビーやウーバーの台頭)、我々が変化を促したのだ、と言い出す。

 

  • 4. スタートアップだからといって、旅行市場でイノベーションを体現しているとは限らず、むしろ真逆に進むような事例もある。すでに旅行業界で、あるいは周辺の関連分野で健闘している小規模ビジネスにこそ、真のイノベーション担い手が多い。

 

  • 5. 業界の協会組織というものは、良く言えば、バランスを保つ番人のような存在。悪く言えば、まったくの役立たずで、特に新しい旅行ビジネスを立ち上げる人には無益だ。

 

  • 6. 旅行業界でコンサルタントを生業とする人々は、変化を好まないくせに、お金になると思えば大ごとだと騒ぎたてる。頭文字をくっつけた専門用語に騒ぎ過ぎるのも、この業界の特徴。例えば「MICE」はその典型例。ちゃんと意味を調べて、だまされないこと。

 

  • 7. 旅行マーケティングの手法には限りがある。デスティネーション、ホテル、航空会社、予約サイトなどのマーケティングでは、お互いに重なりあう部分が出てくる。これはブラインドテスト(ブランド名や企業名を伏せておこなうテスト)でも実証されている。

 

  • 8. 新しい体験をする旅、人生観が変わるような旅、という嗜好は昔からずっとある。そもそも観光目的の旅が広まったのは、所得に余裕が出てきた欧州の中流クラスが、こうした体験を望むようになったから。最新トレンドのように扱われることに違和感アリ。

 

  • 9. 航空会社は、旅行業界の中で、もっとも狭量で縄張り意識が強い。経営幹部が公の場で話すことは建前ばかり。本音では、他人のことなど完全無視だ。

 

  • 10. データは旅行業のあちこちに散乱し、漏れているが、誰も手立てがない。「パーソナライゼーション」というコトバは大人気だが、画期的な取り組みはない。ロイヤルティ・プログラムは、旅行ブランドに対するロイヤルティ醸成のせいぜい最低ライン。

 

  • 11. 旅行業界は、いまだに白人男性文化がまん延している上、これを変えようという気運も乏しい。

 

  • 12. 私が旅行業に携わるようになってまず驚愕したのは、米国系企業の経営トップは、圧倒的に共和党支持者だったことだ。旅行のような業種では、進歩的な改革派が多いと予想していた。ただし現在の大ボスには、彼らもかなりの嫌悪感を抱いているようだ。

 

  • 13. 旅行業界の中で、サステナブル・トラベルについて真剣に考えている人は少数派、当の旅行者にいたっては、ほぼ皆無だ。グリーンな行動や環境へのケアを語ることで、自尊心が心地よく満たされるが、やがて日常の雑事に追われて忘れてしまう。

 

  • 14. 旅行代理店は、今も特定のマーケットでは必要とされている。利幅が大きく、活況を呈しているところ、つまりラグジュアリートラベラー市場だ。

 

  • 15. 旅行業界では、色々な議論はあるものの、地球の西半球を除いた「その他」エリアで成長拡大している旅行マーケットへの対応が遅れている。

 

  • 16. 国内旅行に、誰も注目していない。そのせいで、各地域の旅行業エコシステムを支える幾多の中小企業にとって、ビジネス機会がなかなか得られない状況となっている。

 

  • 17. 政治家は、旅行産業や政策にほとんど関心がない。例えば選挙キャンペーン中に、旅行業について取り上げて演説するのを見たことがあるだろうか。国家のリーダーや地方自治体のトップは、旅行業による雇用創出や、経済効果に気づいていない。

 

  • 18. 査証(ビザ)の自由化―ビザの廃止、あるいは到着ビザ、電子ビザへの移行は、それだけで旅行需要を最大限に加速する効果がある。断言する。

 

  • 19. 旅行業界向け出版物は、役に立たないものばかり。一般向けの旅行雑誌は、内容のほとんどが宣伝で、広告クライアントを喜ばせるためのもの。旅行者は見向きもしない。

 

  • 20. 一部例外もあるが、旅行ホスピタリティ系の学校では、未来ある若者に、昔話みたいなトレーニングばかりをおこなう。今の旅行業界や関連業種で必要なことをなぜ教えないのか。学校のトップや教授、講師陣が、旅行ビジネスの最新動向や将来について、生徒以上に無知であることも少なくない。

 

  • 21. 「ローカルみたいに暮らす」なんて、旅行マーケターが作り出した詐欺まがいの幻想だ。我々は皆、観光客だ。一人ひとりが、自分は観光客だと自覚し、言動に責任を持つ方が、旅行業界にとっても、ずっとやりやすい。

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

※オリジナル記事:The 21 Uncomfortable Truths That I Have Learned About the Travel Industry

著者:スキフトCEO兼共同創設者 ラファト・アリ(Rafat Ali)氏

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