東京駅前「ホテル龍名館東京」が新デザイン客室をオープン、開業ラッシュの都心で老舗ホテルが取り組む施策を聞いてきた

東京駅八重洲北口から徒歩3分に立地する「ホテル龍名館東京」は、全135室の約3割を占める38室で1億円を投じたリノベーションを実施し、2019年6月4日に「FORUS」と名付けた新スタイルのデザインルームをオープンした。

コンセプトは、旅館のDNAを持つホテルを特徴にした「東京駅から最も近いモダン旅館」。ダブルベッドを置く和洋室には、畳敷きの小上がり風のリビングや室内の一輪挿し、インテリアを兼ねたけん玉や万華鏡、折り千代紙などの日本玩具などを置き、和を強く印象付ける。

また、ベッドマットや枕は老舗・西川の最上級「エアーSX」と「エアー4D」を、シャワーヘッドにはフクシマ化学の柔らかな水圧が特長の「nude」など、滞在の快適性も日本のメーカーの商品力を多用。旅の疲れを癒し、しっかりとした休息と睡眠がとれる客室づくりも、日本の良さを意識した。

客室タイプは19.74平米~26.99平米の3タイプで、宿泊料金は1泊1室2万7000円~3万7000円の設定だ。実は今回、FORUSに改装したのは、同館の中でも窓の見晴らしに難のある客室。ここにコンセプトを盛り込むことで、宿泊客の快適性を高めると同時に客室単価を最大42%引き上げ、宿泊客の満足度向上と売上げ拡大を図る狙いだ。

同ホテルは、1899年(明治32年)創業の「旅館龍名館本店(現ホテル龍名館お茶の水本店)」の分店として1909年に開業(当時は「旅館呉服橋龍名館」)した老舗。2009年にビルを建て替え、新築ホテルとしてリニューアルオープンしたが、専務取締役の濱田裕章氏は、改装に力を入れていることを説明。「10年経った割にはきれいだと思うが、それでも新しいホテルにはかなわない」と述べ、インバウンドの増加と東京五輪に向けてホテル開業が続く東京都心で競争力を維持させることが、最大の課題だと話す。そのため、差別化戦略とブランディングに注力し、改装では「テーマ性と個性のあるホテルを打ち出していく」という。

2009年のリニューアルオープンでは、「東洋と西洋の融合」をコンセプトに世界主要都市の高級ホテルを手掛けるデザイナーを起用。1室の平均単価が約5000円だった全36室のビル旅館から、スモールラグジュアリーと称されるホテルに転身した。客室単価を上げながらも稼働率も上昇し、現在は東京の平均85%を上回る9割前後で推移。ミシュランガイドで8年連続の2つ星、トリップアドバイザーではエクセレンス認証で殿堂入りするなど、利用客の評価も上げ、売上高は9年連続で過去最高を更新。宿泊客の外国人比率も52.8%と取り込みに成功している。

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