DMO先進国のアメリカで開催された、全米のDMO幹部が集結する大会を取材してきた - DMO認証制度から大会運営の気づきまで【コラム】

イベントの模様(紹介ビデオより)

こんにちは。DMO(観光地域マーケティング・マネジメント組織)コンサルタントの丸山芳子です。

2018年の夏、米国のDMO最大の業界団体で、100年以上の歴史を持つディスティネーション・インターナショナル(DI)の年次総会が開催されました。今回は、米国・欧州を研修や現地調査の経験をもとに、日本のDMOを支援する私が総会に参加して感じたことなどをまとめました。

米国のDMOは、コンベンションビューローから発展しているという歴史的な経緯があります。DIの年次総会には、自らが大型会議の受け入れを担当しているプロもたくさん参加するので、彼らのお眼鏡にかなう、とても充実した内容でした。

全米DMOの最先端情報がわかる年次総会

オープニングレセプション会場にて筆者(中央)とDI会長ドン・ウェルシュ氏(右)、韓国観光公社ハン・ソナ氏(左)

2018年のDIの年次総会は、実質3日間の日程で開催されました。参加者は1620人、5つの基調講演と120以上の分科会とイベントが行われ、展示会には100団体以上が出展する大規模なイベント。総会の中心は、DMOに関わる最新状況を説明する基調講演やセミナーによる、知識や能力向上の機会提供です。

観光産業のプロモーションや調査を手掛ける周辺産業による展示会もあり、DMO業界全体のビジネスチャンスを生み出しています。さらに、年次総会に先行してDMO幹部向けの資格CDME(Certified Destination Management Executive)の研修も開催されます。私は、この年次総会とCDMEの研修に、過去3回、日本人として唯一出席しました。

米国の大型イベントで欠かせないパーティも大きな特色です。例年、1日目の夜にオープニングレセプション、3日目の夜にグランドセレブレーションという2つのパーティがあります。そしてこれらのパーティでは、開催地らしいおもてなしの演出がされます。

2018年のアナハイムのオープニングレセプションの会場は、コンベンションセンター前の道路を50mほど通行止めにして開催されました。電飾で飾り付けられた雰囲気は、まさに開放的な夏祭り。このように、屋外を会場にできるのは、雨が比較的少ないカリフォルニア州だからこそかもしれません。

地域らしさを盛り込んだパーティやアクティビティ

ストリートが会場ということで、食事は6台程度のフードトラックが提供するバイキング形式になっています。車両ごとにミニハンバーガー、タコス、ピザなど、様々なメニューが取り揃えられました。ゆっくり話をしたい人向けに会場の隅にはいくつかソファーが供えられています。

そして、いかにも西海岸らしい、Tシャツに短パン姿のローラースケートをつけた女性グループが、参加者でごった返すストリートを、ダンスをしながら通り抜けています。このグループは、当然ながらパーティを活気づけるための仕込みで、受入れをしているアナハイムのDMOが手配したものです。こんな要素もいれながら、会場全体を盛り上げています。

一方、2017年のモントリオールのオープニングレセプションは全く様子が異なりました。パーティ会場は、セントローレンス川ほとりの一軒家レストランです。モントリオールは、シルクドソレイユの本拠地ということもあり、複数の曲芸師が配置されて、参加者からの写真撮影に応じていました。

また例年、パーティの中では、似顔絵描きなど、参加者を楽しませるアトラクションがいくつか用意されますが、印象的だったのは、巨大チェス盤でのゲーム。対戦相手は、中世の衣装を着けたチェスマスターですが、結構な腕前です。

このチェスマスター、実は観光ボランティアで、DMOから依頼されてきているのだといいます。なぜ、ボランティアを引き受けているのか質問すると、モントリオールを訪問する人に少しでも楽しんでもらえればと思って志願している、という答えでした。私としては、ボランティアも巻き込んで、パーティを盛り上げる工夫をしているということに驚きがありました。

また、DIの年次総会の参加者は、DMOの幹部や部長クラスなので、参加者の年齢としては、30代後半以上の人が大半と年齢層はやや高めです。ビジネスとは違ったところで、健康志向のイベントも各種行われます。恒例なのはゴルフ大会、早朝ランニング大会、早朝ヨガなど。ゴルフのプレイ料などは有料ですが、それ以外のイベントの参加費は、年次総会の参加費に含まれています。

もちろん、ゴルフ会場やインストラクターの手配は、受入れDMOが対応します。DMOでは主催者の希望に沿って対応できるよう、DMOでは地域のいろいろな関係者と連携をとって手配可能リストを作っているそうです。

