酷暑が観光産業に与える影響は?「酷暑保険」の開発や、 欧州のバケーション旅先選びに変化の可能性

美しいビーチと古代遺跡で知られるギリシャのロードス島では、2023年7月に11日間続いた山火事で観光客を含めて数千人が避難を余儀なくされた。この危機は、観光が重要な産業であるロードス島に大きな爪痕を残している。

ギリシャだけでなく、イタリアやスペインなど地中海地域でも同様に熱波と山火事が観光産業に大きな影響を与えている。欧州連合の推計によると、7月下旬にギリシャ、イタリア、アルジェリア、チュニジアを合わせて1350平方メートルが消失し、12万人が影響を受けたという。

昨年の夏に火災で壊滅的な被害を受けたスペイン北西部のビラルデシエルボス村には、今年もハイカーが訪れている。しかし、ロサ・マリア・ロペス村長は「ハイキングコースには、1本の木もない。好むと好まざるに関わらず、今後数年間、観光業は多少の打撃を受けるだろう」と話している。

ギリシャとイタリアで被害が大きかった地域では、フライトへの影響も出ている。旅行データを提供するフォワードキーズ社によると、今夏、ロードス島では大量の航空便のキャンセルが発生。シチリア島でも同様の傾向が見られるという。イタリアでは山火事の影響で、山火事に近くない場所でも予約が低迷しているとも明かす。

熱波が旅行者の旅先選びに影響か

熱波によって山火事が発生しなくても、気候変動によって年々強まる夏の暑さは旅行者の動向を変える可能性がある。イギリスやスカンジナビアからの観光客に人気があるスペイン南東部の沿岸リゾート都市ベニドルムでは、ホテル経営者らも懸念を抱いている。

バレンシア地方のホテル・観光協会の会長アントニオ・マヨール氏は、「この地域のホテルの稼ぎどきは夏の3ヶ月。熱波が毎年夏に繰り返されれば、経済への影響は甚大になるだろう」と話している。南欧の暑さがさらに深刻になれば、観光客はイギリスやスカンジナビア諸国に移るかもしれない。

OTAホテルプランナーのティム・ヘンシェルCEOは、「ギリシャ、イタリア、スペインなど南欧の記録的な気温は8月に入ってもおさまる気配はない。北欧に旅行する方が、より安全な選択肢と考えられるかもしれない」と話す。

火災が発生した7月17日の週のロードス島への観光客数は前週比で76%減少、フォワードキーズによると、ギリシャ全体でも10%減少した。それでも地元は、8月には火災で影響を受けていない地域で通常に戻ると楽観視している。

ドイツの大手旅行会社TUIは、ロードス島全域への送客をすでに再開。同社セバスティアン・エベルCEOは「観光客が行かなくなれば、ロードス島の人たちはさらに大きなダメージを受けることになるだろう」と話す。

酷暑で休暇が台無しになった場合の「保険」も

夏の気候が変化しているのは確かだ。その背景から、米国の気候技術スタートアップのセンシブル・ウェザー社は、猛暑で休暇が台無しになった場合に補償する保険を開発している。同社はすでに、長雨でビーチでの休暇が損なわれた場合、スキー旅行で雪が降らなかった場合に補償金を支払う商品を販売している。

同社創業者のニック・カバノー氏は「来夏に向けて、暑さによる補償としてヒートカバー・オプションを追加する予定だ」と明かした。暑さの感じ方は人それぞれだが、おそらく日中3時間の気温が摂氏42度を超え、屋外での活動が危険な場合に適用される見込みだという。

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