宿泊業界が「大きな脅威」に対抗するには? OTAやアマゾンに対抗するための議論をまとめた【外電】

ホテルがブッキングドットコムやエクスペディアなどのオンライン旅行代理店(OTA)に、顧客の多くを奪われるようになって久しい。エアビーアンドビーなどシェアリングエコノミー各社も、競争に加わっている。

さらに最近では、アマゾンやアリババなど、テクノロジー企業までもが宿泊マーケットに参入。潤沢な予算を持ち、誰よりもeコマース戦略に長けた巨大企業を相手に、ますます市場シェアが奪われることが危惧される――。

以上は、2019年6月下旬にミネソタ州ミネアポリスで開催されたホスピタリティ産業テクノロジー見本市・会議「HITEC(the Hospitality Industry Technology Exposition and Conference)」でおこなわれたセッション「迫りくる大きな脅威(The Next Big Industry Threat)」で、議論の前提として示された見解だった。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

登壇したプレゼンターらは、ホテル産業がこれに対抗するためには、プロパティ管理システム(PMS)に頼りっぱなしになるのを止め、リテール業務の強化につながるテクノロジーを取り入れるべきとの議論を展開した。

「これまでの経緯を振り返ると、何度も挽回のチャンスを逃してきたのは間違いない。今度こそ、先手を打たないといけない」と話すのは、オランダ拠点の「スチューデントホテル」の最高情報責任者(CIO)、ライリー・ウォーシントン氏だ。

ネットシス・テクノロジーのニック・プライス最高経営責任者(CEO)は、ホテル業界がOTA対応で犯してきたミスについて解説。その教訓として、先延ばしにしないで、もっと迅速に行動するべきだと話した。

同CEOによると、OTAが最初に登場した頃、ホテル側はこの新参者の「インターネット仲介業者」の力量を疑い、客室を本当に売る力があるのか疑問視していた。

「当時よく言われていたのは、どうせ無理だろうとの意見。(ホテルの)ロイヤルティプログラムは素晴らしく、OTAはとても太刀打ちできない。お客様はホテルと直接話をしたいのだから、もちろんホテルに問い合わせてくる。お客様は、自分もホテルブランドの一員と感じている、云々。さて、今日振り返ってみて、こうした見方は正しかったのか? ひとつぐらいは当たっていたか? 残念ながら、答えはノーだ」(プライスCEO)。

同氏によると、2010年頃まで、ホテル業界の幹部たちはOTAと手を組むことを歓迎していたという。ところがエクスペディアやブッキングドットコムなどのOTAは、テクノロジーをうまく活用しながら、旅行者の様々なニーズに応えることに成功。この点で、ホテル側は遅れをとり、今ではOTAがコントロールする販売シェアが大部分というホテルブランドや独立系ホテルもある。

「自社プロダクトであっても、事実上、販売は他社に任せるようになったという産業が、ここ20年でどのぐらいあるのだろう。かなりお粗末な事態だ」とプライス氏は批判する。

そして今、新たな大変革の波が迫っている。eコマースを知り尽くした覇者、アマゾンやアリババなどのリテーラーの動きだ。

リテール勢力図が塗り替わる

セッション登壇者たちによると、ホテル業界が背負う十字架は、自身がリテーラーでもあるという事実を軽視したこと。そして、ホテルの各種プロダクトを自由に組み合わせたり、オンライン購入の使い勝手を便利にしたりするテクノロジーが、デジタル時代の消費者にとって、とても重要だと気づかなかったことだ。

「CIOたちはずっと『ホテルはITビジネスじゃない。宿泊を提供し、お客様の顔を見ながら働くサービス業だ。テクノロジーの問題は誰か専門家に任せておけ。我々がフォーカスするべきは目の前のゲストだ』と言い続けてきた」とウォーシントン氏。

「これでは機能しない。ひどい状況になってしまった。だがデジタル世代が消費マーケットの主流になり、ショッピングカートが登場するもっと前から、実は問題はあった。我々ホテル産業が最も危惧するべきは、テクノロジーや技術設計について、あまりにも無知なことだ」(同氏)。

消費者は、アマゾンなどの便利な機能に慣れ、どこでも同じような使い勝手を期待するようになった。例えば種類の異なる複数の商品でも、同じカートに入れられて、支払いはワンクリックで済む、といった具合だ。

「ホテルでは、レストラン、ゴルフコース、スパ、会議スペースなど、おそらく15~20種類のプロダクトの営業を行っているが、デジタル販売において、それらをまとめて扱う機能がない。それぞれが別のメカニズムで取扱いされているので、煩雑で手間がかかる」とプライス氏は嘆く。

「PMS中心のシステム構造は限界に来ている。いわば一つの時代が終わったのだ。このチャプターは閉じて、より便利な次の時代の話へと目を転じるべきだ」。

リテール業務のシステムを採用すれば、ホテル各社はもっと利用客にアピールするパッケージ商品が造成できる。ロイヤルティプログラム会員との関係強化や、他の流通チャネルにはないプロダクト提供にもつながるだろう。

「ホテルがデジタルプラットフォームを整えれば、客室だけでなく、会議室の4時間利用や、レストラン予約、リムジン手配なども併せて受けられるようになり、OTAとの差別化にもなる」とプライス氏。

また同氏は、PMSから脱却することで、「一泊」ずつ売るという固定概念からも解放されると説く。

「一泊ではなく、一分単位、一秒単位、あるいは一時間単位で客室を販売してはいけないのか? 今の時代を理解しているリテーラーならば、当然、検討するだろう」。

「PMSは、一泊ずつ販売することを前提に設計されたシステムだが、何かおかしいと感じているのは私だけだろうか?」

こうした問題を解決するカギは、複数のAPIを使い、ホテルが扱う様々なプロダクトの予約から決済までを一元管理するシステムにあるとプライス氏は話す。

「私だったら、アリババやアマゾンをよく見てみる。ホテルが問題を抱えているのはリテール業務なので、リテール関連テクノロジーで先進的な企業を研究するべきだ」。

「しかしここで重要なのは、またテクノロジー企業に任せっぱなしにしないこと。テクノロジーを使うのは我々なのだ。もっと疑問を持って、自分でも情報収集し、要求することが大事だ」(同氏)。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル:Hotels need to embark on a new chapter - the digital one already written by Amazon


著者:ミトラ・ソレルズ氏(Mitra Sorrells)


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