現地取材してきた「ツーリズムEXPO2020」、観光産業が復活に決起、感染予防を徹底した新時代MICEのカタチ

初めて沖縄で開催された今年のツーリズムEXPOジャパン(TEJ)。観光の復活に向けた情報発信にとどまらず、withコロナ時代に感染防止対策を徹底しながら大型イベントを成功させる大きな挑戦でもあった。コロナ発生後、BtoB商談会だけではなく、一般消費者も対象に開催する例は世界でも初めて。TEJが挑戦したニューノーマルな大型MICEを、写真で振り返る。

検温・消毒・QRコードでの入場者数管理

今年のTEJは、開催前から違いがみられた。入場者は業界日・一般日ともに、すべて完全予約制。公式サイトで事前登録した人に、QRコード付き入場者証を発行した。

会場の受付や入退場口もニューノーマルスタイルに。受付にパーテーションと消毒液が置かれているのはもちろん、会場の入口前には来場者一人一人の体温をチェックする検温ステーションを設置。その後、来場者のQRコードをスキャンし、会場内の人数管理を行なった。

今年の会場は、メインの沖縄コンベンションセンターの展示場と劇場、会議棟A・Bに加え、宜野湾市多目的運動場など宜野湾海浜公園一帯に点在する分散型。いずれの会場も入場口と退場口を分け、入退場の都度にQRコードをスキャンして、各会場内にいる人数を管理した。

会場に入る前には検温ステーションで体温チェック

人数把握のために入場レーンもわけられた

入退場時のスキャンは、ゲートで待機するスタッフが手元の端末で実施

QRコードをスキャンすると、スタッフの端末に入場者の情報が表示される

商談会はハイブリッド型に、「旅のエチケット」普及も

開会式や基調講演、フォーラムなどを行なった会場では、座席は1席空けて使用。展示会場では、昨年までのような華やかな仕掛けのブースは少ない代わりに、商談会用のテーブルに感染防止のパーテーションを設けたり、現地とつなぐリモート商談用のブースを設置するハイブリッド型の出展者もあった。

商談には、感染防止のパーテーションを配置

出展者のひとつ、長野県観光機構(長野DMO)販路・市場開拓部係長の森本忠則氏によると、初の試みでも「全く違和感がない」と話す。「オンライン商談では事前予約制をとっており、ブースでしっかりと話すことができる」と、ハイブリット型展示に手ごたえを感じていた。バイヤーからの問い合わせでは、現地の観光スポットに何があるのか、丁寧に確認する傾向が以前よりも強いといい、ニューノーマルへの対応を機に、基本に返って商品を開発しようとする姿がうかがえだ。

長野県らしいデコレーションと特産品の配布を行なう傍らで、4つのブースでオンライン商談会も実施

また、日本旅行業協会(JATA)の「Withコロナ時代の新しい旅のエチケット紹介ブース」も、今年のTEJらしい出展。業界日には、感染防止対策のソリューションの紹介や、ニューノーマルな旅行スタイルの解説が行われた。

また、GoToトラベル事務局が宿泊施設における感染防止対策の好事例をセミナー形式で説明。一般日には、観光庁の推進する「旅のエチケット」普及に向けた説明会が行われた。セミナー会場は、オープンな環境とし、感染防止対策を徹底した。

MICEガイドラインに沿って、舞台から客席まで2メートルの距離をとった入口には手指消毒や自動検温器、自動消毒液噴霧器の設置や間隔をとった座席配置など、新しい様式のセミナー会場を実現

海外旅行エリアの出展は規模縮小も強い意志

海外旅行のエリアは、コロナ禍で現地からの来日ができないなか、規模が大幅に縮小した。この状況下で出展を決めたスペイン政府観光局アドミニストレーション&プレス取材の重貴子氏は、現在、日本人の海外旅行が難しい状況にあることに理解を示した上で、「それでもスペインの観光の魅力が今も変わらずあることを、引き続き認知していただきたかった」と説明。現在、スペインでは日本人観光客を受け入れているが、出展を巡っては、日々変わる感染状況や日本市場の現状を踏まえて本国との調整も必要だった。しかし、日本オフィスでは出展の意志はコロナ発生後も変わらず、強かったという。

重氏によると、国内の旅行会社は現在、海外旅行部門を縮小する旅行会社が多く、ブースを訪れる人数は減少。ただ、商談のアポイント予約は埋まっており、その際にはやはり、現地の魅力の発見と再認識のための目的地をしっかり確認していくケースが多いという。

スペイン政府観光局のブース

このほか海外のブースでも、リアル出展に加えてリモート商談用ブースを用意していたり、リモート商談用ブースのみの出展も見られた。

タイ国政府観光庁のブース。一般日にはトゥクトゥクに乗りながらVRで疑似体験できる企画も用意コロナ禍に問われるMICEの意義

一方、バイヤー側からはハイブリット型MICEについて、リモートで済む便利さと同時に、「リアルの場に来てもらう意味を、再考しないといけない」(旅行会社団体旅行販売課長)との言葉が聞かれた。すでにリアルからオンライン開催に転換したMICEで、リモート会議や商談などをサポートするサービスを始めているが、今回、自らがリアル会場でのリモート商談会を体験し、危機感を強めたという。

リアルの場に参加する目的はそれぞれに異なるが、人が一堂に集う意義は間違いなくある。今回のツーリズムEXPOには、コロナ禍で周囲に配慮しながら観光誘致や商品販売を行なってきた観光関係者が、それぞれの「前に進めよう」という思いで集結した。将来、ウィズコロナ時代の観光を推進していく自信と前向きな機運が生まれた契機であったと振り返るときがくるのかもしれない。

一方で、積極的な誘致開始のムードになったとはいえ、感染防止対策の重要性は変わらない。観光復活への機運が高まる今こそ、観光が感染拡大の場となってしまうことは避けなければならず、観光事業者はさらなる感染防止対策を徹底することが求められる。そして、旅行者には新しい「旅のエチケット」を実践してもらえるよう、呼びかけ続けることが重要だ。これこそが、TEJで決起した業界が進める、最も重要なニューノーマルな観光対応の挑戦ともいえるだろう。

以下、今年のツーリズムEXPOジャパンの様子を写真で紹介する。

展示会場内では時折、スタッフが歩きながら密を避ける呼びかけを実施

TEJの展示で人気のVR。今年は疑似体験旅行の注目が上昇。写真は首里城VR。TEJの会期中は、首里城火災から1年目の節目

リゾテックも同時開催

リゾテック会場ではワーケーションをテーマに内閣府からも出展

会場外のフードコーナーでも、ニューノーマルに対応。今年は初めてキャッシュレス決済を導入

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