ワーケーションが「関係人口」創出の起点に、コロナ禍で注目が集まる「分散型の暮らし方」、選ばれる地域の特徴とは?

2020年11月にオンライン開催された「シェアサミット2020」。そこでは、コロナ禍でテレワークやワーケーションなど新しい働き方や暮らし方が注目されているなか、「分散型の暮らし方」をテーマに多拠点生活の可能性や関係人口の創出などを議論するセッションも設けられた。

その内容をレポートする。

関係人口に強い地域の特徴とは

モデレーターを務めた定額住み放題サービスを提供するアドレス社の佐別当隆志社長は、コロナ禍において、「若い人を中心に都市から地方の人口流動がかつてない規模で起きている」と指摘。大都市部から地方分散へのパラダイムシフトが新しい「コ・ソサエティ(共創社会)」を生み出す可能性について触れ、議論を進めた。

カヤックちいき資本主義事業部事業部長の中島みき氏は、同社が展開している関係人口マッチングサイト「SMOUT (スマウト)」でも会員数が3~4倍増加していることから、「地域に行きたい、地域に関わりたい需要は確実に増えている」と話し、自分らしい暮らしを求めるトレンドの高まりを指摘した。

SMOUTのデータをもとに算出したネット関係人口スコアによると、現在最も人気がある地域は宮崎県の椎葉村、次いで北海道の下川町。中島氏は、伸びている地域の特徴について、「関係人口は移住よりも多様。さまざまなコミュニティチャネルを活用して、それぞれのニーズに合った窓口を用意しているところが強い」と説明した。

LIFULL地方創生推進部LivingAnywhere Commons事業責任者の小池克典氏は、自社の事業について、空き家問題の解決を通じて、場に縛られないライフスタイルの実現を目指していると紹介したうえで、関係人口の創出には「ソフトが一番重要ではないか。地域が主人公になっているところが人気がある」とし、キーワードとして「地域に巻き込まれる」ことを挙げた。

これを受け、佐別当氏も「地域の人たちが活躍しているところが関係人口でも選ばれる」と続け、デジタル社会ながら、人と人との濃密な関係性を求める傾向は強まっているとの認識を示した。

(上段左から)モデレーターのアドレス佐別当氏、LIFULL小池氏、(下段左から)一平ホールディングス村岡氏、カヤック中島氏

ワーケーションの進化に必要なこととは

九州を拠点にビジネスを展開する一平ホールディングス社長の村岡浩司氏は、オール九州のものづくりで世界に挑戦している自社の事業について、「九州のリソースは豊かだが、限られている。それを奪い合うのではなく、広域で組んで新しいマーケットに乗り出していく」と説明した。同社は、代表的な商品として100%九州産原料の「九州パンケーキ」を開発。国内外で九州の産品を発信するカフェを拡大しているほか、九州全域で廃校などを利活用し、コワーキングスペースやシェアオフィスを広げている。

2020年、九州全域を対象にワークスペースのネットワーク「九州アイランドワーク(KIW)」が立ち上がった。専用の検索アプリを活用し、ドロップインとサブスクリプションの両軸で事業を展開。その会長も務める村岡氏は「ワーケーションの問い合わせが増えている」と明かす一方で、「観光協会もホテルもワーケーションをやりたいが、自治体に専門部署がない。加えて、ワーケーションの定義も定まっていない」と現状の課題を指摘した。

LIFULLの小池氏は、同社の会員について、以前はフリーランスの個人が多かったが、コロナ禍で法人が増えていると紹介したうえで、「ワーケーションは、ワーク+バケーションから、ワーク+コラボレーションの『コ・クリエーション』に進化するのではないか。つまり、地域とのつながりを深めていく働き方であれば、リピーターが育ち、移住定住にもつながる」と話し、ワーケーションから関係人口に発展させる必要性を訴えた。

カヤックの中島氏は、熱海で展開されている副業のマッチングサービス「サーキュレーション・ライフ」を紹介し、「地域の仕事はそう簡単には見つからない。関係人口の創出に向けて、いろいろな機会を作っていく必要がある」との認識を示した。

村岡氏は、農業などテーマ性のある関係人口の創出とともに、「地点ではなくリージョン(地域)という視点も大切」と主張。たとえば、北海道の人が九州と関係を持つよりも、九州の人が九州内で関係を持つ方が現実的だとした。

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