早朝ヨガの様子。水分補給にイチゴ、ミントなどのヘルシーなフルーツウォーターが用意された

交流タイムの食事会でもコミュニケーションに一工夫

DIが会議主催者として目指す目的の一つに、参加者同士の交流があります。この中で、食事時間は貴重な交流の場として活用されています。実際に、スケジュールには「Breakfast in the Exchange」、「Lunch in the Exchange」と記載されています。年次総会の参加費には、会場内での朝食と昼食の費用が含まれています。

食事会場は、コンベンションセンターの中にブッフェ形式で、広い会場が設けられます。参加者は、偶然同じテーブルになった人と気軽にあいさつし、情報交換します。実際に私も、この食事時間を活用して、多くのDMOの取組について話を聞くことができました。

初対面でも会話のきっかけが持ちやすいような工夫も準備されています。その方法は、色違いのリボンです。リボンはネームプレートに張り付けるつけることができるもので、参加者の様々な属性を表します。

例えば、役職を示す「CEO/President」や、DIによるDMO認証制度であるDMAP(Destination Marketing Accreditation Program)を取得している組織、CDMEの資格取得者など20種類以上あり、自分で選んでネームプレートに張り付けます。もしDMAPについて興味がある場合には、DMAPリボンをつけている人を捕まえて直接話を聞けばいい、というわけです。

DI年次総会の朝食会場の様子

家族連れの参加の推奨やペーパーレスへの取り組みなど

DIでは、各種の先進的な取り組みが行われています。

まず、ひとつめは2018年から年次総会に家族同伴を推奨するというもの。家族ぐるみで参加できるイベントも各種の準備がされていました。家族にDMOがどんな仕事なのか理解してもらうことが重要だからです。

実は、DMO先進国の米国でさえ、DMOという組織は社会的にまだ認知度が低いのです。そのため、家族、特に子供が親の職業を良く知らないということが背景にあります。業界に優秀な人材を集め、観光地域での発言力を高めるためには、まず身近な家族の理解から、という考えからの方針で、2018年は特に近隣にディズニーランドがあったこともあり、実際、家族連れの参加者は多かったようです。

ふたつめは、ペーパーレス化。

インターネット経由で参加申し込みをすると、開催1週間ほど前に、eメールで年次総会専用のスマホ用アプリのダウンロードの案内が送られてきます。これで、基調講演、分科会の開始時間、発表の内容、発表者の肩書、会場、会場地図など、すべてアプリ上で確認できるようになります。

また、基調講演など全員の参加を促すものについては、開始5分ほど前にプッシュ通知で案内が届きます。プッシュ通知は、DI会長からの「昨晩のオープニングレセプションは楽しかったですね」というような、参加者の一体感を盛り上げるメッセージも配信します。

何といってもこのアプリで便利なのは、参加者の検索ができることです。例えば、昼食の時に話をした人のファーストネームと、DMOの地名ぐらいしか覚えていなくても、検索すればフルネーム、肩書などがわかります。自分の名前を表示するかどうかは選択できますが、多くの参加者はネットワークを広げることが目的のため、ほぼすべての参加者が検索対象になっています。

またキーノートセッションや分科会での投影資料も、後日事務局からデータダウンロード先のURLが案内されます。会場で紙の資料を配布されることは一切ありません。高度という技術的ではないものの、ペーパーレスを実現しつつ参加者の利便性を高めるサービスを実現しています。

年次総会の締めくくりと次回の予告

最終日の基調講演の最後には、前日までの年次総会の内容をまとめた2分程度の動画が上映されます。制作する裏方スタッフは苦労しているだろうなと思いますが、やはり動画の力は強いです。

これを見るたびに、充実した内容だった、言い換えると、高い参加費を払っても来てよかった、と感慨もひとしおです。これも主催者の狙い通りでしょう。

年次総会最終日に上映された「2018年年次総会振り返り動画」(Youtube:約2分)

そして、次回の年次総会の予定も発表されます。次回は2019年7月23日~26日、開催地はミズーリ州セントルイスです。私も参加する予定です。

丸山芳子(まるやま よしこ)

丸山芳子(まるやま よしこ)

ワールド・ビジネス・アソシエイツ チーフ・コンサルタント、中小企業診断士。UNWTO(国連世界観光機関)や海外のDMOの調査、国内での地域支援など、観光に関して豊富な実績を有する海外DMOに関する専門家。特に米国のDMOの活動等に関し、米国、欧州各地のDMOと幅広いネットワークを持つ。DMO業界団体であるDestination International主催のDMO幹部向け資格「CDME(Certified Destination Management Executive)」の取得者。企業勤務時代は、調査・分析、プロモーションなどの分野でも活躍。

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