環境行動に特典を提供する観光の新モデル、世界の観光地域が利用できるプラットフォームに発展 ―デンマーク・コペンハーゲン観光局

環境行動に対して報酬を与える観光の新たな仕組みが広がりつつある。デンマークのコペンハーゲン観光局(ワンダフル・コペンハーゲン)が2024年に開始した「CopenPay(コペンペイ)」は、旅行者が環境活動に取り組んだ成果に対して様々な特典を受けることができる取り組みだ。これまでに約3万人の旅行者が参加し、日本を含む世界100ヵ所以上の観光地域から問い合わせが入るなど注目を集めている。

こうした反響を受けて、同観光局は、その発展型として世界に向けて提供を開始したオープンプラットフォーム「DestinationPay(デスティネーションペイ)」を構築した。世界中の地域がすぐに利用できるモデルを提供する。このほど開催された説明会で発表された概略をまとめた。

CopenPayの実績と、見えてきた課題

観光が温室効果ガス排出量全体の約8%を占めると推定され、世界では今後さらに旅行者が増加していくと予想されている。同局マーケティング・コミュニケーション・ビヘイビア担当ディレクターのリケ・ホルム・ペーターセン氏は、CopenPayの立ち上げについて「コペンハーゲンのビジョンとして、観光客を誘致するだけでなく、より良い旅行の目的地にしていくことを掲げた」ことが始まりだったと説明した。

CopenPayは、環境にやさしい移動手段や地域社会との関わりなど、責任ある観光をおこなった旅行者に対して、無料体験や割引きなどの特典を提供するプログラム。DMOであるコペンハーゲン観光局がファシリテーターとして運営している。市内のゴミ拾い、自転車での移動、ガーデニングへの参加などのアクティビティに対して、特典として、無料の自転車レンタル、ヨガセッション、ガイド付きツアー、国立博物館やクロンボー城への入場、市内の主要観光スポットへの割引入場などを提供する。例えば、コペンハーゲンのリバーアクティビティ事業者「GoBoat」では、無料でボート体験を提供する代わりに、同時に川のゴミ拾いをしてもらうプログラムを提供している。

GoBoatは川の清掃の代わりに無料ボート体験を提供(プレゼンテーション資料より)2024年夏のローンチ時の参画パートナーは26社だったが、2025年には100社を超えた。環境負荷が低い鉄道での入国も対象としたことで、ドイツ国鉄やスウェーデン国鉄もCopenPayに加わった。

同局シニア・プロジェクト・マネージャーのエリザベス・マークウセン氏によると、ローンチ後、約2年間の参加者はおよそ3万人。同局の調査によると、市内での自転車レンタルは59%増加し、10人に7人が体験後に「母国でも環境改善の取り組みを行いたい」と回答したという。同プログラムが行動変容にもつながっている様子も伺えた。

また、CopenPayへの参加の動機は、「現地でユニークな体験をしたい」が最も多く48%、「無料だから」が23%、「持続可能な取り組みだから」が22%。このほか、CopenPayの特徴の一つが、参加者を旅行者に閉じず、地元住民も受け入れていることから、8%が「地元との交流」を動機として挙げた。

一方で、マークウセン氏は、2年間の活動で見えてきた課題も挙げた。まず、基本的に無料体験であることから、当日キャンセル(ノーショー)が一定数出てしまうことがある。また、無料であることから想定以上の参加者となることがあり、事業パートナーの負担になってしまうこともある点だ。

また、行動と報酬との関連性が曖昧な場合は、体験参加への理解が深まらず、参加者も減少してしまうことも挙げた。

さらに、一部の事業パートナーの中には、自社の経営ビジョンとの整合性に疑問があがるケースも出たという。

このほか、パートナーによって、提供する体験の日時や提供期間も異なることから、参加者とのマッチングで課題が出た。事業パートナーと参加者が増えるに従って、ホームページでのマッチングやユーザビリティなど技術的なアップグレードも必要になったと明かした。

パートナー参画のサイクル(プレゼンテーション資料より)

DestinationPay構築に向けて必要なこと

マークウセン氏は、CopenPayの実例から、DestinationPay構築に向けて最も重要になるのは、パートナーとのコミュニケーションだと指摘。パートナーへ実利的な報酬は支払われないことから、そのコンセプトの理解と賛同を得ることから始める必要があるとし、「最初から多くのパートナーを集める必要はない。まずはコアなパートナーとのコミュニケーションを深めていくことが大切」と強調した。CopenPayではローンチに向けてワークショップを繰り返し、提供する体験、特典の中身のすり合わせなどを議論した。

一方、事業パートナーとってのメリットとして、このサステナブルなプロジェクトに参加していること自体が社会的な価値となり、また社内での持続可能な社会に向けた意識改革にもつながっていることを挙げた。

また、提供する体験については、「持続可能で、参加者が簡単に実施することが可能で、参加しやすいものにする必要がある」と説明。CopenPayで1年目に提供された体験は、徒歩、公共交通機関、自転車での移動だったという。

特典については、「行動と密接に関連している必要がある。特典は必ずしも経済的な価値である必要はなく、行動そのものが参加者にとって価値になるという考え方」と説明した。

DestinationPayのウェブサイトそのうえで、マークウセン氏は、DestinationPayのローンチに向けて7つのステップを提示した。

  1. なぜこのモデルを導入するのか?DestinationPayを始める目的の定義
  2. コンセプトにあうパートナー戦略
  3. シンプルでユーザーフレンドリーなプラットフォームの開発
  4. リソースと予算の確保
  5. 新たなパートナーの獲得や旅行者・地域住民の告知のための広報活動
  6. パートナー、旅行者、地域住民に向けて、さまざまなチャネルでのコミュニケーション
  7. 参加状況や影響度のモニタリング、データ収集と評価

マークウセン氏は、「必ずしもCopenPayを模倣する必要はない。地域には地域の特性がある。それに合わせて制度設計を行うことが必要になるだろう」との認識を示した。

ペーターセン氏は最後に、DestinationPayの目標について、「私たちと同じ志を持つ世界の地域と、グローバルネットワークと共通ブランドを構築すること。観光分野で共に行動することで、私たちの志を現実のインパクトに変え、世界をより良い目的地にすることができる」と力を込めた。

※ユーロ円換算は1ユーロ183円でトラベルボイス編集部が算出

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