中東情勢で旅行需要は「消えずに凍結」、注目される「日本」、関心と購買のギャップを分析【外電】

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データ会社Propellicは、過去数週間にわたり、中東情勢が旅行者の行動に実際にどのような影響を与えているかを分析した。観光産業ニュース「ファーカスワイヤ」は、Propellicによる60社以上の旅行会社と27カ所の旅行先を対象とした4つの統合マーケティングデータプラットフォームの検証内容を報じている。 

しかし、その性質が変化しているようだ。分析の結果、旅行需要は消失しているのではなく、「検索は増加する一方で予約(コンバージョン)は減少する」という構造的な変化が明らかになった。

中東情勢の影響を最も受けているのは、言うまでもなく、中東地域および周辺地域のアラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダン、トルコ、サウジアラビア、エジプト、カタール、オマーン、バーレーン。しかし、オンライン上の動向ではトラフィックが急増していることが分かった。

トラフィックを需要と解釈するのは誤り

ヨルダンでは同国ページへのアクセス数が前月比153%増加し、UAEでもGoogle Search Consoleのインプレッション数が8.2%増加するなど、オンライン上の関心は高まっている。

しかし、その一方で予約には結びついていない。ヨルダンではGoogle広告の予約率が前月比25.81%減少。トルコでもインプレッション数は横ばいながら、オーガニッククリック数はほぼゼロまで落ち込み、予約数も46.11%減少した。

つまり、検索は増えているが、予約は減っているという乖離が生じている。

この背景について、フォーカスワイヤは、トラフィック増加の多くが新規の旅行検討ではなく、既存の旅行者によるキャンセルポリシーの確認や変更手続き、安全情報の確認によるものと分析。トラフィックをそのまま需要とみなすことは適切ではないとしている。

こうした「関心」と「予約」のズレを可視化するため、同社は独自指標「確実性ギャップ指数(CGI)」を開発した。これは、安全性や物流関連の検索クエリの増加率と、商業目的の検索クエリの変化率を比較したもので、スコアが高いほど旅行者が予約よりもリスク情報の収集を優先している状態を示す。

ヨルダンのスコアは97.99とほぼ最高値に達し、サウジアラビアも73.3と高水準となった。特にサウジアラビアでは、広告費が前年比209%増加しているにもかかわらず、Google広告の予約率は前月比25.8%減少しており、広告投資が予約に結びついていない実態が浮き彫りとなった。

ギリシャとスペインで予約が一時的に低下

データ分析を受けて、需要はあるが凍結された状態「Coiled Spring(コイルばね)」という概念を提示した。前年比では需要の関心が高いものの、不確実性の高まりによって予約が一時的に抑制されている市場を指す。

その典型例が、ギリシャとスペインの一時的な予約の低下だ。両国は夏の定番旅行先であり、通常であれば中東地域に近い旅行者の代替先として需要が流入するはずの市場である。しかし、実際にはギリシャではGoogle広告のセッション数が前年比で増加した一方で、予約率は前月比35.14%減少。スペインでもセッション数が急増したものの、予約率は同45.71%減少した。

つまり、関心は急増しているにもかかわらず、予約には至っていない状況が確認された。

要因としては、米国務省がキプロスやトルコなど周辺国の渡航勧告レベルを引き上げた影響が指摘される。スペインやギリシャ自体は紛争地域から距離があるものの、こうした動きが欧州全体の空域や安全性に対する不確実性を高め、旅行者の意思決定を慎重にさせているとみられる。

注目すべきは日本

調査対象とした27の旅行先のうち、ベトナム、タイ、インドネシアの3カ国では、Google広告の予約率が前月比・前年比の双方で改善した。これは、プロモーション施策よりも、旅行先の安全性に対する認識が予約行動を左右する主要因となっていることを示唆している。

その中で、特に注目されるのが日本だ。予約率とクリック率は前月比では低下しているものの、前年比では大幅に改善しており、広告費も引き続き増加している。つまり、短期的な変動はあるものの、需要の基盤は強く維持されている状況にある。

今回の調査対象国の中で、構造的な需要の強さと継続的な取引量の多さを同時に維持しているのは日本のみだった。

旅行会社が今すぐできる3つのこと

この分析は、現況下で事業を展開する旅行会社に対して、具体的に取るべき行動を示唆している。

まず、旅行先に関する情報発信の強化である。旅行先のサイトを十分に確認し、安全に旅行が可能であることを明確に伝える必要がある。柔軟なキャンセルポリシーや最新の安全情報、リアルタイムのアドバイスを提示できなければ、旅行者の不安を解消できず、信頼を損ねるリスクがある。

次に、「Coiled Spring」に分類される旅行先に対しては、マーケティング予算を維持することが重要だ。スペイン、ギリシャ、日本、ニュージーランドなどは構造的な需要が強く、一時的な予約低下に過ぎない。ここで投資を縮小すると、需要回復局面での機会損失につながる可能性がある。

さらに、すでにエンゲージメントが活発化している市場への投資を強化することも求められる。データからは東南アジアが該当し、安全性への認識が予約行動を後押ししていることがうかがえる。

旅行会社は、安定した方針と明確なコミュニケーションを維持し、市場に対して継続的な存在感を示すことが重要である。不確実性の高い局面においても、戦略的に撤退するのではなく、一時的な調整局面と捉えた企業こそが、その後の需要回復を確実に取り込むことができる。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:HOW THE 2026 MIDDLE EAST CONFLICT IS RESHAPING TRAVEL DEMAND


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