英国の市場調査会社、ユーロモニター・インターナショナルは、2026年の消費者動向に関する予測レポート「世界の消費者トレンド2026」を発表した。
消費者トレンドが産業界のビジネスにどう影響し、今後、どのような商機を生み出していくかについて、ユーロモニターが年間を通じて収集・分析している各種データをもとに考察している。2026年は、以下の4つがキー・トレンドになると予測している。
1. コンフォートゾーン
現代社会の不安やストレスの高まりに疲れた消費者が、「心の安らぎ」や「自分の価値観に沿ったバランスある生活」を求める傾向が、世界的に強まる。
ユーロモニターの消費者調査(「消費者の声・ヘルス&栄養」2025年2月)では、「日常的に中程度から深刻なストレスを感じている」が全体の58%、日本の回答者では62%を占めた。生活をシンプルにすること、安心感、快適さを重視する動きが拡大するなか、産業界では、自然由来の素材、リラックス効果や快眠を促すもの、スマート家電など、心身の癒しと回復をもたらす要素が商品開発のカギになる。
ユーロモニターによると、2024年9月〜2025年8月にオンライン上で新発売された健康関連商品の約1割は「心のウェルビーイング」を訴求するもので、特に日常消費財でこの傾向が顕著だった。商品の機能デザインでは、複雑すぎず、直感的に操作できるものが好まれ、ストレスフリーなAIやスマート家電が支持されている。
ウェルビーイング志向は、ラグジュアリー商品でも強くなっているという。ユーロモニターでラグジュアリー産業を担当するグローバル・インサイト・マネジャー、フラー・ロバーツ氏は、「最近のラグジュアリー製品の購入者、特に若年層はモノを所有するだけでなく、マインドフルネスやウェルビーイング、感情のつながりを深めるような体験に価値を見出している」と指摘。ブランド各社は「特別感、卓越した技巧」だけでなく、「人の成長や心身のウェルネスを促すものを提供する」領域に力を入れている。
デジタルによるリテール業の進化で、つながりやすい世の中になったものの、疎外感はむしろ大きくなり、デジタル疲れによって不安が増すなか、表層的でない人とのつながりや共感が渇望されているとの見方だ。
こうした矛盾を背景に、消費者にとっての価値は、モノよりも意義や帰属感、再生をもたらす体験へと移行。ブランド各社は、ウェルネス志向かつ体験型のラグジュアリーに投資するようになり、例えば、ルイヴィトンがイタリアで始めたアイスクリーム店は、シンプルな楽しみにブランドを冠し、誰でも手が届く、贅沢なひとときを実現している。
同様に、LVMH傘下のベルモンド・ブリティッシュ・プルマンの豪華列車(Belmond’s British Pullman Train Journey)は、旅にもマインドフルネスを求める富裕層から支持されている。求められているのは、ゆったりした時間と静かなくつろぎ、心からの充足感。いずれも、新しいラグジュアリーの概念に欠かせないものだ。
「ハイパー・コネクティビティの時代だが、自分自身、人や自然と本当の意味でコネクトする体験は得難く、ゆえに渇望されている贅沢だ」(ロバーツ氏)。
2. 自分らしさの追求
「未加工」、「ありのまま」であることが、消費者からの支持を広げるなか、「自分らしさを最優先する」価値観が、消費行動にも影響する。企業には、万人向けではなく、個人の価値観や多様性を尊重し、個々のニーズに寄り添うアプローチが求められる。
ユーロモニターの「消費者の声・ライフスタイル調査」(2025年1~2月)では、回答者の47%が「他者と差別化されることを望む」、同50%が「自分専用にカスタマイズされた商品・サービスを求める」としていた。さらに「消費者の声・サステナビリティ調査」(同上)からは、政治・社会への関心が高い消費者のうち30%が、自分と同じ価値観や問題意識を持つブランドから購入すると答えている。
3. 次世代ウェルネス
ウェルネスの領域では、医学的に価値が認められているものや、ハイテク技術を取り入れた手法で長寿、美容、パフォーマンス向上を目指すなど、より科学的で、個人に最適化された日々のセルフケアを求める人が増えている。
ユーロモニターが2025年6~7月に実施した「消費者の声・美容調査」では、回答者の49%が、科学的な根拠にもとづき処方されたプレミアム美容製品であれば、価格が10%以上高くても購入したいと回答。一方、業界関係者の62%は、ウェルネス・トレンドやセルフケア重視の傾向が、今後5年間で大きく影響するとの見方を示した(「産業界の声調査・2025年3月」より)。
こうしたなか、旅先でのスパや医療など、ウェルネス・ツーリズムの消費額は拡大を続けており、2025年は前年比2桁増の成長となっている(「パスポート・トラベル」調査より)。
4. アジア発の新潮流
東アジア発の影響力が、着実に世界で存在感を高めており、中国系ブランドに対する消費者の認識も変わっている。中国系企業は、手ごろな価格とデジタル・ファーストのイノベーションを用いて海外展開に成功。モバイル中心の戦略やアルゴリズムによるパーソナライズを活用して、顧客エンゲージメントを高めている。
ユーロモニター調査では、消費者の3人に2人が「自分と異なる文化を体験することは重要だ」と回答(「消費者の声・ライフスタイル調査」2025年1~2月)。また、2024年のEC売上が最も多かった小売業者トップ5社は、そのうち4社を中国発または中国に本拠を置く企業が占めた(「パスポート・リテール」調査より)。
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