個人投資家・千葉功太郎氏が注目する旅行ビジネスとは? ドローンタクシーからインバウンドまで未来図を聞いてきた

今年の「WIT Japan 2018」には、エンジェル投資家の千葉功太郎氏も登壇し、現在精力的に取り組んでいるドローン事業や観光関連事業への投資について語った。千葉氏は、大学卒業後リクルートに入社。2008年にはコロプラを共同設立し、退社後は個人投資家としてさまざまなスタートアップ企業に関わっているほか、起業家コミュニテイ−「千葉道場」を主宰し、若手起業家の育成にも力を入れている。

ドローンタクシーの時代はもうすぐ?

千葉氏が現在最も注力しているのがドローン事業だ。

2017年6月にドローンファンドを立ち上げ、現在のところ16社から約1600万ドル(約17億6000万円)を調達。ドローン関連のハードウェア、ソフトウェア、サービスを展開する19社に投資している。そのなかの一社がALI (Aerial Lab Industries)。2022年までに東京で「ホバーバイク」の実現を目指している企業だ。千葉氏は、「2025年には『エア・モビリティー』時代が来る」と話し、東京での「ドローンタクシー」構想も見据える。

「ドローンタクシー」、いわゆる空飛ぶタクシーの実用化は世界で取り組みが進んでいる。エアバスは、自動運転の空飛ぶ電動タクシー「バーハナ・アルファ・ワン(Vahana AlphaOne)」の初テスト飛行を実施。カリフォルニアのジョビー航空(Joby Aviation)や中国のEHANGなども実用化に向けて開発を進めているほか、ウーバーも2020年まで空飛ぶタクシーのテスト飛行を行うと表明している。

「インターネットが急速に普及してきたように、ドローンもすぐに当たり前の時代になる」。現在、航空法では地上150メートルから1万メートルの空域は航空機の管制システムや安全運航の仕組みができあがっているが、ドローンの空域となる150メートル以下についてはまだインフラは未整備。「だから、チャンスは大きい」と千葉氏は投資家の視点から強調する。

趣味の領域からビジネスの領域に広がりを見せるドローン。「If you can dream, you can do it. (夢があれば叶う)」。千葉氏は、ウォルト・ディズニーの言葉を引用し、起業家を応援する。

WITではドローンの実演も披露したWITで紹介されたドローンタクシーのイメージ

旅行ビジネスでもディスラプションに投資

千葉氏の投資案件には旅行関連も多い。最初に関わった旅行サービスのスタートアップは、旅行体験マッチングプラットフォームの「トリッピース」。現在のところ、51社に投資しているが、そのうち旅行関連は14社になる。分野は、シェアリングサービスやマッチングサービス、ホテルのレベニュー管理システム、ウェブメディア、訪日向け無料SIMなどさまざま。旅館「The Ryokan Tokyo湯河原」への投資も行い、オーナーとして旅館の魅力を世界に発信している。

千葉氏が投資する分野は、「インターネットテクノロジーでリアル社会の課題を解決するところ」。現場で起こる社会的課題をテクノロジーで解決できるところに「マーケットがあり」、その二つが合致したときに「ディスラプション(創造的破壊)やイノベーションが生まれる」と話す。

その千葉氏から見て、星野リゾートの事業展開は「興味深い」という。星野リゾートはゴールドマン・サックスとアセット・マネージメント会社を合弁で立ち上げ、温泉旅館の再生事業に乗り出している。

「金融の手法を旅館という小さな経営に取り入れた日本で最初の事例ではないか。そのグランドプランは極めてアメリカ的」と評する。旅館の経営は、土地や建物を担保に入れながら、金融機関から借金で経営を持続させ、それを代々受け継いでいくというのがよく見られパターンだ。それを星野リゾートは「ディスラプト(破壊)し、イノベーションを起こそうとしている」。自身も旅館経営に乗り出している千葉氏にとって、その動きは刺激的に映っているようだ。

生き馬の目を抜くような投資の世界。そのなかで、千葉氏は投資を決めるときに一番大切にしていることがあるという。

「まず、リーダーを見る。そして、その人にその事業をやっているストーリーがあるかどうかを見る。たとえば、『インバウンドが流行っているから儲かりそうだ』という考え方には、その事業がおもしろくても賛同しない。しかし、たとえば、実家が旅館で、昔からその環境の中で育ち、『長年抱える課題を解決して、より発展させたい』というようなストーリーがある人なら応援したい。そういう人には、その人の人生の根っこのようなものがあると思う」。

「今注目しているのは、ドローン、インバウンド旅行、アグリテック、仮想通貨」と千葉氏。ビックデータ、AI、プロックチェーンといったテクノロジーで社会的課題の解決に挑んでいるが、その中心にいるのは「人」だ。

「インターネットがこれだけ発達した今でも、地方と東京とでは情報量が違うし、起業に対する意識やスピード感も違う。それは、東京ではリアルな対面の機会が圧倒的に多いから」。人と会うことで、ネット上では見つけられないリアルな情報が得られるのと同時に、新たなインスピレーションやモチベーションも生まれる。千葉氏が未来の起業家に向けた「If you can dream, you can do it」というフレーズも極めて人間的なメッセージだ。

記事: トラベルジャーナリスト 山田友樹

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