トラベルポート、「次世代BtoBプラットフォーム」構築へ、その戦略と将来ビジョンを聞いてきた

トラベルポートは、アジア太平洋の顧客に同社の最新情報を説明するイベント「トラベルポートLIVE2019」を中国・上海で開催した。今年のテーマは「Experience is Everything (体験がすべて)」。体験に価値を求める旅行トレンドが強まるなか、トラベルポートもそのマーケットニーズを踏まえたソリューションやサービスを旅行会社向けに構築していく姿勢を示す。

Next Generation Platformを4年かけて構築

同社CCOのニック・ダグ氏はイベントの開会にあたって、「今の時代、体験が大切になっている。どの世代でもモノよりもコトを重視している」と発言。そのうえで、モバイルとパーソナライゼーションの重要性を指摘したうえで、トラベルポートとしては一貫性を持ってカスタマーにアクセスする仕組みを構築していく姿勢を打ち出した。そのキーワードは「成長」「イノベーション」「簡素化」。「システム内部の動きを効率化し、もっとシンプルなサービスを提供することでイノベーションを進め、お互いのビジネスが成長していく環境を構築していく」と強調した。

その答えが「Next Generation Platform」。B to Cの予約プラットフォームは、ワントップであらゆる旅行素材を予約できる仕組みに力を入れているが、トラベルポートもB to Bでその構想を進めていく。同社プロダクトマネージメント担当グローバルVPのシャロン・ドイル氏は、「今後4年をかけて、Next Generation Platformを構築していく」と明かす。

このプラットフォームでは、NDC接続に加えて、旅行のプランニング機能、ブロックチェーンの活用、モバイル対応、SNS機能の組み込み、AIを活用したAPI接続、XRプラットフォームなどを戦略的に並べるという。「AIによってSNSでの旅行傾向を把握することで、将来の旅行を提案。旅行プランニングでは複数の交通機関を組み合わせ、適切なホテルを提案していく」とドイル氏。ブロックチェーン技術を活用したホテルの決済ソリューションでは、すでに大手ホテルチェーンやTMCと実証実験を始めているという。

トラベルポートCCOのニック・ダグ氏プロダクトマネージメント担当グローバルVPのシャロン・ドイル氏

業務渡航でも体験重視、社員の満足度アップがいい仕事に

体験重視の傾向は、レジャーだけでなく業務渡航でも顕著になってきており、「レジャーと業務渡航での体験の境界線が見えなくなっている」(ドイル氏)。業務渡航では、コスト節減やポリシー遵守と社員のウェルネスとのバランスが求められており、「社員の価値を最適化、最大化する方向にベクトルが移っている」と指摘した。

トラベルポートLIVEでは、業務渡航とレジャーとの融合、いわゆる「ブレジャー」についてのパネルディスカッションも行われた。モデレーターを務めた同社アジア太平洋地区エアコマース担当VPのクリス・ラム氏は、直近のブレジャーに関する意識調査の結果を発表。それによると、ブレジャーは全業務渡航の10%ほどを占め、業務渡航者の49%が出張先で滞在時間を伸ばすと回答。そのうち38%がミレニアム世代の出張者と若い世代を中心にブレジャーが浸透している実態を明らかにした。ただ、ミレニアム世代の45%がブレジャーを他人に言うことを避けていると回答していることから、社会全体での理解には至ってない様子も伺える。

ダグ氏も「従業員がきちんと体験してこそ、消費者にいい顧客体験を提供できる。従業員の満足度がいいところは、資産対利益の効率がいい。しかも、カスタマー体験も向上している。組織横断的にやるべきだろう」と発言。従業員が体験を通じて、Entrepreneur (企業家)ならぬIntrapreneur(社内起業家)になることで、カスタマー体験を向上させることの必要性を強調した。

データだけでなく地に足がついたパーソナライゼーションも重要

旅行体験の提供で重要になってくるのが、データを用いてカスタマイズされたパーソナライゼーション。イギリスのビッグデータ分析会社ビヨンド・アナリシスCEOのポール・アレキサンダー氏は「個人を特定する情報ではなく、その背後にある消費行動のパターンのデータをアグリゲートすることで、確度の高いターゲティングが可能」と主張する。

個人の取引の数や金額ではなく、消費者目線から顧客との接点ややり取りがどのように変化してきたをデータで分析。ある会社では、その分析を活用して、どのような顧客と何を話せばいいかを明らかにしたところ、「半年で解約率が50%も改善した」という。

ビヨンド・アナリシスCEOのポール・アレキサンダー氏

一方で、パーソナライゼーションの難しさを指摘する声もある。タビナカ市場の動向についてのパネルディスカッションに登壇したタビナカ予約「クルック(Klook)」のジェネラルマネージャーChuan Sheng Soong氏は「タビナカでは消費者の好みは日々変わる。しかも、池は大きくなっており、そこから魚を釣るのが難しくなっている」と指摘する。特にアジアでは難しさがあるようだ。「アジアのマーケットは、消費者もサプライヤーもバラバラに細分化されている。時間をかけてそれぞれのローカルに合わせてやっていくしかない」と発言。コミュニケーションの方法も手段も変わっているなかで、「プロダクトアウトではダメだろう」と続けた。

旅行はパーソナルな体験だが、「満足できなかったとしても、返品できない。その場でそれに代わるものは出せない」のが特徴とし、パーソナライゼーションのリスクも指摘した。そのなかで必要となってくるのが、デジタルプラットフォームであっても「サプライヤーとの地に足がついた取引」だという。

Soong氏は、ある辺境の観光地に行くための交通手段の話を紹介。定期バスだと時間がかかるため、チャーターバスの商品化をサプライヤーに提案したところ、最初は人数が集まらないと断られたが、クルックでは12人を集めることを約束して商品化を実現したという。

AIやビッグデータによるパーソナライゼーションとは異なる人力のパーソナライゼーション。消費者ニーズをすくい上げ、サプライヤーとの「地に足をつけた取引」をすることで、そのニーズに応える。Soong氏は、細分化されたアジアのタビナカ市場では、グローバルからローカルに落とし込む「グローカル」の必要性を主張した。

タビナカについてのパネルディスカッション。(右から)トラベルポート戦略ビジネス開発担当VPのMing Foong氏、クルック・ジェネラルマネージャーのChuan Sheng Soong氏、G.M. Tour and TravelマネージングディリクターのKit Sananwathananont氏。

トラベルジャーナリスト 山田友樹

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