FIFAワールドカップが米国・カナダ・メキシコの3ヵ国共催で開幕した。しかし、観光産業にもたらすと期待されていた効果は、まだ現れていない。長年、この大会は米国の観光産業に大きな恩恵をもたらすと期待されてきたが、トランプ政権の政策のもと外国人観光客の減少が続いている。
多くのホテルが値下げを余儀なくされ、航空券の高騰で予約が減少。さらに観戦チケットが高額になっている。業界アナリストは、過去のワールドカップに比べて盛り上がりが鈍いと指摘している。
これまでの大会とは異なり、3カ国16都市で開催される試合観戦にかかる費用、ビザ取得のハードル、そして移動の煩雑さが、旅行を阻害する要因となっている。
「全体的に見て、失望している。他に言いようがない」とニューヨーク市ホテル協会のビジェイ・ダンダパニCEOは話す。同協会は、ワールドカップ関連のホテル客室収入の予測を60%下方修正し、約6000万ドル(約96億円)としたという。
間際需要は未だに見られず
航空データ分析Ciriumによると、2026年6月と7月の欧州から開催都市への航空券予約は、前年比平均で3.8%減少している。昨年、すでに欧州の旅行者が米国への旅行を控えていたにもかかわらずだ。FIFAは120万人のファンがニューヨークに集まると予測していたが、ダンダパニ氏によると、ニューヨーク市ホテル協会は50万人程度を見込んでいるという。ホテル側は、出だしは芳しくないものの、グループステージ終了後には需要が回復すると期待している。
ダンダパニ氏によると、ニューヨークの複数のホテルが客室料金を値下げしており、市内最大のホテルであるニューヨーク・ヒルトン・ミッドタウンは、昨年12月の料金から半額の1泊415ドル(約6万6000円)に値下げしたという。
高額なチケット代と、煩雑なビザ取得
出場国の半数以上が、米国への入国にはビザが必要となる。これは、国境警備の強化に既に警戒感を抱いている旅行者にとって、費用とともに不安要素をさらに増大させるものだ。トランプ政権は、ソマリアのサッカー関係者に対して「テロ組織の容疑者」と関係があるとの疑いで入国を拒否した。
FIFAのチケット販売方法も、一部のファンを失望させている。主催者は過去最高額の基本価格を設定し、大会が近づくにつれて価格が上昇する変動価格制を初めて導入した。FIFAが転売価格の上限を設けないことを決めたことで、価格はさらに高騰し、規制当局の監視対象となった。
TicketDataによると、ニューヨークやマイアミといった開催都市の最安値チケットは現在1000ドル(約16万円)近くに達している。チケット販売会社Tickittoのダナ・ラトゥーフCEOは、海外のファンは短期間での旅行手配やビザ取得の費用と複雑さのために、直前の需要は低迷する可能性があると話した。
一方で、グループで宿泊できるバケーションレンタルは、数少ない明るい兆しの一つとなっている。短期宿泊レンタル(STR)を分析するAirDNA社のデータによると、ボストンやロサンゼルスなどの開催都市では、特に格安・エコノミータイプのレンタルの予約が急増しているという。
AirDNAによると、開催都市全体のレンタルの平均宿泊料金は1泊あたり218ドル(約3万5000円)だったが、6月8日時点では、ホストが直前需要を見込み料金を上げていることから、335ドル(約5万4000円)程度まで上昇している。
※ドル円換算は1ドル160円でトラベルボイス編集部が算出
※本記事は、ロイター通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。


