訪日中国人に最適な買い物体験を提供するアリババの新サービス、日本を最優先する「フリギー購(ゴー)」のビジネスモデルを聞いてきた

ビックカメラのフリギー購画面(報道資料より)

中国アリババグループのオンライン旅行プラットフォーム「Fliggy (フリギー)」は、2019年3月に「フリギー購(フリギーゴー)」のサービスを開始した。「中国人旅行者に最適な買い物体験を提供すること」をミッションに掲げているECサービス。すでに日本企業は数社も参画している。訪日中国人旅行者の増加が続くなか、オンライン旅行プラットフォームがECサービスを始めた背景はどこにあるのか。今後目指すところは。アリババグループ・フリギー・オペレーション・ディレクターの沈伯雷氏に聞いてみた。

巨大な中国人ショッピングマーケット、依然として旺盛なニーズ

2018年の中国人海外旅行者は約1.5億人。2021年には約1.9億人に増加すると見込まれている。2018年の訪日中国人旅行者は前年比13.9%増の838万人と好調だが、中国人海外旅行者の総人数に占める割合は5.5%にしか過ぎない。今後、分母が拡大すれば、それに合わせて訪日旅行者も増えていくのは間違いない。直近でも、フリギーのデータによると、2019年の国慶節(10月1日〜7日)に日本を訪れた中国人旅行者は前年同期比22%も増えた。

訪日中国旅行者の増加ともに、現地消費額も伸びており、日本政府観光局(JNTO)の調査では、2018年の訪日中国人の現地消費額は1兆5450億円で、全マーケットのなかでも飛び抜けている。中国人旅行者のトレンドとして「モノ消費」から「コト消費」へ変化しており、いわゆる「爆買い」は落ち着いたと言われているが、フリギーによると、2018年、中国人海外旅行者の買い物消費は旅行消費額全体の約32%を占めているという。

買い物環境の改善で越境ECに大きな潜在性

沈氏は「中国人旅行者は、新しい体験やローカルなライフスタイルを求めているが、依然として買い物ニーズも旺盛で多様化している」と言う。まず、フリギーが「フリギー購」を立ち上げたのは、こうした消費者トレンドがある。

中国国内では、アリババグループのデジタルエコノミーはここ数年で急成長しており、その月間モバイルアクティブコンシュマー数は7億人以上と桁違いだ。一方で、越境ECも伸びてはいるものの、「海外では、まだオフラインの実店舗での買い物がほとんどで、オンラインでの浸透率は限られている」(沈氏)という背景もある。

また、中国人旅行者の海外での買い物体験には、多くの改善の余地があるという。沈氏は「たとえば、言葉の問題で商品の説明が分からない。店舗に行っても目当ての商品が見つからない。買ったものを持ち帰るのが大変。十分な買い物の時間が取れないなど、快適に買い物ができる環境が求められている」と説明する。

ミッションとして掲げる「最適な買い物体験を提供する」とは、旅行予約と同じプラットフォーム上でワンストップで買い物サービスも提供することだ。フリギー購は、アリババのECプラットフォームTmall(天猫)とは異なり、ターゲットカスタマーになるのは、すでに海外旅行が決まっている中国人。「あらかじめアプリで商品を閲覧・予約し、現地に行ってから確実にその商品をピックアップしたい」ニーズに応える。

日本は最優先市場、現在3社が出店、5都市で受け取り可能

カスタマージャーニーの流れは、フリギーのトップページからフリギー購のチャネルページに入り、各店舗トップページ、商品詳細ページに進む。予約ページで商品を受け取る場所と日時を指定すると、QRコードが発行され、指定された場所で予約した商品をピックアップする。オンラインですでに「アリペイ(Alipay)」で支払でいをしているため並ぶ必要もない。

サーピス開始から半年あまりだが、フリギー購は日本を最優先市場と位置づけているという。「日本のブランドや日本製品は、中国では引き続き高く評価されているため、需要が非常に高い」と沈氏。たとえば、アリババが毎年11月に実施している「独身の日セール」の越境ECで、日本ブランドは、国・地域別流通総額ランキングで3年連続トップとなった。

現在のところフリギー購へはラオックス、ビックカメラ、三陽商会の3社が出店。7都市で利用が可能だが、そのうち日本では東京、大阪、京都、福岡、札幌の5都市と多い(ほかは杭州と香港)。予約した商品は、ラオックスが全国7店舗、ビックカメラが東京と大阪で3店舗、三陽商会が直営店「GINZA TIMELESS 8」で受け取ることが可能になっている。沈氏は「今後も日本で利用可能都市や免税店を中心に出店ブランド・企業を増やしていく」と意欲を示す。現在、中国消費者の期待に応えるため、フェーズ1としてフリギーから声掛けされた企業のみがフリギー購に出店することが可能になっている。

アリババグループ経済圏のオムニチャネルマーケティング、出店者にも大きなメリット

一方、出店者サイドにも大きなメリットがある。アリババグループはインバウンドビジネスにおいて、旅行者のタビマエ、タビナカ、タビアトまでの消費活動において一貫したサービス提供。中国では10億人以上のアクティブユーザーを持つモバイル決済サービス「アリペイ」、7億人以上のアクティブユーザーを持つ小売プラットフォームといったアリババグループ経済圏のさまざまなサービスを通じて、オムニチャネルで潜在的消費者にアプローチすることが可能だ。

これによって、「最大の訪日市場である中国からの旅行者と直接的かつ効率的にコミュニケーションすることが可能になり、コンバージョン率の向上も期待できる」(沈氏)。フリギーによると、ある日本の顧客企業では、フリギー購の訪問ユーザー数が前月比で45%増、リピート購入率は30%以上という実績がすでに出ているという。

「フリギー購は、オンラインとオフラインそしてタビマエとタビナカをシームレスに融合した旅行体験を訪日中国人観光客に提供していく」と沈氏。出店者に対しては、「アリババグループのエコシステムを最大限に活かし、精度の高いマーケティング支援、在庫管理、店舗運営、モバイル決済をパッケージしたソリューションを提供していく」方針だ。

フリギー購は今年から本格的にサービスを開始したばかり。今年は成功モデルの構築に取り組み、来年から規模を拡大していき、2022年からはさらにグローバルに展開していく計画だ。

トラベルジャーナリスト 山田友樹

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