サービス連合の運動方針、中期目標「35歳年収550万円」実現へ体制強化、政策実現や環境変化への対応も

記者会見には会長と新設の副会長代理、副会長、事務局の8名が参加

サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)は、2017年7月13日に第17回定期大会を開催し、2017年~2020年度の中期目標と2017年~2018年度の運動方針を承認した。

サービス連合では1期2年のサイクルで、4年ごとに中期目標を掲げて取り組みを推進している。2017年度を初年度とする4年間も、中期的な賃金目標の「35歳年収550万円」や「10万人組織実現に向けた組織人員5万人の達成」、「総実労働時間1800時間」など、2013年度からの目標を継続し、さらに取り組みを強化していく。

サービス連合会長の後藤常康氏は、大会後に開催した記者会見で、「この4年間で着実に成果を積み、賃金や一時金など労働環境の向上を進めてこれた」とこれまでの取り組みを評価しつつ、目標を継続となったことに、「中期目標の『35歳550万円』については、一定程度の加盟組合の成果が上がっていればハードルを上げたかったが、そこに踏み切るにはまだ少し早い」との認識を示した。

そして「私は(前回目標を立てた)4年前と変わりなく、さらに強い思いを持っている。21世紀の基盤産業として期待される我々の産業を支えるのは人財。その宝を大切にするには、労働環境を整えなければならない」と述べ、これからの4年間の活動に対する強い意志を示した。

成立法のチェック機能の役割や

イノベーション推進など環境変化への対応を強化

目標は継続するが、その実現に向けた取り組みはさらに強化。2017年~2018年度はこれまでの運動の積み重ねを基盤に、直面する課題や具体的な個別方針に対応していく。

特に本部側では、労働環境の向上を交渉する加盟組合の後方支援や、産業全体の底上げを図るためにも「政策制度の実現」を重視。重点政策として2017年度も、「インバウンドの拡大」「休日休暇改革の実現」「観光産業と社会」「産業内の人財育成」を掲げ、近日中にも新たな「観光立国実現に向けた提言」を発表する予定だ。

また、これまでもサービス連合では、利用者の安心安全と事業者の公正な競争の確保を踏まえ、政策提言や見解・談話の意見表明を行なってきたが、今後はさらに「政策や政治に関わりを持つ必要がある」(後藤氏)との考えを強める。

特に先般の国会では、観光関連のさまざまな法案が成立。特に民泊新法(住宅宿泊事業法案民泊新法)に関連して、「法案自体を変えることはできなかったが、付帯決議には我々の意見を盛り込むことができた」(後藤氏)と述べ、国会や政党、行政、業界団体との意見交換の重要性を強調した。

今後、成立した法案には、「正しく運用されるよう、チェック機能を果たしたい。いろんな観点で情報発信や提言をしていく」(事務局長・千葉崇氏)方針。さらに、先般の国会でも議論に上がった旅館業法について「昭和23年に作られた法律。今の環境にあわせた法律にした方が良い」(後藤氏)と言及するなど、今後も現場を知るサービス連合の意見が重要と考える。

こうした提言や意見交換を行なうため、役員や本部体制も強化。新たに「会長代理」を2名新設したほか、事務局には「組織局」「政策局」の2局体制に「労働条件局」を追加した。さらに、活動の方向性を示す「運動の柱」は、従来の3つの柱(1)強固な組織基盤の確立、(2)労働環境の整備と向上、(3)社会への関与と共生と連帯に、(4)産業政策の提言と実現加えた「4本の柱」とし、取り組むべき目標を明確化した。

記者会見には会長と新設の会長代理、副会長ら8名が参加

これに加え、グローバル化やIoT、人工知能(AI)などテクノロジーの進化による環境変化と働き方の変革推進も視野に入れる。そのためにも、世界の産業全体の流れを大局的に捉える必要があるとし、これら分野の世界的な知見やデータを持つ国連世界観光機関(UNWTO)の賛助会員への申請を行なった。

5月のUNWTO執行理事会で仮承認を得ており、9月の世界総会で正式承認される予定。実現すれば、同様に申請しているJTBグループ労働組合連合会と同時に、労働団体として世界初の賛助会員になるという。

労働時間短縮に向けて

また、中期目標達成に向け、具体的な行動も深化させる。例えば「年間総実労働時間1800時間」に向けては、2017年8月~2022年7月までの5年間を期間とする「第4期時短アクションプラン」を策定。サービス連合全体の総実労働時間を加重平均で2020年度に1935時間以内とすることを目標とした。

これは加盟組合ごとに成果が隔離している実態を受けたもの。これまでは毎年10時間の削減を目標に取り組みを進めてきたが、成果を上げている組合もあれば、総実労働時間の把握もできなかった組合もあった。

そこで、サービス連合として加盟組合の総実労働時間の実態調査も実施。その結果をもとに、加盟組合を4つのグループに分け、加盟組合の実態に基づいた段階的な目標を設定した。このなかで、所定労働時間が2000時間を超えている組合に関しては、2000時間以内の短縮を目指し、総実労働時間の短縮時間を毎年15時間ずつに目標値を高めた。

なお、第17回定期大会では、2017年~2018年度の本部役員について承認が行なわれた。そのうち、会長と会長代理、副会長、事務局長は以下の通り。

【サービス連合 2017~2018年度 本部役員 ※一部】

  • 会長:後藤常康氏(専従:帝国ホテル労働組合)
  • 会長代理:岡本賢治氏(ホテル・レジャー委員会委員長:帝国ホテル労働組合)※新任
  • 会長代理:長縄将幸氏(ツーリズム委員会委員長:JTBグループ労働組合連合会)※新任
  • 副会長:森岡成人氏(組織担当:リーガ労働組合連合会)
  • 副会長:岡﨑功氏(組織担当:日本旅行労働組合)
  • 副会長:廣末仁氏(政策担当:都ホテルズ&リゾーツ労働組合連合会)※新任
  • 副会長:津和崎宏児氏(政策担当:阪急阪神交通社グループ労働組合連合会)※新任
  • 副会長:佐野高志氏(労働条件担当:藤田観光労働組合)※新任
  • 副会長:山口智洋氏(労働条件担当:KNTグループ労働組合連合会)
  • 事務局長:千葉崇氏(専従:JTBグループ労働組合連合会)※新任

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