世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)は2026年6月9日、欧州で新たに導入された出入国管理システム「Entry/Exit System(EES)」の運用に伴う影響調査の結果を発表した。
EESとは、EU域外の国籍を持つ旅行者の出入国の際、指紋と写真を撮影し、旅券情報、出入国記録とともにデータを電子的に登録するシステム。2025年10月12日から段階的に運用が開始され、2026年4月10日以降、全面運用が始まっている。
調査結果から、WTTCではシェンゲン圏への入国時に3時間以上の待ち時間が常態化した場合、欧州への訪問者数が最大で4100万人減少し、約454億ドル(約7兆2600億円)の観光支出が失われるリスクがあるとしている。特に英国の旅行者の39%が、3時間以上の遅延が発生するシナリオにおいて「旅行に行く可能性が大幅に低くなる」と回答した。
一方で、旅行者の65%はシステムの内容を理解した上でEESを支持しており、生体認証管理に否定的な意見は6%に留まっている。旅行者は、国境セキュリティの強化や将来的な手続きの迅速化に期待を寄せているものの、現時点での認知度は低く、55%がシステムについてほとんど知らないと回答した。
WTTCは、この経済的損失を防ぐために「デジタル事前登録アプリの導入加速」「主要市場での一貫した広報活動」「国境検問所での人員確保や機器整備による運用準備の徹底」の3点を各国政府に提言している。適切な技術導入と運用改善により、安全性の向上と円滑な旅行体験を両立させることが不可欠とした。
※ドル円換算は1ドル160円でトラベルボイス編集部が算出


