カナダ観光局、世界トップ7への復活狙う新戦略を発表 観光が豊かさもたらす成長へ、5000地点のオープンデータ公開・分析など

カナダ観光局は2030年に向けた新しい観光戦略を発表した。アルバータ州の州都エドモントンで開催されているカナダ最大の旅行商談会「ランデブーカナダ(RVC)2024」で発表されたもの。国際観光におけるカナダの競争力を高め、2030年までに世界トップ7デスティネーションの地位を狙う。

ソラヤ・マルティネス・フェラダ観光大臣とカナダ観光局のマーシャ・ウォルデン社長兼CEOは、世界の観光客誘致で競争が激化するなか、観光がカナダ全土と訪問者に豊かさをもたらす継続的な成長のためには変革への取り組みが必要だとし、新しい成長戦略「A World of Opportunity」を発表した。

観光収入は年間1600億ドルを目標とする。これは現状の成長ペースから変革に取り組んで200億ドル上昇した場合の成長シナリオで、地域経済の維持や再投資分も見込んだ1日あたりの観光収入は約4億5000万ドルを見込む。観光業は、GDPの2.3%以上を占めるカナダの重要産業で、その成長率は6.1%と全体の経済成長率4.5%を上回る。観光業に投資することでより強固な経済成長を目指す。

フェラダ観光大臣は、「2030年に向けた新戦略は可能性に満ち、カナダの観光が持つ潜在能力を最大限に発揮できるように支援していくもの。国内全土の中小企業の支援によって観光産業への投資をおこなう」と話した。

ソラヤ・マルティネス・フェラダ観光大臣

ウォルデン社長兼CEOによると具体的な戦略は、1.セクターの競争力強化、2.カナダブランドの推進、3.デスティネーション開発、4.コレクティブ・インテリジェンス(集団的知性)の4つの柱で展開する。

例えば、「セクターの競争力強化」のために、観光収入増加、ブランド強化、インフラやヘルスケアへの投資、アクセス、人材確保、サステナビリティ、公的支援の7段階を紹介。「カナダブランドの推進」では、カナダの温かくオープンなハートとマインド、広大な大地のオープンスペースというメッセージを日本を含む9つの重要市場で展開する。「デスティネーション開発」では、通年の雇用創出のためにITなど成長分野のビジネスイベント誘致や観光ルートの開発などがあり、具体的なアクションプランも実行する。

「コレクティブ・インテリジェンス」は、AIを活用したカナダ観光のデータの活用のことで、一元管理されたカナダの観光データにアクセスできる新しい「データ・コレクティブ」プラットフォームが5月24日にオンラインで公開される。

カナダ統計局などの政府機関や業界パートナーからデータを収集し、AI(人工知能)と機械学習を使用して、カナダ全土5000以上のデスティネーションの観光関連データを処理・分析、見やすくマッピングしたもの。例えば、エドモントンへの国内訪問者は全国の2倍を出費、年間を通じて季節変動なく人が訪問、観光従事者が8%いるなど、デスティネーションごとの詳細データがみられ、意思決定や戦略策定に役立つように設計されている。

新戦略を説明するカナダ観光局マーシャ・ウォルデン社長兼CEO

マーケティングのシーズンを調整・転換

セラー向けに観光局の市場戦略について説明するインサイドトラックでは、グロリア・ロリー マーケティング戦略担当上級副社長兼CMOが、2025年に向けた市場戦略について説明。 現状で未だ訪問者数や収益率にバラつきが見られることから、2026年の市場完全回復に向けて、高確率で収益が見込める市場では、マーケティングのシーズンを調整、転換する。

具体的には、近年、冬の開発に注力してきた英国、米国、日本の市場では夏の誘客も狙っていく。その背景となるのが航空キャパシティの増加だ。過去3年間の運航路線を分析すると、大西洋間、日本からカナダ中部、エドモントン路線などの路線拡大がみられたため、座席数をもとに市場を開拓し、運航維持に努めていく。シーズナリティを高めるうえでも、バランスの取れたポートフォリオが春にも良い結果をもたらすという。

ロリーCMOは「単に利益の高い市場を狙うのでなく、バランス配分の取れたポートフォリオを維持することで、高リターンが期待できる市場を選択していく」考えだ。「データ・コレクティブ」の分析を活用し、より特化したマーケティング戦略を取っていく形だ。

航空キャパシティは2019年比で約30%増加

5月14日には、ウェストジェット航空(WS)が東京/カルガリー線が通年運航することが発表された。

今年、3月にジップエア(ZIPAIR)が東京/バンクーバー線、6月にはエア・カナダの関西/トロント線(夏季限定)が就航している。カナダ観光局日本地区代表の半藤将代氏はセラーに対する日本市場の説明のなかで、航空キャパシティが2019年比で約30%増加したことに触れ、「日本からの海外旅行需要は着実に増加している」と述べた。カナダ東部と西部にバランスの取れた輸送能力を持つことで、年間を通して需要を伸ばせる時期や場所に応じ、2025年には夏の送客も視野に入れていく。より特化したマーケティング戦略を取っていく形だ。

日本市場では、高付加価値旅行者を惹きつけるために、「カナダの、その奥へ―。」キャンペーンで本物の自然文化体験、カナダならではの「レジェンダリー・エクスペリエンス」を紹介している。旅行形態も少人数グループツアーや個人旅行への移行、高付加価値商品が増加しているとしたうえで、「カナダは目的志向の旅行者にとって大きな可能性があり、ツアーオペレーターも日本語を話さない地元のRTOやパートナーと協力をいとわなくなっている。カナダ全土の目的地や体験を紹介する機会が広がっている」とカナダ商品の拡大の可能性を示唆した。

グロリア・ロリー マーケティング戦略担当上級副社長兼CMO(左)、カナダ観光局日本地区代表の半藤将代氏(右)

小西美砂江旅行業界担当マネージャーも「カナダの商品は8~10日間へと滞在が長期化、高価格化している。高付加価値旅行者は、カナダでやりたいことをできるだけ体験するため、カナダならではの伝説的な体験を求める」とし、世界遺産でのサイクリング、野生動物の観察、オーロラを含む精神的・文化的体験、先住民族の体験がなどがその例だと説明した。

2024年のRVCは22カ国から1470人が参加

カナダのBtoB向けトラベルトレードショー「ランデブーカナダ(RVC)2024」はカナダの旅行業界最大の商談会で48回目の開催となった今年は、22カ国から1470人以上が一堂に会し、500人以上のバイヤー、900人以上のセラーが55000件以上におよぶ商談がおこなわれた。日本からは主にFITや高付加価値商品を造成する旅行会社など30人近くの関係者が参加した。

ブースでおこなわれた先住民によるセレモニー (C)Destination Canada

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