世界が注目する日本の航空旅行の今とこれから、東京五輪はインバウンド復活の起爆剤になるか?

世界の航空データ分析を提供しているOAGは、中部国際空港会社営業推進本部グループリーダーの山口健太郎氏を招き、日本の航空市場の回復具合や来年に延期された東京オリンピック・パラリンピックへの影響について議論するウェビナーを開催した。議論は、オリパラ開催や航空旅行の復活のために必要なことなど、広域にわたった。その内容をレポートする。

オリパラ開催のカギは空港のPCR検査体制強化と国民の理解

OAGシニア・アナリストのジョン・グラント氏は、今回、日本に焦点を当てた理由として、世界第3位の経済大国で国内線市場も非常に大きいこと、羽田空港の国際線増枠によって東京の国際線ネットワーク環境に変化が見られることに加えて、新型コロナウイルス以前までは、東京オリパラに向けて、インバウンド市場の拡大を積極的に進め、それに合わせて航空市場も活況を呈していたことを挙げた。

そのうえで、グラント氏は「新型コロナウイルスによって、日本政府が掲げる訪日旅行者4000万人の目標は、遠い道のりになってしまった」とし、来年に延期された東京オリパラが日本の航空・観光産業にどのようなインパクトを与えるか、山口氏に問いかけた。

山口氏は、「オリパラは、延期されたとしても観光復興のいい機会になる。オリパラ後に、インバウンド市場はまた盛り上がりを見せるのではないか」と答える一方、それには前提条件があると続けた。ひとつは、日本政府が新型コロナウイルスをしっかりとコントロールしていると世界に伝えること。そして、もうひとつは国民の理解が重要だとする。

山口氏は「世界でパンデミックの収束が見えないなか、多くの日本人は、五輪に外国人が来ることで、また国内で感染が広がるのではないかと懸念している」と日本の現在の空気感を説明。そのうえで、必要なことは空港でのPCR検査体制をさらに拡充し、水際対策を強化することが必要だと強調し、主要国際空港だけでなく、同様の措置を福岡、札幌などにも広げていく重要性を語った。

ポストコロナでLCCの存在感は増すか?

また、山口氏は7月上旬の中部国際空港の現状についても説明した。国内線は依然として前年比の半分ほどの1日40便と供給は回復しているが、需要が追いついておらず、平均搭乗率は35%~40%にとどまっているという。国際線の見通しについては、2019年の32都市394便/週のうち中国路線が14都市116便/週にのぼることから「中国線の供給と需要の復活がカギになる」との認識を示した。

このほか、中部国際空港は国内線ではジェットスター・ジャパンやエア・アジア・ジャパンがベースとしているほか、国際線でもLCCネットワークが広がっていることから、「中部にとってLCCの復活も重要」と発言。日本の場合、LCCは夜行バスと競合するが、ポストコロナでは、夜行バスの運賃が上がると見込まれ、旅行者はさらに料金に敏感になると予想されることから、「LCCの存在感が増すのではないか」との観測を示した。

グラント氏はこの点について、LCCは日本だけでなく世界でも難しい時期を迎えているとしたうえで、「日本の場合は、LCCが羽田に乗り入れられないことが大きい」と指摘した。

LCCの潜在性は高い? (ウェビナーから)航空旅行の信頼回復に向けて関係者と協力

中部国際空港会社では今年6月12日~26日かけてオンライン消費者調査を実施した。それによると、52%が「航空旅行は躊躇する」と回答。また、「空港に行くのは躊躇する」の回答が37%にものぼったことに、山口氏は「この結果はショックだった」と驚きを隠さない。その理由として最も多かった答えが「他人との距離」。いわゆるソーシャルディスタンス確保の難しさを挙げた。

現在のところ、空港での衛生管理の徹底とウィズコロナでも航空は安全というマーケティングメッセージを出すほかなく、「この不安を解消していくのはなかなか難しい」と本音を漏らす。

この点について、グラント氏は「旅行者の信頼を高めるために、旅行に関わるすべての業界が統一したメッセージを発信していくことが必要ではないか」との見解。たとえば、マスク着用も義務化しているところもあれば、お願いにとどめているところもある。また、座席についてもソーシャルディスタンス確保のために中間席を開ける航空会社もあれば、通常通りの対応のところもある、と例を挙げた。

山口氏は、コロナ禍における現在の日本は「これまでにない複雑性をもった事態」であるため、中部国際空港会社としては、航空会社だけでなく、地上交通、旅行会社など旅行に関わる組織や団体と信頼回復に向けて協業していく考えを示した。

7月にかけて世界の定期便数は回復基調

ウェビナーでは、グラント氏がOAGの最新航空データも説明。それによると、7月6日の週の世界全体の定期便数は、前年同期比55.3%減と依然として半数以下だが、5月の68.7%減、6月最終週の56%減からは回復している。最も減少率が低いのはアジアで同40.4%減。北米は同55%減、ヨーロッパも同68.4%減だが、いずれも回復基調にはある。

グラント氏によると、世界の提供座席数は7月上旬で約4750万席だが、7月末までには約6800万席にまで回復する見込みだという。

アジアの国別で見ると、日本は同39.8%減だが、5月の同47.1%減、6月最終週の同40.6%減からは改善。最も減少率が低いのはベトナムで同9.7%減と前年レベルに戻りつつあるが、香港(同91.1%減)、フィリピン(同90.1%減)、オーストラリア(同74.3%)などは依然として出口が見えない状況だ。

アジア太平洋各国における定期便数の減少率(ウェビナーより)

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